2014-12-15

検証 平城京の政変と内乱 (学研新書)

長屋王や藤原広嗣など、奈良時代の六つの政変を独自の視点から解釈。気づきのある一冊

奈良時代に平城京で起こった6個の政変を、独自の視点から解釈し、これまでとは違った気づきを与えてくれる一冊。主役となるのは、長屋王・藤原広嗣・橘奈良麻呂・恵美押勝・道鏡・氷上川継といった、いずれも名前の後に「変」や「乱」をつけて語られることも多い方たちですが、その事情を読み解いています。


説明文:「平城京を舞台にして起きた政変や内乱を、徹底的に読み直し、従来の通説や解釈にとにかく疑問をぶつけてみた。するとそこには、藤原氏の陰謀、天皇系統の対立ではすまされない真相が…。平城京の謎解きの決定版登場。」

本書は、以下の章立てになっています。

●左大臣の反逆─長屋王の変
●「我こそは大忠臣なり!」─藤原広嗣の乱
●戒厳令の夜に─橘奈良麻呂の変
●正一位太政大臣、湖畔に死す─恵美押勝の乱
●「道鏡を天皇にせよ!」─宇佐八幡神託事件
●狙われた新天皇─氷上川継謀反事件

藤原氏と対立して策略によって滅ぼされた長屋王、絶大な権力を手放すまいとして孝謙天皇と対立した恵美押勝(藤原仲麻呂)、独身の女帝に取り入って天皇の座をも狙った道鏡。いずれの事件も、おおまかな流れは知られていますが、それらは史実と言えるのでしょうか?

本書では、事件のあらまし、時系列順に出来事を並べたドキュメント、それを解釈する「真相に迫る」という順番で語られています。ドキュメントの部分が特に興味深く、資料などをもとにいつの時点でどんな動きがあり、どんな指令が飛んだのかなどが把握しやすくなっています。

著者の遠山美都男さんは、日本古代史がご専門で、史書の裏側を読むような論を展開する方ですので、やや違和感を覚える部分も出てきます。

例えば、一般的には、藤原広嗣の乱の際に聖武天皇が東国行幸をしたのは、壬申の乱を意識して、天武天皇の直系であることを自認し、それをアピールするためと解釈されています。しかし、本書では天武天皇系ではなく、天智天皇の直系となる文武天皇の正当なる後継者を意識していたとされており、藤原氏と新田部親王の血統との融和のため、あえて天武天皇の名前を持ちだしたのだと読んでいます。

「聖武天皇は、自身の皇統を継承するのは藤原氏の娘が生む皇子と決めていた」という説も述べられており、有力な後継候補であった安積親王(藤原氏のライバルに当たります)が不可解といえる死を賜り、藤原仲麻呂が暗殺したという説も根強いですが、それも無かったとしています。当初から後継候補として見ていなかったのだから、わざわざ暗殺する意味は無い、という論ですね。

この時代の史書は、処刑された皇太子・早良親王の記述が掲載されたり、一転して削除されたり、権力者の意に沿うように歪められがちです。どれが真実なのかは分かりませんが、色んな説に触れておくのも楽しいですね。歴史好きな方はぜひ!


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