家族野菜を未来につなぐ: レストラン「粟」がめざすもの
大和伝統野菜を復活させた人気店『清澄の里 粟』三浦ご夫妻の著書。奈良好きな方は必読!
奈良市の郊外で大和伝統野菜を中心とした「家族野菜」を育て、それらを提供するレストランを作り、ミシュランガイドの星まで獲得してしまったお店『清澄の里 粟』。代表の三浦ご夫妻が、これまでの歩みから取り組みの内容までを丁寧に語られています。
三浦さんは、つい先日放送された人気のドキュメンタリー番組「情熱大陸」でも取り上げられたばかりです。1年半も密着して撮影したものを、30分という短い枠に収めるのですから、かなり駆け足だったり省略された部分もありました。本書ではより詳細に語られてるため、より楽しめると思います。
説明文:「施設やお金に頼る福祉の現場で感じた疑問から、本来の豊かさを求める夫婦の旅は始まった。ネイティブアメリカンの集落での気付き、密やかに守られてきた野菜の種との出会い、それを守るために手さぐりで始めた農業、レストラン開業、そして地域との連携事業へ。身近な人の喜ぶ顔を思って作る野菜には、人をつなぐ力がある。」
・第一章では、ご夫婦が出会った経緯とレストランを始めたきっかけなど
・第二章では、伝統野菜を探して歩く中で出会った野菜の物語
・第三章では、家族で食される「家族野菜」の今後を それぞれ描いています。
現在では、ブランド力も高まってきた奈良伝統の「大和野菜」ですが、三浦さんが調べ始めたころは、わずか9種類しか無かったそうです。しかし、調べていくうちに、換金作物にはなっていないものの、農家の家族内で食べるために作られている伝統的な野菜が何種類も見つかり、そういったものを「家族野菜」と呼び、少しずつ復活させる活動をなさっています。
夫婦でレストランで提供するだけではなく、「伝統野菜で地域づくり」を目指し、産業創出・公益活動にまで目的は広がっています。農の重要性を叫ぶ声は至るところから聞こえてきますが、ここまで自然にそれが実現できているところは、なかなか無いのかもしれませんね。
その活動の素晴らしさは、粟さんのお料理を食べてみると身を持って実感できるでしょう。本店はなかなか予約が取れない人気店になっていますが、「粟ならまち店」(紹介記事)で食事をいただいたことがありました。あまりの美味しさにハッと目を見開いてしまったほどで、間接的に三浦さんたちの活動の正しさが伝わってきたのです。
大和伝統野菜は、今では様々な品種が復活してきました。三浦さんがこだわる、十津川村で種が保存されていた粟「むこだまし」や、椿尾ごんぼ・八条水菜・今市カブ・片平あかね・結崎ネブカ・味間いも・祭り豆・野川きゅうり・十津川えんどう・下北春まななど。本書では、それぞれの復活の物語が語られていますので、ぜひ手にとってみてください!