日本ボロ宿紀行
人気ブログの書籍化。ブログがそのまま本になると、ちょっと残念
歴史的価値のある古い宿から、単なる安宿までをひっくるめた「ボロ宿」を愛し、わざわざ探しては泊まり歩いたエッセイ。どこかでタイトルに聞き覚えがあると思ったら、同名のブログ「日本ボロ宿紀行」があり、2年ほど前にライブドアが開催した「ブログ奨学金」制度(いくらかの活動資金が援助される)に合格して話題になっていたんですね。そのブログの内容を書籍化したものです。
筆者は、仕事も含めて全国各地を飛び回っている方で、宿泊先にはきれいなビジネスホテルなどではなく、あえて趣きのあるボロ宿を選んでいます。古い湯治場や駅前旅館など、高度成長期以前の雰囲気が漂うものが好みだとか。その感覚はとても共感できますね。まず施設が古い分だけ安いですし、一人で普通の宿に泊まっても面白くもないのですから、そんな選択をする楽しさはあるでしょう。私も古い建築に喜ぶタイプですから、かなり興味深かったです。
ただし、本書では、いわゆる「ブログ本」の良くない点がいくつも見受けられて、読みづらさを感じました。
まず、冒頭と中央にカラー写真ページがあり、ここに掲載された写真は見事です。引きこまれます。しかし、本文に行くと、各ページの下段に小さな白黒写真が掲載してあるだけで、今語られている宿のビジュアルがほぼ伝わってきません。カラーページに戻るのも面倒なので、そのまま読み進めてしまうのですが、小さな白黒写真では部屋の雰囲気などがほぼ判別できず、魅力が半減してしまいます。
また、同じエリアで宿泊した3ヶ所くらいをまとめて一つの章にしてあるため、どの宿のことを語っているのか混乱します。せめて各章の最初に大きめの画像何枚かと宿のデータを掲載することはできなかったのでしょうか?ブログで読んだ方が圧倒的に読みやすいと思います。
ついでに言うと、どこかの土地で「道沿いに彫刻作品がたくさん並んでいた。これは何だろ?」的な文章があったりします。ブログならそれでもいいですが(読者の方が教えてくれたりしますし)、書籍化するなら観光協会に問い合わせるなりして、欄外にでも正解を書いておいてほしいですね。編集さんが手を抜きすぎだと思います。
この本のテーマなどについては大好きですが、残念な点が多すぎて、個人的にはわざわざ書籍を購入するまでとは思えませんでした。ブログはものすごく楽しいですから、ぜひそちらをご覧ください!