日本遺産 神宿る巨樹 The marvelous trees in Japan
全国156の巨樹の写真集。神の依代として崇めたい神々しさ
全国の156の「巨樹」を写真と文章で紹介する、大判の写真集です。神の依代として、身近にもたくさんの巨樹が守られていて、何気なく目にしてきましたが、改めて樹種・樹齢・幹周・樹高などのデータを見ながらその姿を見ていくと、当然ながら巨樹にも様々なタイプがあることが分かります。また、樹木への畏怖の念は感じられますが、安易にパワースポットという言葉を使っていないのも好印象で、とてもいいバランスになっていますね。
ちなみに、環境省では「地上から1.3m地点の幹周が3m以上のもの」を巨樹と認定しているのだとか。日本では、約68,000本の巨樹が知られており、多い順に、杉(約15,000本)・欅(ケヤキ)・楠(クスノキ)・銀杏(いちょう)・椎(しい)・椨(たぶ)・松・椋(むく)・樅(もみ)と続くのだそうです。
前半では、日本各地の桜の老木、樹齢100年をゆうに超える盆栽、最上地方の巨樹の里などが、迫力のある写真と短めの的確なテキストで紹介されていきます。後半は、樹種別に日本全国の巨樹の紹介になります。当然のことですが、樹種ごとに見ていくと、それぞれ受ける印象が全く違うんですね。樹齢●●年の巨木と一括りに考えがちですが、見え方も、周囲の植生も、伐採されたときの用途も違います。人間との関わり方が全く違ってくるんですから、それを念頭に改めて注目してみたいと思いました。
1000を超える樹種があり、今でも総面積の7割が森林として残されている日本ですから、樹との関わりも密接でした。大きく育った樹は、神が降りてくる依代(神奈備)として、近くにお社が建てられるなど、大切にされてきました。千年を超えるようなものも珍しくありませんし、樹が先なのかお社が先なのか分からないようなところも多いでしょう。日本人と近しくもあり恐れられもした巨樹たちをバランス良く紹介してくれる良書ですので、興味のある方はぜひ!
ちなみに、山深い地域も多い私の地元・奈良ですが、紹介されているのは宇陀市「高井の千本杉」のみでした。古くから寺院建築が盛んだったこともあって、切られた巨木も多かったんでしょうね。ちょっと残念です。