豆本への招待―未来工房豆本全刊行記録
不思議で素敵な「豆本」出版社のお仕事の集大成
1979年創業で、数々の「豆本(まめほん)」を刊行してきた未来工芸さんの作品を集めた一冊。私は特に豆本に詳しいわけではありませんが、「こんな世界もあるんだ!」と驚くには十分な凝りようでした。豆本について詳しくはこちら→ http://goo.gl/x8LuU , http://goo.gl/Z4gbB
この本の著者であり、豆本の出版社・未来工芸を立ち上げた桑原宏さんは、元は学校の教師をなさっていて、退職後に豆本の魅力に取り憑かれてしまったそうです。最近では、手芸品として豆本を作るっている方も少なくありませんが、ここで紹介されているのは、とんでもなく本格的なものです。丸谷才一さん、宮尾登美子さん、吉行淳之介さん、水上勉さん、田辺聖子さんなどの著名作家の作品が登場し、会員内へ定期的に配本されるシステムだったとか。
本書に収録された短いエッセイのようなものの中に、豆本を製本する難しさが簡単に書かれています。手の平に乗るようなサイズの本を作るのですから、機械などが使えるはずもなく、全て手作業です。これは大変でしょう。
もちろん製本するだけではなく、愛好家に喜ばれるべく、ケースや装丁にもこだわります。ケースのバリエーションは、桐の箱入り、ステンドグラスのケース入り、鍵付きの収納ケースなどがあったり、さらに小さなサイズの豆本を作り、ミニチュア家具とセットにして販売したりしたのだとか。装丁も、宮尾登美子さんの作品では自らの着物を貼ったりしているそうです。
まずシリーズ全体の説明があって、写真一枚に説明がつく…という流れなので、やや画像点数が物足りなく感じますが、マニアックな世界に単純に「すごい!」と感嘆できる一冊ですね。
なお、私はこの本を図書館で借りてきました。奥付によると、1994年発行、特装版188部と並装版400部(定価3,800円)が世に出たのみらしいので、Amazonなどでも中古が高値で取引されているようです。なかなか目にできる機会は無いと思いますが、興味のある方は探してみてください。