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【最近読んだ本】『認知症世界の歩き方』認知症の方が実際に見ている世界を学ぶ一冊

※記事内に商品プロモーションを含む場合があります。

「認知症のある方が実際に見ている世界」を、ちょっとファンタジーっぽいスケッチと旅行記の形で、まるで「ご本人の頭の中を覗いているような感覚」で、認知症のことを学べる一冊。わかりやすく不思議の世界を楽しく探検できました。

 

 

私たちと見えている世界が違っている!?

「認知症のある方が実際に見ている世界」を、ちょっとファンタジーっぽいスケッチと旅行記の形で、まるで「ご本人の頭の中を覗いているような感覚」で、認知症のことを学べる一冊。

実際のところ、認知症となった方にはこの世界がどう見え、どう感じ、なぜそういった行動を取っているのかなど、健常者には理解しづらいことだらけです。

本書では認知症を発症している方などのリアルな体験談を交え、独特の世界を想定しながらその世界を垣間見ていくのですが、これがとてもわかりやすい!不思議の世界を楽しく探検できました。

 

ここは、認知症世界。
認知症とともに生きる世界では、だれもがいろいろなハプニングを体験することになります。

・乗るとだんだん記憶をなくす「ミステリーバス」
→自分のしたことを忘れてしまうのは、なぜ?

・だれもがタイムスリップしてしまう住宅街「アルキタイヒルズ」
→あてもなく街を歩き回ってしまうのは、なぜ?

・イケメンも美女も、見た目が関係ない社会「顔無し族の村」
→人の顔がわからなくなるのは、なぜ?

・熱湯、ヌルッ、冷水、ビリリ。入浴するたび変わるお湯「七変化温泉」
→大好きだったお風呂を嫌がるのは、なぜ?

・時計の針が一定のリズムでは刻まれない「トキシラズ宮殿」
→コンロの火を消し忘れてしまうのは、なぜ?

・一本道なのになかなか出口にたどり着かない「服ノ袖トンネル」
→同じ服ばかり着たがるのは、なぜ?

・ヒソヒソ話が全部聞こえて疲れてしまう「カクテルバーDANBO」
人の話を集中して聞けないのは、なぜ? etc…

あなたは認知症世界を旅する旅人。
この物語に登場するのは、架空の主人公でも、知らないだれかでもなく、「少し先の未来のあなた」や「あなたの大切な家族」です。

認知症世界の旅、はじまり、はじまり。

説明文より

 

たとえば、認知症の方がお風呂を嫌がるのはどうしてなのか?
一見したところ「介護への抵抗」とも思われやすいですが、その理由はさまざまだとか。

 

  1. 温度感覚のトラブルで、お湯が極端に熱く感じる
  2. 皮膚感覚のトラブルで、お湯をぬるっと不快に感じる
  3. 空間認識や身体機能の余らブルで、服の着脱が困難
  4. 時間認識や記憶のトラブルで、入浴したばかりだと思っている

 

そんな認知症の方が見ている世界を、本書では「七変化温泉」という不思議な世界を探訪する形で教えてくれます。ここでは入浴するたびに温度や匂い・肌触りなどが変わる不思議な湯が湧き出る、ドッキリ温泉がある世界なのだとか。

一見、まったく意味がわからないことでも、ちゃんと理由があり、その理由を推測し、突き止めながら生活していくことが大切なのでしょう。

さらに、自分のしたことを忘れてしまうという症状は、乗るとだんだん記憶をなくす「ミステリーバス」の世界で、あてもなく街を歩き回ってしまう症状は、だれもがタイムスリップしてしまう住宅街「アルキタイヒルズ」の世界で、など、私たちの見えない世界を教えてくれます。

現実社会では起きるはずのないことであっても、実際に認知症の方はそのファンタジーのような世界に入り込み、それを体験しています。私たちがその世界観を少しでもイメージできれば理解が進むでしょう。



かつて私の祖母が認知症になったとき、夕方になるごとに遠くまで徘徊していたことがありました。普段は脚や腰が痛いといってあまり出歩かなかった人でしたが、この頃だけはびっくりするような遠くで、しかも普段は絶対に用事の無いところまで歩いて行ったりしたのです。

しかし、これは過去の会社やお迎えに行こうとしたりすることがきっかけとなっていることが多いのだとか。無目的に歩き回っているように見えても、本人的にはちゃんと意味があり、おそらくはその理由を途中で忘れているのです。うちのばぁちゃん、あの時はアルキタイヒルズをお散歩中だったんだなと考えると、数十年越しに腑に落ちました。

高齢化社会が到来し、認知症は誰もがかかわる可能性があります。今のうちから少しずつでも学んでおこうと思います。

 

 

また、「実践編」と題して、いろんなシーンを想定しながら対処方法を一緒に探っていく内容の続編も登場しています。こちらも拝読しましたが、とても参考になりました。あわせてぜひ!

 

 

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