奈良 地名の由来を歩く (ベスト新書)
足を使って地名の謎を考察していく人気シリーズの奈良編。読み応えある良書でした!
日本各地を実際に歩き、地名の謎を足を使って考察していく人気シリーズの奈良編。筆者さんは奈良にはそれほど詳しくなかったようですが、本書のために1年がかりで奈良県内を歩き、多数の文献にあたり、面白い切り口で奈良の各地を紹介してくれています。読み応えもある良書でした!
説明文:「「大和こそ本当に美しい国だ」はるか太古、日本武尊が死ぬ直前に奈良を讃えた歌を詠んでから、途方もなく長い年月が流れた。しかし、奈良は変わることなくその姿を保ち、旅人たちを迎え入れる。本書は、大好評『東京・江戸 地名の由来を歩く』に続く、地名シリーズ第三弾。未だ謎の多い奈良の地を著者・谷川彰英が丹念に歩き、ついにその歴史をつきとめた!「春日」、「飛鳥」、「忍阪」、「箸中」、「多武峰」、「国栖」…地名に宿る壮大な歴史物語とは。周辺地図、写真、折り込みマップつきで観光ガイドとしても最適。」
第一章「「春日」に隠された謎」。第二章「神武天皇の足跡を地名で追う」は、それぞれの土地を歩き、長めの考察を加えています。
例えば、飛鳥という地名は、「アズ(崩壊)+カ(処)」という説や、「ア(接頭語)+スカ(須賀。※すがすがしいの語源)」などの説があるとか。万葉集などに今と同じ「明日香」の文字が充てられていますが、これは単に音を漢字で表しただけで、何の意味もないのだそうです。飛鳥という表記になった理由は、アスカの枕詞「飛ぶ鳥の」から来ています。そして何故この枕詞が用いられるようになったのかは不明ですが、一般的にはアスカの土地に昔は目立つ鳥がいたのではないかなどと言われているそうです。
そして、筆者がこの土地を歩いて導き出した結論は「三輪山を中心にした山容説」。三輪山を中心に置き、左側に龍王山、右手に巻向山があり、あたかもこちらへ飛んでくる鳥のようだ…という説を提唱しています。筆者独自の推理が混じりますが、このように読み解きながら奈良の地名を見直していくのも面白いですね。
第三章以降は、神社名・奈良仏教に関連した名前・峠の名前・難読地名などを、テンポよく紹介していきます。気になった部分を、メモ代わりに簡単にご紹介しておきます。
●かつて奈良の語源は、古代朝鮮語の「都(ナラ)」に由来するという説があったが、今は「均す(ならす)」説が一般的なのだとか。全国各地に「奈良」の地名はあるが、大和の奈良から来たものではなく、整地された土地に自然につけられやすい名前だったそうです
●日本の古称は「秋津島(あきつしま)」で、そのシンボルが「蜻蛉(とんぼ)」。御所市には、「国見山」やヤマトタケルの「白鳥御陵」があり、その近くには秋津小学校・秋津郵便局も。秋津小学校の校章はトンボがデザインされているとか。
●「當麻(たいま)」の地名の語源は、「たぎたぎしい」(古語で、でこぼこのあるさま)から。日本書紀の履中天皇記に、大坂で会った少女に道を尋ねると、武装した敵が待ち構える近道の穴虫峠超えの道ではなく、たぎたぎしい道「当摩径(たぎち)」を教えてくれたとあるそうです。これが現在の竹内峠に当たります
●野迫川村は、明治22年に野川村・迫村・川並村が合併した際に、その頭文字をとったもの。いわくありげな名前ですが、意外と単純でした(笑)
などなど。地名の語源という、一般人には分かりづらいテーマを扱っていますが、歴史の話も適度に掘り下げながら、全般的に面白い読み物になっています。なかなかのディープな場所にも足を伸ばしていますので、興味のある方はぜひ!