2012-08-28
天界の道 吉野・大峯 山岳の霊場
吉野・大峯から熊野三山。神が住まう土地と人々の祈りの姿を追った写真集
高野山を中心に撮影を続けるカメラマン・永坂嘉光さんが、吉野・大峯から熊野三山、そして全国の霊場の厳しい大自然と、人々の祈りの姿を追った写真集。桜が満開の吉野山から、険しい岩山が連なる大峯山、雄大な風景が広がる熊野まで、素晴らしい作品ばかりでした。
2006年に出版されたもので、吉野・大峯が世界遺産登録されたことを記念して、吉野山の金峯山寺に日本全国から修験者が集まって法要を行った様子なども収められていますが、ものすごい迫力です。蔵王堂の金剛蔵王権現像の三尊が見開きページに掲載されていて、その前で祈りを捧げる修験者の姿は、とても神々しいものでした。
またつい先日、私も大峯山へ入峰してきましたが、晴天に恵まれ、近代的な装備を身に着けていても、その道のりは厳しいものでした。この写真集には、山開き直後の雪が残っている風景や、濃い霧に包まれた風景などが収められていて、修行の山の本当の厳しさが伝わってくるようです。プロのカメラマンさんの仕事とはいえ、こうした光景を撮影するためには何度入山したのかと思うと、ある意味では行のようですね。
後半には、「吉野から全国へ -山岳の霊場」と題して、東北の羽黒山や月山から、木曽御岳、戸隠山、御所、金剛葛城、石鎚山などの写真も収められています。さらに、宗教学者・山折哲雄さん、金峯山寺執行長・田中利典さんの短い文章も掲載されていて、修験道の世界観が伝わって来ました。
神が住まう土地と、そこへ祈りながら近づこうとする人間の姿が美しく切り取られた写真集になっていますので、興味がある方はぜひ手にとってみてください!