2011-08-12
奈良名所むかし案内―絵とき「大和名所図会」
江戸時代の観光ガイド本『大和名所図会』から見た奈良の風景と風俗
江戸時代に全国で作られた、名所の絵に解説文を織りまぜた「名所案内記」。1791年に発刊された6巻7冊に及ぶ『大和名所図会』をもとに、江戸時代の奈良の風景と風俗を見ていきます。
公慶上人に尽力によって大仏殿が再建され、1692年には大仏開眼供養が1ヶ月にわたって催され、諸国から20万人という参詣者を集めたことから、奈良は観光都市として復権しました。そんな参拝者のためにも、このような名所図会が重宝されたんでしょうね。東大寺や春日大社などの古社寺はもちろん、飛鳥・當麻寺・葛城など、奈良の風景が描かれています。
時代によるものもあって、役行者が禿頭のオッサンに描かれていたり、貝原益軒が見たという、吉野・宮滝の高所から飛び込む見世物をしていた人物が登場したりと、不思議な印象を受けるものもあります。寺社の境内図を見ると、いずれも今よりも広大な敷地を誇っているのは伝わってきますが、細かすぎてよく見えない部分が多いのが残念です。そんな不満はありますが、見ていて間違いなく楽しい一冊ですね。