奈良県謎解き散歩 (新人物往来社文庫)
奈良の中世~近代、自然や産業などが分かる異色の歴史本
奈良に関する歴史を、人物・宗教・民俗・産業・地理・自然などの視点から紹介する一冊。硬派な歴史本を多く出している新人物往来社の文庫シリーズで、これまでに20あまりの都道府県のものが出版されていて、ようやく奈良県版が登場しました。
奈良の歴史本など数多く出版されていますが、本書では中世から近代についての記述が多めなのが特徴です。古代についての記述もありますが、それに偏ることなく、他の都道府県と同じような比率で紹介されているのが斬新ですね。時代別の構成比率が適正レベルなんですが、たったそれだけのことが目新しく感じます(笑)
第一章「奈良県ってどんなとこ?」では、奈良県の現在についての説明から入ります。県民性(「商才がある」「素朴だが粗野」だとか)やランキング・文学・名物などが紹介され、雑学としても面白いですね。
二章目以降は歴史散歩となり、栄光の奈良時代の話題から、比較的早めに中世へと話は移ります。その辺りから特に目新しいエピソードがたくさん登場してきます。「写経所に出向した官人の生活の謎」「法隆寺僧坊の生活の様子とは?」「法隆寺に損害賠償を要求した庄屋一族の謎」など、決して下衆な話題ではなく、楽しく読ませます。さらに、民族・産業編、地理・自然編と、いずれも面白いですね。
内容としては、奈良検定2級を受験するような方向けでしょうか(3級受験の方にはちょっとややこしいかも)。私は奈良検定の勉強をしてから、中世以降の奈良の歴史や産業などにも興味が持てるようになりましたので、ぜひそんな観点からも読んで欲しいと思います。
奈良の有名ブロガー・鉄田さんのブログでも紹介されていますので、こちらも合わせてご覧ください(奈良県 謎解き散歩 - tetsudaブログ 「日々ほぼ好日」)。