2012-02-16
正倉院 あぜくら通信
正倉院の職員の方の特殊な日常を描いた興味深い一冊
正倉院の職員の方が、その特殊な日常業務について描いた一冊。とても興味深い内容でした。なかなか一般には伝わってこない正倉院周辺の様子がリアルに描写されています。
正倉院の建物は数年に及ぶ大修理に入ってしまいましたが、ここにはもうすでに宝物は収蔵されていません。全ての宝物は、敷地内の一般には目に触れないエリアにある、完全防火になった西宝庫・東宝庫に収められています。私もここまでは知っていたのですが、東宝庫では通常の業務をしていますが、一方の西宝庫は勅封されていて、勅命が無ければ開かれないのだとか。そんな使い分けがあったとは知りませんでした。
また、正倉院の敷地内に、鑑真和上が来日した際に一番最初に住したとされる「旧四聖坊・持仏堂」が遺されていたりもしますし、ここを警備するのは「皇宮警察本部京都護衛署正倉院派出所」だったりと、なかなか他では知りえない小さな情報が散りばめられているのが楽しいですね。
職員さんの年間カレンダー・仕事場・安全管理・新人の配属などはもちろん、実際に最前線で触れているからこそ分かる「重そうに見えて軽い宝物」などの記述も面白かったです。もちろん、宝物の歴史などについても解説されていますので、予備知識なしで読むにはやや難しいかもしれませんが、正倉院展に何度か足を運んでいる方であれば興味深く読めるでしょう。