2017-01-20

面白かった「奈良関連本」まとめ(2015~2016版)

面白かった「奈良関連本」まとめ(2015~2016版)

2015年から2016年にかけて読んだ、面白かった「奈良関連の本」をまとめました。興味深かった・もう一度読みたいなど、選んだ理由はいろいろですが、初心者向けというよりも、歴史本などかなりディープなものが集まりました。ご参考になるかどうかは不明です(笑)


「知らない奈良」が見つかる本が好き

普段から「読書」を趣味にしている私。「【奈良住】読書リスト」というページで、メモ代わりに簡単な感想文なども掲載しています。

久々に「面白かった奈良関係の本などを振り返っておくか」と年始に思ったものの、昨年2016年は「67冊」分の感想文しか書いていませんでした。

「ブログの趣旨と外れている」といった理由から、読んでもブログに書かなかった本もいくつかあるので正確な数ではありませんが、2015年は「133冊」、2014年は「163冊」、2013年は「254冊」だったことと比べると、寂しすぎるほど減ってしまいました。

しかし、これはじつは、2016年秋に発売された著作『奈良を愉しむ 弘法大師空海が歩いた奈良』の準備の影響が大きいのです。

この参考文献を手当たり次第に読み漁り、必要なものは何度も重ねて読み込んでいく必要がありました。また、発売前に書籍の情報を漏らすこともできませんから、うかつに「こんな本を読んでます」とも言い出せないため、これら(主にお大師さま関連、さらに遣唐使や当時の歴史についての本など)についてはカウントされていないんですね。

……ということに気づいて、自分でもかなり驚きました(ここまでが言い訳です)。

そこで、2015年くらいにまで範囲を広げて、個人的に面白かった(興味深かった・もう一度読みたい・ぜひ人にお勧めしたいなど)「奈良関連の本」をまとめてみました。

「こんな奈良、知らなかった!」というものが印象に残りやすいこともあって、ちょっと硬めの内容の変化球的なものが多いですが、読みながら知的興奮状態に陥いったものも少なくありません。何らかのご参考になれば幸いです。


奈良の歴史や風物についての本

正倉院文書の世界―よみがえる天平の時代

日本史の研究では、平安時代より奈良時代のほうがよくわかると言う。正倉院文書があるからである。美しく飾られた天皇や皇后の肉筆、戸籍などの公文書もあれば、下級役人の昇進嘆願書や盗まれた物を捜すための休暇願、待遇改善を訴えるメモも残されている。華やかな東大寺大仏開眼の模様、クーデターの内実、さらには庶民の衣食住まで、バラエティ豊かな文書から天平の息吹きを感じてみよう。あわせて流出した文書の謎も解明。(内容紹介より)


正倉院に保管されている「正倉院文書」について、わかりやすくその魅力を解説した一冊。正倉院展で展示されていても、他のきらびやかな宝物に目を奪われがちですが、本書ではその楽しさが存分に伝わってきました。

正式文章の裏側が再利用されたものは、役所内の事務的な文章に使われたりします。当時の写経所に働く人々の生活がリアルに伝わってくるような内容が残っていたりして、これがめっぽう面白いんですよね。「首都の役場に勤務する臨時職員」というようなイメージで、サラリーマンの悲哀が伝わってきます。またぜひ読み直したい一冊です。

●【紹介記事】正倉院文書の世界―よみがえる天平の時代 (中公新書) (by【奈良住】読書リスト)


仏師たちの南都復興: 鎌倉時代彫刻史を見なおす

平氏一門によって一夜のうちに灰燼に帰した南都(興福寺・東大寺)は、誰の手によってどのようにして復興されたのか。朝廷・摂関家・幕府・寺家それぞれの思想や意図を明らかにするとともに、多くの作例から復興造像と仏師たちの関連性を探る。造像の担い手を運慶ら慶派中心で論じる従来の学説に一石を投じ、新たな鎌倉時代彫刻史の地平を広げる。(内容紹介より)


平氏の軍勢によって引き起こされた南都焼討。その復興事業から、運慶・快慶らを擁した「慶派」が勢力を伸ばし、次第に他派を圧倒していった。そんな慶派中心の史観を丹念に再検証し、違った見方を提示しています。かなり学術的な内容で難解な部分はありますが、施主となった朝廷・摂関家・幕府・寺家の思惑や、仏師たちの勢力争いなどが解説されていて、仏像好きとしてはぐいっと引き込まれました!

東大寺と興福寺の各堂塔について、どのような復興計画がなされたのかを丹念に検証しており、当時の様子が浮かび上がってきます。今まで気づかなかった南都復興の様子が伝わってくる良書でした。

●【紹介記事】仏師たちの南都復興: 鎌倉時代彫刻史を見なおす (by【奈良住】読書リスト)

大和のたからもの (奈良を愉しむ)

奈良には一般にはまだまだ知られていない風物、人物、工芸品などの「たからもの」が多く存在しています。永年、春日大社の権宮司を勤め、奈良の古文化への深い造詣をもち、大学でも教鞭をとる著者が、数あるテーマのうちから近世・近現代の項目中心に40件を厳選。「大和のいのり」「大和のいとなみ」「大和のたくみ」の三章立てで紹介します。各項目に付される美しい写真とともに見て、読んで、奈良の奥深さが味わえる一冊です。(内容紹介より)

春日大社の元権宮司で、現在奈良県立大学の客員教授をなさっている岡本彰夫さんのご著書です。近現代の工芸品や芸術家などどもふくめ、奈良に伝わる古物の世界を、美しい写真と豊富な知識から紹介しており、読み応えたっぷりでした!

例えば、新薬師寺の十二神将(天平時代)の中で、1体だけ江戸時代の地震で砕けてしまい、作り直された「波夷羅大将像」の作者・細谷而楽という人物の紹介なども。書であり、画であり、工芸品であり、まだまだ私の知らない奈良の素晴らしいものがたくさん見られました。

●【紹介記事】大和のたからもの (奈良を愉しむ) (by【奈良住】読書リスト)

「うましうるわし奈良」の10年

JR東海の「うましうるわし奈良」のキャンペーンが始まってから、2016年で10年。首都圏を中心にテレビCMが放映され、駅では四季折々のポスターを目にした人も多いかと思います。 10年という節目を機に、これまでのポスターから写真とコピーを抜粋し、1冊にまとめました。美しい仏像と風景が、奈良へと誘います。 そして、イラストレーターの田中ひろみさんには仏像の面白さを、文筆家の甲斐みのりさんには奈良をご案内いただきます。たまにはふらりと奈良に行ってみようか─そんな気持ちになる1冊です。(内容紹介より)


JR東海「うましうるわし奈良」10周年を記念して、これまでのポスターやキャッチコピーなどを収録した一冊。奈良の一番美しいところを、一流のプロが切り取った写真が美しいのはもちろん、そこに添えられるキャッチコピーが絶妙です。インパクトのあるものから、心にじわっと染みてくるようなものまで、ページをめくるたびにため息がもれました。

●「日本にしかなく、奈良にしかなく」(飛火野の鹿たち)
●「日の光、月の光、白鳳の光。」(薬師寺・薬師三尊像)
●「人は山に神を想う。山は人に神を結ぶ。」(大神神社・三輪山)
●「見ているのは、史跡ではなく、千三百年の物語。」(平城京・西大寺)

などなど。折に触れて読み返したい一冊です。

●【紹介記事】「うましうるわし奈良」の10年 (by【奈良住】読書リスト)

万葉集と日本人読み継がれる千二百年の歴史

日本最古の歌集『万葉集』は、8世紀末から今日まで、愛されつづけてきた稀有な歌集だ。しかし、漢字だけで書かれた万葉歌は、時代によって異なることばに読み下され、時代ごとの考え方や感じ方を強く反映した解釈がなされてきた。紀貫之、紫式部、藤原定家、仙覚、賀茂真淵、佐佐木信綱らが読んだそれぞれの時代の『万葉集』は、どのようなものだったのか。その読み方に現れる日本人のこころの歴史をたどり、万葉集の魅力に迫る。(内容紹介より)


古代から現代まで、万葉集がどう読まれ、写され、解釈され、伝えられてきたかを時代順に読み解いた一冊。万葉集が現在私たちが知っているような形になるまで、先人たちのさまざまな努力がありました。紀貫之、紫式部、藤原定家、仙覚らが読んだ『万葉集』はどのようなものだったのかを丹念にたどった、読み応えるのある良書です!

「万葉の時代には、天皇と民衆は歌を詠み合うことで心を通わせていた」というイメージが生まれ(決して事実ではありません)、後の時代にも、天皇の政治的な地位が低下するごとに万葉の時代が回顧され、万葉集が注目される、そんなことも繰り返したのだそうです。万葉集をより深く理解できるきっかけになってくれます。

●【紹介記事】万葉集と日本人読み継がれる千二百年の歴史 (角川選書) (by【奈良住】読書リスト)

『大和名所図会』のおもしろさ

昔と今を結ぶ名所旧跡道案内。寛政3年(1791)刊の『大和名所図会』は楽しい挿絵と共に、大和の名所旧跡の歴史や伝説が盛り込まれ、旅心をかきたてる観光案内書であった。本書では奈良の名所旧跡を踏破した著者が、その中から114項目を厳選し、多くの挿絵・写真と共に歴史とロマンの宝庫“大和”の魅力を紹介する。(内容紹介より)


江戸時代の奈良の風景と風俗を知ることができる、1791年発刊の名所案内記「大和名所図会」。その当時の観光案内書のようなもので、江戸時代の奈良の様子を伝聞も織り交ぜて活き活きと描いています。本書は300ページ近いボリュームで、114もの土地を紹介した充実の内容で、読み応えバツグンでした。

廃寺になった内山永久寺などの栄華を知ったり、春日大社の茶屋で休憩する男たちが鹿せんべいを与えていたり。江戸時代に天皇陵がどのような扱いだったのか、飛鳥の石造物がどんな様子だったのかなどなど。いまは見られない風景と、いまも変わらない風景が見られ、かなり楽しめます!

●【紹介記事】『大和名所図会』のおもしろさ (上方文庫別巻シリーズ) (by【奈良住】読書リスト)

跋扈する怨霊―祟りと鎮魂の日本史

長屋王、菅原道真、崇徳院…。非業の死を遂げ、祟りや災いを起こした怨霊は、為政者により丁寧に祀られた。虚実とりまぜて論じられがちな怨霊の創出と鎮魂の実態を実際の史料に基づいて辿り、怨霊を時代の中に位置づける。(内容紹介より)


古代から中世にかけての歴史を理解する上で欠かせない「怨霊」について考察した一冊。時の権力者から排除され、非業の死を遂げた歴史上の人物たちが、後に「怨霊」として認識されていく過程を解き明かした、興味深い内容です。

●藤原四兄弟を疫病で葬ったとされる長屋王
●実兄・桓武天皇を震え上がらせた早良親王
●宮中の落雷から雷神として恐れられた菅原道真
●日本最大の怨霊とさえ呼ばれる崇徳院 など

奈良時代ごろは、恨みを残しながら死に追いやられたものは、その当事者だけに祟るものとして考えられていましたが、平安時代になり、社会的な怪異も引き起こすされるようになりました。平城京や平安京の様子を思い浮かべながら読んでみてください!

●【紹介記事】跋扈する怨霊―祟りと鎮魂の日本史 (歴史文化ライブラリー) (by【奈良住】読書リスト)

奈良まち奇豪列伝

ひと昔まえ、明治・大正の激動期の奈良まちには、眩いばかりの偉大な「変人」、つまり「奇豪」たちが生きていた。人間的には、品性申し分のない偉人もいれば、気難しい人物まで各人各様の個性であるが、「奇豪」と呼ぶべき共通項がある。本書では、奈良まちに住んでいた奇豪たちの中から4人を選び、付録として宇宙菴吉村長慶が著した『清国事情』からごく一部を現代訳で掲載する。(内容紹介より)


幕末から明治大正戦前まで、奈良まちで活躍したユニークな人物4名を取り上げた偉人伝。一般的にはあまり名前を知られていない、風変わりな奇豪たちが登場します。

●まげ・ひげ姿の漢方の名医「石崎勝蔵」(1845~1920)
●呑んだくれの古美術写真師「工藤利三郎」(1848~1929
●自作した飛行機で空を飛んだ「左門米造」(1873~1944)
●伝道70年。最晩年を奈良で司祭した「ヴィリヨン神父」(1843~1932)

私が知っていたのは、写真家・小川晴暘さんが「飛鳥園」を立ち上げる以前、奈良の仏像などを写真に収めていた工藤利三郎さんだけでした。その分野の先駆けともいうべき方で、興福寺・阿修羅像の修復前(手先が破損した状態)の写真や、東大寺大仏殿の1909年の解体修理前の写真など、奈良の貴重な風景を今に伝えてくれた大恩人です。そんな方の評伝が読めるのは嬉しいですね。

私の知らない奈良の姿がいきいきと描かれていて、とても面白かったです。かなり渋い内容ですが、興味のある方はぜひ!

●【紹介記事】奈良まち奇豪列伝 (by【奈良住】読書リスト)

鴎外「奈良五十首」を読む (中公文庫)

大正五年、陸軍軍医総監の職を退いた鴎外は、一年半後、帝室博物館総長に任ぜられ、度々奈良に滞在する。在任中の歌で編まれた「奈良五十首」は、『明星』大正一一年一月号に一挙掲載されたもので、茂吉は「思想的抒情詩」と評し、石川淳はそこに鴎外晩年の「物理的精神的な軌跡」を見ようとした。総体としての五十首に込められた本当の含意とは。(「内容紹介」より)

大正時代の文豪・森鴎外が、正倉院の開閉封などの仕事のため奈良に滞在して詠んだ「奈良五十首」について、その歌の意味や背景について解説した一冊。著者さんが丹念に足跡をたどったことで、大正時代の奈良の様子がリアルに浮かび上がっています。

正倉院を詠んだ「勅封の 笋(たかんな)の皮 切りほどく 剃刀の音の 寒きあかつき」、作業が休みになる雨の日に奈良の故事を訪ねて詠んだ「とこしえに 奈良は汚さんものぞ無き 雨さへ沙に 沁みて消ゆれば」など、雰囲気のある歌も少なくありません。

どなたでも読みやすいという内容ではありませんが、読みがいのある一冊でした。

●【紹介記事】鴎外「奈良五十首」を読む (中公文庫) (by【奈良住】読書リスト)

奈良関連の漫画や絵本、写真集など

天智と天武 -新説・日本書紀- (ビッグコミックス)


小学館「ビッグコミック」連載の『天智と天武~新説・日本書紀~』(※6巻まで読みました)。天智天皇と天武天皇、古代の日本を動かした兄弟の葛藤を活き活きと描いています。展開も早く、骨太な歴史ドラマが展開されています。

登場する蘇我入鹿は、国を私物化した悪徳政治家ではなく、革新的で聡明な男性として。また、乙巳の変で活躍した中臣鎌足は「=豊璋(人質として日本に来た百済の皇子)」として描かれるなど、独特な解釈も。蘇我倉山田石川麻呂、孝徳天皇、額田王、鏡王なども、活き活きと魅力的なのも嬉しいですね。大人でも熱中できるクオリティです!

●【紹介記事】天智と天武 1 -新説・日本書紀- (ビッグコミックス) (by【奈良住】読書リスト)


しかしか

ようこそ、しかの惑星へ――。しかしか写ってないんです。しかに魅せられた「しか写真家」による、しかしかいない写真集。住宅地に、駐車場に、お土産物屋さんの店内に……人間の暮らしに入り込む、しか・鹿・シカ!人工物のなか悠然とたたずむその姿は、圧倒的な違和感と不思議な愛嬌がたっぷり。しかってこんな顔してたっけ?あれ、案外カワイくない?(内容紹介より)


写真家・石井陽子さんが、奈良と宮島に通いつめて撮影した「鹿しか」写っていない写真集。町中にいる鹿たちですが、人間の姿が写っていないため、まさに鹿の惑星のような不思議な雰囲気を感じさせています。アイディアですね!

カメラによって切り取られた鹿たちの姿は、一頭ごとに違います。ひとりでぼっちで歩く鹿、集団で列を作って歩く鹿、喧嘩する鹿、顔を寄せあってひそひそ話をしているような鹿、全力で走る鹿、ジャンプしている鹿。トータル207頭の鹿が登場するとか。見ていて楽しくなる一冊でした。

●【紹介記事】しかしか (by【奈良住】読書リスト)

妹背山婦女庭訓 (橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻 5)

大化の改新をヒントにして作られたファンタジー物語。魔王のようになった蘇我入鹿を、みんなが力をあわせて倒します。悲しい恋物語もあります。絵本で読む古代の歴史ファンタジー歌舞伎シリーズ第5弾。(内容紹介より)


歌舞伎通の作家・橋本治さん、画家・岡田嘉夫さんによる「歌舞伎絵巻」シリーズ第5巻。645年の「大化の改新」前後を舞台としていますが、大きく脚色を加え、色恋沙汰から人情話まで何でもあり。蘇我入鹿が悪の親玉の怪物として描かれ、まるでヒロイックファンタジーのような展開が繰り広げられます。

絵本というにはテキスト量も多めで、読み応えもありますし、お話としても十分面白いですね。美しい絵と合わせて、夢中になって読み進められました。同じシリーズの「義経千本桜」も面白かったですよ!

●【紹介記事】妹背山婦女庭訓 (橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻 5) (by【奈良住】読書リスト)

弘法大師空海の関連の本など

空海の風景(上・下)

平安の巨人空海の思想と生涯、その時代風景を照射して、日本が生んだ最初の人類普遍の天才の実像に迫る。構想十余年、著者積年のテーマに挑む司馬文学の記念碑的大作。昭和五十年度芸術院恩賜賞受賞。(内容紹介より)


司馬遼太郎さんが、謎多き巨人・空海の生涯を描いた上下巻の大作。膨大な資料にあたり、取材も行い、その上で著者の想像も膨らませながら描いていきます。資料が遺っていないことも多いため、通説にあれこれ盛って作品化していますが、だからこそドラマチックで面白い!大河ドラマにしてほしいくらいの濃さでした。

空海の生涯を解説する本は多数ありますが、読み物としてここまで引き込んでいくパワーがあるものは他にありません。かなりのボリュームですが、弘法大師空海に興味を持たれた方は、まずここから入るのもいいかもしれません。

空海はいかにして空海となったか

空海は「われわれ衆生も本来的には仏となんら変わらない」という認識・宇宙観に達していた。そこに至る空海の真像を、出自の問題、仏道への志向と神秘体験、入唐求法と恵果との出会いという前半生から探る。(内容紹介より)


高野山大学・武内孝善さんのご著書。謎に包まれた弘法大師空海の前半生を丹念に検証し、独自の解釈を加えてその秘密を追っています。著書の執筆にあたり、たくさんの空海関連の本を読みましたが、本書は明快でわかりやすく、しかも独自の視点なども加えられていて読み応えたっぷりでした。

予備知識がないとさすがに理解しづらいかもしれませんが、興味のある方はぜひ!

阿・吽 (ビッグコミックススペシャル)

最澄x空海 ふたりの天才の物語が始まる!日本仏教の要である、比叡山延暦寺の開祖である最澄、弘法大師の名で日本人なら誰もが聞いたことがある空海。レオナルド・ダ・ヴィンチにも匹敵するといわれる日本史上、比類ない天才である、最澄と空海がまさに華麗に、繊細に、そして豪快に描かれる人間ドラマです!平安の世、当時のニッポンを変えた!といっても過言でないこのふたりは、その青年期は人も羨むエリートコースを歩んでいたが・・・・・・・・・・・本作『阿・吽』は、『サプリ』『&-アンド-』で女性の心情を美麗な筆致で、細やかに描いてきた著者の新境地です!(内容紹介より)

比叡山を開いた最澄、高野山を開いた空海。天才宗教家たちの若いころの姿を描いた、おかざき真里さんのコミック『阿・吽』。最新の4巻まで読了していますが、これは抜群に面白いです!

同時代に生を受け、お互いを意識し合いながら仏の道を極めた2人の天才宗教家たちの、若き日の苦悩と葛藤が描かれます。死が隣り合わせの時代、誰もが救いを求めていました。登場人物もあっという間に命を落とすなど、僧侶でありながら人々を救えない、自身への歯がゆさや苦悶などもしっかりと伝わってきます。完結するまで楽しみに追っていきます!

●【紹介記事】阿・吽 1 (ビッグコミックススペシャル) (by【奈良住】読書リスト)

【番外】弘法大師空海が歩いた奈良 (奈良を愉しむ)

密教の正統な後継者として、日本に真言密教を伝えた宗教家・弘法大師空海を敬慕する弘法大師信仰は時を超えて語り継がれ、日本人の心に深く根付いています。高野山はもとより、八十八箇所霊場を有する四国などが空海と関係が深い地として知られていますが、奈良もまた仏教と出会い、研鑽と修行を重ねた地として空海と関係が深い場所です。本書では、様々な伝承がのこる空海ゆかりの奈良の地を案内します。

2016年秋に発売になった自著です。ここに挙げた作品たちに劣らない……と言い張るつもりはありませんが、ささやかに宣伝させてください(笑)

真言宗の始祖である「弘法大師空海」は、高野山や京都、四国などが関係の深い土地として知られていますが、奈良もまた研鑽と修行を重ねた地として深い関わりがあります。

710年に藤原京から遷都し、唐の都・長安を模して造られた平城京は、若き日の弘法大師空海が歩いた土地でした。東大寺や大安寺などの巨大な官寺にも出入りしていたことは間違いありません。高野山と京都を往来する途中には大和盆地で休息をとり、溜池を造る相談も受けたりしたでしょう。

本書では、そんな空海と奈良の接点を丹念に追いました。平城京から平安京へ都が遷ったあとの奈良の様子も、おぼろげながら浮かび上がってくると思います。興味をお持ちくださったかたは、ぜひお手にとってみてください!

●【紹介記事】著書『奈良を愉しむ 弘法大師空海が歩いた奈良』が発売されます






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