正倉院展六十回のあゆみ
奈良博「正倉院展」の60回目までを振り返った一冊。戦後からの変遷が分かる充実の内容です
毎秋の恒例となった、奈良国立博物館の「正倉院展」。60回目の開催を記念して、2008年、正倉院展の歴史をまとめたのが本書です。奈良博が編集したあ展覧会図録っぽい作りですが、版元は思文閣出版さん。一般流通している書籍です。
本書では、各回のポスターや図録、入場券の写真とともに、展示内容の特徴、出陳一覧、代表的な宝物の写真と解説などが掲載されていて、その時代の雰囲気が伝わってくるようでした。
私などは、現在の形の正倉院展しか知りませんが、これまでの歴史を振り返ってみると、会期の長さ・展示スペース・企画内容など、いろんな変遷があることが分かります。「この回は豪華だ」「この年は渋い」など、出陳リストを見ていくだけでも楽しめますね。
説明文:「正倉院展六十回を記念し、各回の出陳リスト、目録表紙とポスターなどの印刷物、そして主な宝物を紹介するとともに、長年正倉院展に親しんでこられた方々が正倉院展の思い出を寄稿。さらに、過去の正倉院展図録に掲載された用語解説の集大成を付け加えた。」
戦後すぐの1946年(昭和21年)に第一回が開催されましたが、この時の会期は20日間。前日に進駐軍招待日があり、期間中には奈良市内の学生の無料拝観日を2日間設けたりしたそうです。戦後間もないにもかかわらず、15万人弱もの人が押し寄せる大盛況となったとか。
その後、しばらくは拝観者数が1日あたり1万人を超えない時代が続いていましたが、2005年(平成17年)の第57回から。読売新聞社の協力が始まり、17日間で約23万人を突破。その後も入場者数を増やしています。
その年ごとの出陳リストを眺めていくと、経文や布類が中心の年があったり、聖武天皇遺愛の品がそろって登場したり、テーマが見える年も少なくありません。その年に研究や補修が進められた品がその成果を発表する意味も含めて出陳されたりもしているとか。これまでの歴史をおさらいしてみると、いろんなことが見えてきて面白いですね。
今年(2014年)は、天皇皇后両陛下傘寿記念「第66回正倉院展」(2014年10月24日~11月12日)となります。
鳥毛立女屏風・白瑠璃瓶など、正倉院宝物の概要が伝わる構成となっているのと同時に、天皇皇后両陛下の傘寿を慶祝するような、華やかな宝物が揃っています。さらに、お祝いのため、11月12日(水)には久々に無料拝観日も設けられています!
出陳される宝物を事前に予習しておくと、より理解が深まりますので、本書も含めて、ぜひ正倉院関連の書籍を手にとってみるといいでしょう!