奇蹟の奈良
奈良の魅力を撮り続ける写真家と、人気の歴史作家。奈良愛があふれるフォトブックです
奈良の魅力を撮り続ける写真家・西岡比古司氏の作品と、人気の歴史作家・関裕二氏の奈良愛あふれるテキストが掲載された一冊。平城遷都1300年に合わせて出版されたものですが、そんなお祭りムードとはまったく関係なく、美しい奈良の様子を伝えています。
説明文:「平城遷都1300年記念。大和の魔力に憑かれた写真家と歴史作家による奈良 フォトブックの決定版!奈良を撮り続けて半世紀の写真家が5万点から選びぬいた奇蹟のベストショット。奈良に出会ったことで人生が一変してしまった歴史作家が綴る、聖地に潜む神話と伝説と謎。飛鳥、斑鳩、吉野。山より聞こえる神々の声、遺跡や萬葉歌に隠れた古代史の悲劇。これを見ずして日本の歴史を、聖地を語るなかれ」
写真とテキストで紹介されているのは、山の辺の道・斑鳩・吉野・西ノ京・東大寺・二上山・ならまちなど。西岡氏の写真は、いずれも決してドラマチックに煽りすぎず、あるがままの大和の国の姿を捉えています。いずれも狙いすぎて騒々しさを感じるようなものではなく、イメージとしてほぼ「無音」ですね。郷愁をそそる静止画の中に入り込んだような印象すら受けます。
『「奈良の美」といえば、仏像や神社仏閣を思い浮かべるだろう。けれども、幾度も奈良を尋ね歩くうちに、ヤマトの美の真髄は、山や川、風や雲に隠されていることに気づかされる。西岡比古司氏の写真は、その「ヤマトの美の真髄」を突いている。』と関氏は評していますが、まさにその通りですね。
掲載されている関氏の文章も、奈良への愛着にあふれています。普段は学会から異端視されるような歴史推理を展開することもある方ですが、古に大和の土地を歩いていた人たちへの畏敬の念が感じられます。
「倭(やまと)は 国のまほろば たたなづく 青垣 山隠れる 倭しうるはし」
大和の地を偲びながら非業の死を遂げたヤマトタケルの歌が思い浮かぶ、素晴らしい内容でした。