歌う。尼さん
歌手デビューしている奈良の尼さん。闘病体験の告白も
「歌う尼さん」として、全国の寺院コンサートなどを行なっている「やなせなな」さんの自伝的エッセイ。奈良県にある、浄土真宗本願寺派の華咲山教恩寺に生まれ育ち、僧侶として勤めながら歌を歌い続けている方です。
バラエティー番組などにも登場したりなさったりしていましたし、地元に近いところでコンサートがあったりしたので、そんな活動をなさっている方がいることは知っていました。図書館で著書を見つけて気軽に手にとってみましたが、文章はサラッと気負わずに読めるのですが、なかなかヘビーなエピソードが多めです。小さい頃のいじめ体験や、学校に馴染めず高校と大学で留年、大好きな歌が認められてデビューしたと思ったらガンが見つかり子宮を摘出。「マスコミが取り上げられる=華やかな人生」とはとても言えない歩みですね。
面白かったのが、お寺に生まれ育った著者ならではの幼い頃の描写です。生活のすぐ近くに仏具や仏像があり、お寺を切り盛りしていた祖母との会話の中には、普通に「にょらい」「おじょうど」といいう言葉が登場します。今ではそんな会話を交わす家庭も少なくなってきたと思いますが、私も信心深い祖母に可愛がられただけに、とても懐かしい感じがしました。
そんな彼女の歌は、YouTubeにもアップされています。「さくら」「願い」など。エッセイの中に登場しましたが、「願い」は廃校となった彼女の母校で、「さくら」はおそらく彼女が生まれ育った華咲山教恩寺で撮影したのではないかと思います(華咲山の山号に相応しい見事な桜です)。メロディーは美しく、歌声も柔らかでいながら力強さが感じられます。
今は積極的にお寺コンサートを行なっていて、歌とともに闘病体験を語ったりなさっているとか。首から輪袈裟を下げ、数珠を持ってステージにのぼっているそうです。そのステージを拝見する機会もきっとあると思いますので、楽しみにしたいですね。