2012-02-19
会津八一と奈良―歌と書の世界
奈良を題材として詠まれた素晴らしい歌の数々
歌人・会津八一(秋艸道人)が奈良について詠んだ114首を収録。写真は入江泰吉さん。奈良の古寺や仏像、鹿などを題材として、本当に素晴らしい歌を詠まれています。大正明治期に活躍した方ですが、とても親しみやすい言葉遣いのため、今見ても全く古さを感じさせません。奈良のお寺巡りの際には、ぜひその場で口ずさんでみたい歌ばかりです。
●東大寺・盧舎那仏像
おほらかに もろてのゆびを ひらかせて おほきほとけは あまたらしたり(大意:大きくゆたかに両手の指をおひらきになって、この大仏さまは宇宙に広く満ちひろがっていらっしゃるのだ。)
●唐招提寺
おほてらの まろきはしらの つきかげを つちにふみつつ ものをこそおもへ(大意:大寺の円い列柱が、月光をうけて地上に影を落としている。その影をふみながら、回顧の思ひにひたったことだ。)
●新薬師寺・香薬師像
みほとけの うつらまなこに いにしえの やまとくにばら かすみてあるらし (大意:香薬師のうつらうつらとした目には、遠い古代の大和国原が霞んで見えていらっしゃるらしい)
まだこの時代は、新薬師寺の香薬師像も現存していました(後に盗難にあい、今はレプリカが置かれています)。また、堀辰雄らとも時代が近く、法華寺・海龍王寺・秋篠寺・喜光寺などの荒れ果てたさまが描かれているのも興味深いですね。
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