暗越奈良街道ガイドブック2012
暗峠経由で難波と奈良を結ぶ街道のガイドブック。記述も詳細で実用性の高い一冊です
奈良時代に難波と奈良を最短で結ぶ道として設置された「暗越(くらがりごえ)奈良街道」。行基によって整備されたとされており、鑑真和上もこの道を辿って平城京入りしたと考えられているほど、古い歴史を持つ街道です。伊勢参宮街道の一部にもなり、古くから旅人が行き交った街道でした。
本書では、大阪市中央区の高麗橋を起点として、暗峠を経由して春日大社までの約34キロの道筋を取り上げています。古くからの街道と、その周辺の立ち寄りコースの両方が掲載してあり、遺跡やコンビニ、トイレなどの情報も豊富ですから、ウォーキングガイド本に最適ですね。
私のような奈良に偏った人間にとっては、奈良県の生駒市から大阪へ抜ける「暗峠(くらがりとうげ)」の名前に興味があった程度で(古い佇まいを残す街道として、また酷道として)、あまりその前後の繋がりを意識したことはありませんでした。しかし、こうして街道に沿って地域を見ていくと、意外なつながりが発見できて面白いものですね。
特に大阪側の記述は私にとって新鮮で、意外な近現代スポットが点在していることを知りました。街道の起点が高麗橋だというのも初めて知りましたし、大阪城の周辺にレンガ造りの古い廃墟がいくつもあること、様々なタイプの道標が遺されていること、松下幸之助の起業の地の顕彰碑・田辺聖子文学館・司馬遼太郎記念館などがあること、全て知らないことばかりでした。特定のエリアを点から円で見るのではなく、街道という線でとらえるからこその発見ですね。
このルートを一日で完歩するのは大変だと思いますが、計17の項目に分かれていますので、順番に歩いてみるのも楽しそうですね。
巻末には、2010年に奈良で開催された「第3回 暗越奈良街道サミット」の模様なども収録されています。奈良市長の仲川げん氏などが参加なさっていて、なかなか読み応えがある内容でした。