2014-09-06
東大寺 美の小箱―杉本健吉画文集
洋画家・杉本健吉さんが東大寺を描いた作品を集めた画文集。味があってどれも素敵です!
奈良の風物を描き続けた、洋画家でありグラフィックデザイナーでもあった杉本健吉さんが、奈良・東大寺を描いた作品を集めた画文集。
東大寺をモチーフとした作品を数多く遺し、奉納された幡・散華・絵馬など、さらに連作「お水取り」「東大寺幻想」などが収録されています。どの作品も、一見ラフでプリミティブな印象もありますが、独特の線と形で表現されていて、そこにほのかなユーモアも加えられています。
白黒で描かれた「お水取り」の作品群は、毎年恒例の奈良博「お水取り展」などでよく拝見していましたが、こんなに多彩なタッチを駆使している方だとは思っていませんでした。
例えば、東大寺大仏殿を描いたものにしても、形が歪んでいたり、柱の本数が足りなかったり、目に見えないものが書き加えられていたり。どの作品も写実とは正反対のものですが、いずれも大仏殿の大きさ・偉大さ、そして霊性を端的に感じさせてくれます。
本書の後半には、親友だった入江泰吉さんが撮影した写真と、杉本さんが描いた絵が、同じアングルで対比できるようなページ構成もあります。大仏殿や三月堂、二月堂への小径、そして私がもっとも美しいと思った「講堂跡」など、楽しく見比べられました。
奈良好きにはたまらない内容ですから、ぜひ手にとってみてください!