キャンディを撮った日
片岡義男さんがひたすら「キャンディ」を撮影した写真集。こんな楽しみ方も憧れます
小説家であり、海外の絵本や文房具に関する著作も多い片岡義男さんの1998年の著作です。タイトルのとおり、海外の「キャンディ」をパッケージごと、または包み紙から取り出して、次々に写真に収めていった写真集で、合間に短い文章が入ります。たったそれだけですが、とても魅力的なんですよね。片岡さんのマジックでしょう。
説明文:「フランスへいってしまってもう何年にもなる女性から、ある日、封書が届いた。手紙とともに小さなボール紙の箱が同封してあった。チューインガムの空き箱だ。「私がしばらくバッグのなかに入れて持ち歩き、すべて噛んでしまったガムの箱です」と、彼女は書いていた。縦、横、厚さのバランス、そして開口部の作りなど、よく観察すると魅力に満ちていた。観察するだけの興味が持てなければ、捨てるほかない用済みの箱だ。色づかいやデザインは、大衆のために街角で販売されている小さな商品としてのありかたを、ごく当然のことのように守ったデザインだ。僕はその空き箱を気にいった。冬の快晴の午前中だった。僕はその小さな空き箱を写真に撮ることを思いついた。―ある作家の冬の一日の過ごしかた。」
別の説明にはこうあります。「今日はキャンディを写真に撮って過ごすことにしよう。スーパーマーケットへキャンディを買いに行く。できるだけ早く帰ってきて、ヴェランダでキャンディを写真に撮る…。冬の一日に作家が撮ったキャンディの写真集。」
成城石井などへ、惹かれるキャンディを買って、自宅に戻って一日がかりで写真に収め、それを写真集として販売する。浮世離れしているようで、その行為自体に憧れてしまいますね。どこか所ジョージさんと重なる部分があるかもしれません(笑)
時代によって違いはあると思いますが、海外産のちょっとしたプロダクトは、シンプルさゆえに美しさを感じさせるものがたくさん見つかりますね。日本のキャンディとなると、余計なキャラクターが登場したり、見づらい注意書きだらけで美しさとは対極に位置するものがほとんどです。
こういったものを集めて撮影する。それだけの行為がこれだけ楽しそうなのですから、いつか真似てみたいと思います。写真集としても楽しいですから、気になる方は探してみてください。