2012-05-17

奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。

中川政七商店の若社長が中小企業のブランディングを語る

奈良の老舗企業「中川政七商店」の十三代目が書いたビジネス本。中小企業のブランディングについて、平易な文章で綴られています。私はビジネス的な内容には興味がないため、中川政七商店さんのいちファンとして拝読しましたが、とても興味深かったです。

今でこそ百貨店やSCで「遊中川」「粋更(kisara)」のショップを見かけることも珍しくありませんが、同社は1716年創業の奈良晒を扱う商店からスタートしています。老舗のご子息であれば、幼い頃から会社の跡継ぎとして英才教育を受けたりしたのかと思いきや、先代からは全くそんなことを言われることもなかったそうです。社会人生活を2年で切り上げて家業へと入ってから、旧態依然とした商売の慣習を改めることに注力。地方の中小企業でもできる方法でブランド力を高め、ついには表参道ヒルズにまで出店するまでの、経営的な指針などが解説されています。

…とはいえ、「遊中川などは歴史ある老舗ブランドだから特殊な例だ」と考える方もいらっしゃると思いますが、同氏が入社した10年前の社内の状況は、決して楽観できるようなものではなく、伝統産業に携わる企業ならではの焦りがあったでしょう。何もしなければ市場は先細るばかり、でも動き方が分からない。よくある状況だったと思います。そんな地点から、今では全国的に知られるようになったブランドを築き上げていったのですから、その方法論には説得力がありますね。

●ブランドの価値を高めるために、デザイナーではない経営者ができることは「ブランドという下駄をすべての商品に履かせてあげることだ。」
●広告にはお金をかけない代わりに、新聞や雑誌に取り上げられるようにする。ここで重要なのは、「商品に『切り口』をいかに持たせるかだ。」

などの言葉が印象的でした。この本がどこまでビジネスに役立つかは、私には分かりませんが、伝統産業にかかわる企業にとって一つの目標となるでしょう。同社のように、奈良から全国へ羽ばたく企業が登場することを願っています!


【奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。】の関連記事

  • 『彼岸の図書館: ぼくたちの「移住」のかたち』~東吉野村の私設図書館オーナーご夫妻の移住生活。自分の居場所について考えさせられる良書です~
  • 『馬姫様と鹿王子 1巻 (ヤングキングコミックス)』~奈良×仏像にファンタジー風味をプラス。作者さんの奈良愛が溢れる楽しい作品です!~
  • 『いじめられたお姫さま 中将姫物語』~當麻曼荼羅を織り上げた中将姫の物語を分かりやすく。大人も子どもも楽しめます。~
  • 『龍華記』~澤田瞳子さんの「南都焼討」がテーマの歴史小説。意外な展開に引き込まれます!~
  • 『孤鷹の天 (徳間文庫) 』~平城京にあった学問所・大学寮が舞台。歴史小説家・澤田瞳子さんのデビュー作!~
  • 『あをによし、それもよし 1 (ヤングジャンプコミックス)』~奈良時代へタイムスリップした山上(憶良)主役のコメディ。面白い!古代好きはぜひ!~
  • 『天誅組―その道を巡る (京阪奈新書)』~奈良県内を中心に「天誅組」ゆかりの地をまとめたディープなガイドブック~
  • 『ならしかたなし 1 (花とゆめCOMICS)』~大仏顔の女子高生とクールな鹿。奈良を舞台にしたシュールなコメディー漫画!~
  • 『平城京のごみ図鑑 最新研究でみえてくる奈良時代の暮らし』~平城京の“ごみ”から見えるリアルな奈良時代。分かりやすくて面白い良書です!~
  • 『古墳空中探訪 奈良編』~奈良の古墳の空撮写真集。時代ごとの環境の変化も見られ、空中散歩の妄想が広がります~
  • 『DEER LAND -誰も知らない鹿の国-』~鹿たちの姿を印象的に切り取った素晴らしい写真集。奈良好きな方は必見です!~
  • 『沈黙する伝承―川上村における南朝皇胤追慕 (あをによし文庫)』~資料を読み解き「後南朝」の人々がよりリアルに。読み応えのある良書です!~


  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ