2012-01-21
大台ヶ原山 知られざる謎
役小角すら立ち入らなかった「大台ケ原」の開発の歴史
紀伊半島で和歌山と奈良を隔てる山域「大台ケ原」について、代表的な人物の足跡から歴史をたどった一冊。明治時代にも「役小角、行基、空海ですら立ち入らなかった」と語られていたほどの土地です。山岳高地での修行を行った彼らでさえ、この山に分け入った形跡がないというのですから、よく考えれば不思議なことですね。
幕末から明治にかけて、北方探検で名を馳せた探検家「松浦武四郎」が、その晩年に大台ケ原の調査・探索をしたことから、この地域が広くその名前を知られるようになりました。その後、「古川嵩(かさむ)」によって、大台ヶ原に教会が建てられますが、廃仏毀釈の時代ならではの苦労があったようです。この二人のエピソードを丹念に追っているため、地名などやや分かりづらい部分はありましたが、開拓秘話として十分に楽しめる内容でした。
また、伝承などをたどって、この一帯が水銀などの鉱物を産出したため、禁足地に近い扱いだったのではないかなどの検証も行われています。一本足のたたらの話や、この土地で最後に見つかったニホンオオカミの話なども興味深く読めました。