萌の朱雀 [DVD]
河瀬直美監督が世に出た名作。尾野真千子さんが初々しい!
奈良を描き続ける河瀬直美監督が、1997年カンヌ国際映画祭で、日本人初のカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞し、世に出た作品。奈良県西吉野村を舞台に、奈良県五條市と和歌山県新宮市を結ぶ「五新鉄道」の建設が中止になった頃の、その影響を受けた一家を描いています。
出演者は、國村隼さん以外はほとんど新人と素人ですし、みんなセリフも少なく、感情の起伏も抑えられていてボソボソッとしゃべります。奈良の山中を舞台にした、どこにでもあったような集落と家族が解体されていく様を、静かに静かに追っていきます。とにかく静かに、そして地味にストーリーが進みますので、この世界観が苦手な方は一切受け付けないかもしれませんね。
しかし、家族全員の飾らない(素人っぽい)演技は、不思議なリアリティーがあり、恋愛感情や不安、諦めなどが入り交じった感情たちが交錯する様が、肌感覚で伝わってきます。また、映像も奈良の田舎に行けばどこででも見られるような風景ですが、河瀬監督が切り取ると、風景そのものが意味を持ってきます。見慣れた映画ではなく、ドキュメンタリーに近い見せ方になっています。
同居するいとこ・栄介にほのかな恋心を寄せる「みちる(尾野真千子)」が特にいいですね。作品当時は中学生で、この後で「殯の森」にも主演、来季はNHK朝の連ドラの主役にも抜擢されるそうです。また、静かな孤独を表現した國村隼さんの存在感もさすがでした。
ちなみに、私たちはこの映画を観るのは2回目でしたが、1回目の時はウチの奥さんはストーリーが理解できなかったとか。それほど難しい設定でもありませんが、河瀬作品は説明的なセリフなどはほとんどなく、それを感じさせるシーンを積み重ねていきますので、迷子になりやすいかも。映画を観る前にあらすじなどを読んでおくのもいいかもしれませんね。