
ゆっくり走れば速くなる
ゆっくり長い距離を走る「LSD」トレーニングの魁となった一冊。今読んでも参考になります
「ゆっくり走れば速くなる」というインパクトのあるタイトルとともに、ゆっくりしたペースで長い距離を走る「LSD(ロング・スロー・ディスタンス)」のトレーニングを提唱し、大きな話題となった一冊です。
マラソンのトレーニングというと、どうしてもスピード練習に重点を置きがちな風潮がありましたが、そんな発想を覆す目からうろこの内容でした。以前に読んでいたものを再読してみましたが、今読んでも参考になりますね。
説明文:「ゆっくりとしたペースで、長い時間を走る、マラソン界屈指のトレーニング法・LSDを紹介。ソウル五輪出場者が、恩師から受けたトレーニングを自己の体験を織り交ぜ解説。84年刊佐々木功の同タイトル著作を新たに書下ろす。」
基本的な考え方としては、「自分が快適と思うペースよりもかなり遅く、そして2時間程度を目標に走り続けるトレーニングを取り入れよう」というものです。一線級のランナーである著者さんでも、1kmを7~8分という、レースペースの半分ほどの速度で走っています。
実際にやってみるとよく分かりますが、これが慣れないうちはつらいんですよね。通常のジョグペースで走るのと比べると楽そうに思えますが、体の節々がギクシャクします。このLSDを取り入れることで、より自然なフォームに矯正されていくんですね。
また、インターバルトレーニングのような心肺機能を鍛えるものは、心臓が送りさせる血液の量を増やせるようになります(=車のエンジンを大きくする)。こうして運ばれてきた酸素を末端の毛細血管レベルでしっかり受け止めるには、LSDのような弱い刺激を長時間与え続ける訓練をしておくのが重要なのだとか。
つまり、実際には「ゆっくり走(ることも取り入れ)れば速くなる」という感じでしょうか?私もその辺りが曖昧になっていたのですが、再読してみて理解できました。
ジョグに慣れてくると、どうしても速いスピードでトレーニングしたくなりますが、体への負担が大きいため、故障の確率も高まります。また、LSDペースくらいの方が体脂肪を落としやすいため、ダイエットにも向いています。
本書は、トレーニングメニューの組み立て方なども解説されていますので、ジョグ初心者からシリアスランナーまで参考になるでしょう。特に気をつけるのは、練習メニューがマンネリにならないこと。同じような刺激ばかりを与えていると、体が慣れてしまい、期待値よりも効果が得られなくなるのだとか。日によってスピードを変えたり、距離を変えたりといった変化をつけるようにしましょう。
著者は、オリンピンク代表にもなったマラソンランナー浅井えり子さん。日本ではこの方のコーチである故・佐々木功さんが出版した『ゆっくり走れば速くなる―佐々木功のマラソン秘トレーニング』がLSD理論の皮切りとなりました。発売は1984年!Amazonではすでにプレミア付きで取引されるようになってます。
その教え子である浅井さんが、その内容を深めて本書を出版したのが1997年のこと。2005年に「新板」が登場していますが、今では中古でしか手に入らないようです。大きな話題になった本だけに、図書館では見つかるかもしれません。
同じようにLSDを勧める本は、『マラソンはゆっくり走れば3時間を切れる! 49歳のおじさん、2度目のマラソンで2時間58分38秒 (ソフトバンク新書)』『マラソンは毎日走っても完走できない―「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ (角川SSC新書)』など、数多く登場しています。こちらの方が手に入りやすいと思いますので、興味のある方は探してみるといいですね。