奈良 大和路の紅葉 (奈良を愉しむ)
奈良の紅葉の名所を美しい写真付きで紹介。初めて知るスポットも多く、これは使えます!
奈良県内各所の紅葉を、美しい写真と的確な解説文で紹介する一冊。「まほろばの大和の国の黄葉(もみじ)を愉しむ大人の旅」という紹介文がありましたが、まさに偽りなしですね。奈良の紅葉という切り口の本は、私は初めて拝見しましたが、まだ見たことのない名所が続々と登場して、本当に楽しくなりました!
説明文:「新シリーズ「奈良を愉しむ」の第1冊。『万葉集』や『小倉百人一首』にも詠われる古来の名所から、知られざるかくれスポットまで、奈良県全域の紅葉・黄葉の見どころ約60 ヶ所を奈良在住のカメラマン桑原氏の写真で紹介、奈良にゆかりある作家・学者・宗教者のエッセイと解説を織り交ぜて構成します。奈良市、葛城、飛鳥、山の辺の道など、他府県にはない歴史に彩られた落ち着きと雄大さ、そして様々な草木の紅葉・黄葉が楽しめる奈良の「もみじ」の魅力を満載する一冊です。」
掲載されている紅葉スポットは58ヶ所。4つのエリアに分けて紹介されています。
●奈良市 市街および郊外 ─ 奈良公園・浮見堂・手向山八幡宮・依水園・神功皇后陵など
●生駒から葛城へ ─ 暗峠・金勝寺・竜田川・龍田大社・當麻寺など
●山の辺の道から宇陀・曽爾へ ─ 長岳寺・長谷寺・鏡女王墓・大兵主神社・屏風岩公苑など
●飛鳥から吉野へ ─ 石舞台古墳・天香久山・太田皇女墓・高取城跡・西行庵など
名所として有名なところはもちろんですが、紅葉の見事さが知られていないような貴重なスポットも多数掲載されています。例えば、山の辺の道の大兵主神社は、本書では参道を覆い尽くすような赤い落葉のショットが掲載されていますが、私などはまったく知りませんでした。素晴らしいですね!
本書を執筆なさったのは、上質な奈良の情報を伝えてきた地域文化誌『あかい奈良』の編集長を務めていらっしゃった倉橋みどりさん。撮影は、入江泰吉さんに師事していた桑原英文さんが担当なさっています。
合間に挿入されるエッセイの執筆者は、奈良大教授・上野誠さん、春日大社権宮司・岡本彰夫さん、県立図書情報館館長・千田稔さん、金峯山修験本宗宗務総長・田中利典さんなど。豪華ですね!
何事につけてそうですが、奈良の紅葉は京都とは違い、「見渡した一面が赤く染まる」というような派手さはありません。しかし、歴史の重さが感じられる、自然と侘びた風情があり、とても落ち着いた味わいがあります。
万葉集や百人一首の歌などを思い浮かべながら紅葉を見ると、長い歴史の積み重ねが実感できて、涙がこぼれそうになったりしますね。「大坂を わが越え来れば 二上(ふたかみ)に 黄葉(もみぢは)流る しぐれふりつつ」(巻10-2185)こんな歌も紹介されています。
秋の奈良を楽しむのに必携の一冊だと思います。ぜひ手にとってみてください!