開高健がいた。 (コロナ・ブックス)
釣りを愛し続けた芥川賞作家・開高健さんの入門書として
生涯釣りを愛し続けた芥川賞作家・開高健さんの仕事をまとめた一冊。『フィッシュオン』『オーパ』(感想はこちら)などの釣り紀行エッセイを書いていた時期のことが主に紹介されています。オーパの旅にも同行した写真家・高橋昇さんの迫力ある写真と、開高さんに関わった方たちの短いエッセイで、その人となりが伝えられてきます。
個人的には、この辺りの著作は何度も読んでいるため、あまり目新しさはありませんでしたが、釣りやアウトドアがお好きで、開高さんの著作を読んだことがない方の入門書として最適でしょう。
経歴を簡単にご紹介しておくと、今から半世紀ほど前、寿屋(今のサントリー)に所属し、トリスウイスキーの有名なコピーを作りました。作家へ転身後、すぐに『裸の王様』で芥川賞を受賞。政治色の強い海外渡航を繰り返し、戦争まっただ中のヴェトナムへ渡り、死地をさまよいます。その後、雑誌などの連載で海外への釣り紀行文を発表し続けました。
また、開高さんは「書けない作家」(=筆の遅い作家)としても有名で、エッセイなどの中にも、背中の痛みにこらえながら机に向かって苦しむ様子が描かれています。本書では、まさにその現場であろう書斎の写真も掲載されていて、ファンとしては嬉しい限りですね。茅ヶ崎市には「開高健記念館」という施設があることも初めて知りましたので、いつか行ってみたいと思います。
私の開高さんのイメージは、ずんぐりとした体型の中年男性で、手にはパイプと釣竿、美味しい酒と食べ物を静かに味わっている、といった感じでしょうか。一般的には決して格好いいと言えないかもしれませんが、男から見て憧れる方ですね。その立ち振る舞い、姿形、生き方や趣味まで含めて、今なおヒーローです。それもこれも、開高さんの重厚で濃密な文章があってこそ。全く関係ない文章を読んでいても、条件反射的についウィスキーが飲みたくなるんです。
アウトドア成分が不足している方は、ぜひ手にとってみてください!