2012-06-16

土門拳 (別冊太陽)

徹底的にリアリズムにこだわった「写真の鬼」の全仕事

戦前から戦後にかけて、徹底的にリアリズムにこだわった写真家・土門拳さんの仕事をまとめた一冊。別冊太陽のシリーズで、2009年に生誕100年記念と銘打って出版されたものです。

私のような奈良の仏像好きからすると、土門さんといえば古寺巡礼であり、室生村であり、弘仁仏像(平安時代のもの)といったイメージです。本書では、掲載点数はそれほど多くありませんが、土門さんの撮影を補佐していた方たちのコメントなども多数掲載されていて、「写真の鬼」とまで呼ばれた巨匠の撮影現場の様子が伝わってきます。

私はカメラには詳しくありませんが、土門さんが仏像を撮影する際には、できるだけ自然光にこだわり、ほぼ真っ暗なお堂内で長時間露光をしていたそうです。経験と勘だけが頼りですから、成功率は3割くらい。ピントが深く、独特の「土門カラー」と呼ばれるあの作品群が生まれる現場に立ち会ったような臨場感がありますね。また、ストロボがない時代だったため、フラッシュバルブというものを使用し、土門さんはファインダーを覗くのではなく、これで光を当てる側だったというのも面白いです。

もちろん、それ以外の文楽を撮ったシリーズや、著名人を撮影する「風貌」シリーズ、リアリズム写真の極地とされたヒロシマや筑豊のこどもたちのシリーズなど、多様な仕事を網羅しています。モノクロの力強い作風で社会的な運動を捉えたり、戦後10年以上が経過した被爆者たちの姿を写した作品などは、本当にパワフルですね。戦後の町中で当時の大女優である高峰秀子さんや山口淑子さんを撮影した作品など、特に印象的です。

このような作品を生み出し続けた土門さんですが、その生い立ちやキャリアを見ていくだけでも面白いですね。写真家デビューが遅かったり、左翼的な思想によって職を辞していたり、晩年はほぼ車椅子生活だったにもかかわらず、冬の三佛寺投入堂へ登って撮影したり、最後は11年間も意識不明のまま亡くなったり。私が知らないことばかりでした。巨匠の仕事と人柄を把握するには最適の一冊でしょう。

余談ですが、土門さんは白洲正子さんから「あんな田舎者大嫌い」と言われていたとか。何となく分かるような気がするのが面白いですねw


『<$MTEntryTitle$>』より

『<$MTEntryTitle$>』より

『<$MTEntryTitle$>』より

『<$MTEntryTitle$>』より

『<$MTEntryTitle$>』より


【土門拳 (別冊太陽)】の関連記事

  • 『馬姫様と鹿王子 1巻 (ヤングキングコミックス)』~奈良×仏像にファンタジー風味をプラス。作者さんの奈良愛が溢れる楽しい作品です!~
  • 『いじめられたお姫さま 中将姫物語』~當麻曼荼羅を織り上げた中将姫の物語を分かりやすく。大人も子どもも楽しめます。~
  • 『龍華記』~澤田瞳子さんの「南都焼討」がテーマの歴史小説。意外な展開に引き込まれます!~
  • 『孤鷹の天 (徳間文庫) 』~平城京にあった学問所・大学寮が舞台。歴史小説家・澤田瞳子さんのデビュー作!~
  • 『あをによし、それもよし 1 (ヤングジャンプコミックス)』~奈良時代へタイムスリップした山上(憶良)主役のコメディ。面白い!古代好きはぜひ!~
  • 『天誅組―その道を巡る (京阪奈新書)』~奈良県内を中心に「天誅組」ゆかりの地をまとめたディープなガイドブック~
  • 『ならしかたなし 1 (花とゆめCOMICS)』~大仏顔の女子高生とクールな鹿。奈良を舞台にしたシュールなコメディー漫画!~
  • 『平城京のごみ図鑑 最新研究でみえてくる奈良時代の暮らし』~平城京の“ごみ”から見えるリアルな奈良時代。分かりやすくて面白い良書です!~
  • 『古墳空中探訪 奈良編』~奈良の古墳の空撮写真集。時代ごとの環境の変化も見られ、空中散歩の妄想が広がります~
  • 『DEER LAND -誰も知らない鹿の国-』~鹿たちの姿を印象的に切り取った素晴らしい写真集。奈良好きな方は必見です!~
  • 『沈黙する伝承―川上村における南朝皇胤追慕 (あをによし文庫)』~資料を読み解き「後南朝」の人々がよりリアルに。読み応えのある良書です!~
  • 『神饌 供えるこころ』~神さまにお供えする「神饌」を通じて、カラフルで清浄な奈良の表情が見られます~






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ