奈良―鹿のいる風景 山口勇写真集
奈良の鹿の写真集。合成写真かと思うほどの貴重なショットも多数!鹿好きな方はぜひ!
国の天然記念物である、奈良の鹿の写真集。撮影者は、奈良の写真家・入江泰吉さんの指導を受けた山口勇さん。奈良市の職員で、定年退職後に、社団法人奈良市観光協会を設立し、専務理事に就任なさった方だとか!お仕事の合間に撮りためた、奈良の鹿の美しさ、逞しさ、可愛らしさなどが伝わってくる素敵な写真集になっています。
奈良市内の一部に暮らす鹿たちですが、春日山や若草山、春日大社に東大寺、人の気配が濃い三条通など、撮影場所も様々です。季節や時間帯も、見事な紅葉の中だったり、幻想的な朝もやの中、美しい朝日に照らされて、奈良には珍しい雪景色など。子鹿や子育て中の親子鹿、喧嘩をしている雄鹿など、本当に色んなシチュエーションで撮影されているのが分かります。
奈良に暮らす人間であれば、鹿の写真くらい何度も撮影した経験があると思いますが、ここまで多種多様な鹿の姿を見たことのある方は少ないでしょう。それほど貴重なショットが収められています。
また、山中の草むらで群れていたり、一斉に雄鹿だけが歩いていたりする写真は、どう考えても合成写真にしか見えないものも少なくありません。ものすごい数の雄鹿だけ集まっていたり、草を食んでいる鹿たちが同じような角度で一斉にカメラに視線を向けたりと、今まで見たことがないほどの貴重なショットだと思います。
少なくとも、この写真家さんのキャリアと年齢(1928年生まれだとか)を知らずにいたら、後から手を加えたものにしか見えないのです。おそらく、鹿の毛や角の産毛が輪郭をぼかし、周りから浮き上がらせて見せるためだと思いますが、本当に不思議な感じですね。
103ページにわたって、奈良の鹿たちの様々な姿が切り取られていますので、鹿好きな方はぜひ手にとってみてください。とても素敵な内容ですよ!