薬草の博物誌 森野旧薬園と江戸の植物図譜
門外不出だった「松山本草」など、江戸時代の植物図録を比較できる楽しい一冊
奈良県宇陀市で江戸時代から続く「森野旧薬園」に伝わる植物図鑑「松山本草」を中心に、国内の植物図譜の系譜を紹介した一冊。昔の博物系の書物は、独特の美しさがあります。薬草などについての知識はありませんが、眺めているだけで楽しくなりますね。
なお、大阪・LIXILギャラリーで開催中の「薬草の博物誌 -森野旧薬園と江戸の植物図譜-展」に合わせて出版されたものです( 2015年12月4日~2016年2月16日)。
説明文:「江戸時代から続く森野旧薬園(奈良県宇陀市)と同時描かれた薬草を中心とした植物図譜をとおして、幅広い本草の世界とその魅力を紹介します。当時の面影をそのままに残す森野旧薬園の風景写真から始まり、最近まで森野家門外不出であった『松山本草』、独自の観察眼で描かれた江戸期の植物図譜11種をオールカラーページで展開、そして最後の本草学者であった牧野富太郎の見事な植物図で締めくくる一冊です。描かれた植物には薬効などの解説も付いています。」
冒頭は「森野旧薬園」の現在の様子や簡単な歴史の振り返りなど。私自身、まだ一度も入園したことがないので、興味深く拝見しました。
そして、創始者である森野賽郭が著した後、260年も門外不出だった「松山本草」の紹介へ。全10巻の大著で、繊細な絵柄はとても美しいです。冷静な観察眼を持ちながら、自身が育てる薬草への深い愛情も感じられます。
後半は、1596年に中国で編まれた「本草綱目」に始まる、博物学・本草学の書物を紹介していきます。貝原益軒の「大和本草」、小野蘭山「花彙」、飯沼慾斎「草木図説」など、時代ごとに少しずつ絵柄や見せ方が進化を遂げているのが分かります。
こうして比較してみると、薬草は古くから人々に必要とされ、熱心に研究してきた方が多かったことが実感できます。眺めているだけでも楽しい内容ですので、興味のある方はぜひ!