
七夜待 [DVD]
<ネタバレと酷評が続きますのでご注意ください!>
(※ネタバレと酷評が続きますのでご注意ください!)
主演は長谷川京子さん。河瀬直美監督が珍しくタイを舞台に撮影した映画です。結論から言ったら、本当にひどい映画でした。
まず、主人公の女性が、最初から最後までいけ好かない。現地語も英語もほとんど出来ない日本人女性がタイへ行き、でかい荷物を引きずりながらホテルを探す。そして、あろうことか、シャツを脱いで刺激的なタンクトップ姿に。ホテルが遠いと分かったので、タクシーを拾い、後部座席に座った途端に、首すじに意味ありげに乳液だけ日焼け止めだかを塗り始める。バックミラー越しに運転手さんと目があったら、「いやだいやだ」と言わんばかりにサングラスをかけ、その数秒後には熟睡してる。こいつバカなの?
そんな世間知らずが一人でタイに行くんだから、何かワケありなのかと思っていると、後で数回、元恋人らしきタトゥー入りの男から、タイ古式マッサージらしきものを受けている短い回想シーンが挿入されるけど、説明はそれだけ。最後までそれだけ。人物描写が全く深まらない。
まさかと思って、後から公式サイトを見てみたら、「ひとやすみとリセット。“滞り”は流れ、本当に美しくなる─。彩子30歳。日常を離れ、タイで過ごした七つの夜。古式マッサージに触れ、癒されながら新しい自分に出会う物語」とか書いてある。ただ単に癒しを求めて来たらしい。やっぱりバカでしょ?
この設定であれば、せめて「現代の大人のファンタジー」的な描き方をすべきなのに、古式マッサージはほんの一瞬で、何のキーにもなっていない。ただし、周囲に馴染み、リラックスして美しくなっていくのは伝わってきたので、そこだけは唯一褒められる部分かも。
現地の人たちも現実感は皆無で、タイ人の母子(父親は日本人らしい)、何故か同居してるタクシー運転手(娘は売春婦?)、意味不明なフランス人男性(ゲイ)。小さなエピソードは出てくるけど、それぞれの関係性も不明だし、全部ぶつ切りで共感できるところが全く見つからない。映画を観終わって、登場人物の誰一人として好きになれないなんて、致命的としか言いようがない。
また、この監督さんは、現地の風景を切り取って、そこに根付いた人々の小さなエピソードを積み重ねてストーリーを紡ぎ上げる人だと認識しているけど、この映画に関しては全て逆効果。タイ人の出演者すら現実感が希薄なのに、当然、主人公はそれ以上によそ者丸出し。そんな人たちを描いた合間に、タイの濁った川、混沌とした屋台、野良犬たちなどのカットを挿入されても、タイの現実の風景全てが汚らしく見えるだけ。
最後に。カンヌをとった傑作『殯の森』の後で観たため、あまりの落差に切なくなるほどでした。河瀬監督のファンでも、まだ未見の方はそのままスルーしておいた方が無難かもしれません。ただ、長谷川京子さんのファンの方、癒しを求めるOL目線をお持ちの方は、観ておいてもいいかもしれませんね。それだけ。