赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて
消えゆく「赤線」の雰囲気を伝える350枚もの画像が圧巻!貴重な資料です
かつては日本各地にあった「赤線」(≒売春街)を訪ね歩き、350枚もの画像とともに詳細に紹介した一冊。掲載画像は、そこに働いていた女性たちや客たちではなく、あくまでも街の雰囲気と建物のみです。1998年発売の古い本ですが、同テーマの書籍の中でも読みやすさは抜群ですね。
説明文:「二度と帰らない、あの街の悲喜こもごもの思い出。戦後の都市空間を彩った建築物と町並みの、半世紀を経た現在の姿を記録。350枚の写真でつづる「哀悼の散策」への誘い。」
本書で取り上げられるのは、吉原・品川・千住・新宿・新小岩・玉の井・調布・八王子・横浜・川崎などの関東近郊のもの、東京パレス・鳩の街などの有名施設など。今では赤線があったことなど信じられないような街にも存在していたようです。また、関西方面も少しだけ紹介されていて、大阪・飛田や奈良・大和郡山のものが見られました(この両者は建物的にはよく雰囲気を残している場所だと思います)
戦後間もなくに誕生した「カフェ」などと呼ばれた施設たちは、建築としてみても入口が2箇所あったり不思議な明り採りがあったり、派手なネオンやタイルがあったりと、独特の特徴を持ちます。廃業後も、下宿や安宿になったりして残っていたものもあったそうです。しかし、この本が発売された頃(今からもう15年ほど前)ですら、続々と建物は取り壊されていたといいますから、今となってはほとんどその姿をとどめていない可能性が高いでしょう。そういった建物や街の貴重な写真が見られるだけでも価値があると思います。
著者の木村聡さんは、『赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて (ちくま文庫)』や『赤線奇譚』という写真集などの著作もある、このジャンルの第一人者です。文庫本で手に入るものもありますので、いずれはそちらも読んでみたいと思います。
なお、巻頭に読者の方へのお願いとして「無遠慮にカメラを向けたりしないこと」などとともに、こんな注意文が掲載されていました。「どうか一人でひっそりと出かけて、何かを感じて下さい。」「さっと通り過ぎて、風のように立ち去って下さい。」心しておきましょう。