オーパ! (集英社文庫 122-A)
開高健氏がアマゾンの巨大魚・怪魚に挑んだ60日間のドキュメント
開高健さんによる、ブラジルのジャングルで2ヶ月間にわたって釣りに挑んだ模様を記録したエッセイ。個人的に「春になると(=外に出たい季節になると)読みたくなる本」のトップ3には入る一冊です。写真も多数掲載されているため、見た目も華やか。開高さんの名文がグッと胸に迫ってきます。
ブラジルへの旅が行われたのは1977年、開高さん46歳の夏です。今でもアマゾン奥地は秘境ですが、35年も前のこととなると、聴くもの見るもの全てが珍しいものばかりだったでしょう。ちっぽけな日本人のやわな頭脳では信じられないような、スケールの大きな(ホラ話も含んだ)エピソードが次々に登場して、異質な南国を旅している様子が濃厚に匂い立ってきます。
アマゾンで連日のように長距離移動し、ポイントにつくたびに竿を投げ、巨大な黄金のドラドを釣ったり、ピラニアに遊ばれたり、ボウズだったり、ダニに刺されたり、川の濁った水を味わったり。今であれば、間違いなく何台ものテレビカメラが同行する大げさな旅になるところですが、これを映像としてではなく、開高さんのドッシリした文章で読むことに意義があるんです。この人の文章は、内容ももちろんですが、読んでいるとウィスキーが飲みたくなるんですよね。男の遊びに誘われる何かが潜んでいます。
この作品では、ブラジルで客船に乗り込むところから始まります。これから始まる長い旅に備えて、もちろん読みたい本などを持ち込むのですが、開高さんが持参したのは「シャーロックホームズ」シリーズの短篇集4冊。30年ぶりに読み返したのだとか。アマゾンをめぐる釣り紀行のお供に、これをチョイスできるだけでも痺れますし、憧れますね。
ちなみに、私は釣りは全くしませんので、その本当の楽しさは分かりません。このエッセイだけで十分に満足しているとも言えます。この「オーパ」はシリーズ化されていて、どれも面白いですが、釣りレポとしては「フィッシュ・オン」の方が先に発表されています。順番に読みたい方はこちらを先にどうぞ。
最後に、本作の冒頭で紹介されている、中国の古いことわざを紹介しておきます。
一時間、幸せになりたかったら、酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたかったら、結婚しなさい。
八日間、幸せになりたかったら、豚を殺して食べなさい。
永遠に、幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい。