2012-04-10

大和古物拾遺

春日大社の岡本彰夫さんによる、奈良の古物エッセイ第三弾

春日大社の権宮司・岡本彰夫さんによる、奈良の古物に関するエッセイ第三弾。前2作からはやや時間を置いて、平城遷都1300年祭に湧いていた2010年の発刊です。内容を簡単に説明すると、奈良にまつわる人や物を愛情を込めて紹介する、郷土の歴史番組と「なんでも鑑定団」をミックスしたような楽しさです。

●物では、宇治人形(奈良の一刀彫に似たもの)・橿原焼・古い絵馬・大和萬歳・法隆寺の百萬塔など
●人では、片桐宗幽・公慶上人・湛海律師・聖徳太子・筒井順慶など

ここに挙げていない、私も初めてその名前を聴くような人たちや物たちが紹介されていて、とても楽しく読めました。

特に興味深かったのは、廃仏毀釈によって廃絶した、天理市の大寺院「内山永久寺」に関する項目でした。その当時の様子を記した文献などが紹介されるとともに、散逸したゆかりの物たちが紹介されるなど、今ではただの寺院跡としてしか捉えられない内山永久寺の姿がくっきりと想像できます。

ちなみに、明治8年に内山永久寺の伽藍が競売にかけられたそうです(それ以前に焼かれたものも多かったとか)。本堂の落札金額は125円。奈良市杏村の光楽寺に今でも遺っているとか。現在、石上神宮の摂社となり国宝に指定されている「建雄神社拝殿」(中央に馬道がある割拝殿の造り)は75円。この時、聖林寺のご住職が「70円までだったら…」と頑張られたのだとか。ほんのちょっとしたことで、あの建物が聖林寺にあったかと思うと面白いですね。

このような渋めのエピソードが読める良書です。なかなか手に入りづらいかもしれませんが、奈良マニアの方は、ぜひシリーズで読んでみてください!


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