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大発見が続く『富雄丸山古墳』(奈良市)第七次調査の現地公開へ行ってきました

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巨大な蛇行剣、特異な盾形銅鏡などが出土したことが大きな話題となった、日本最大の円墳「富雄丸山古墳」。その後も、粘土槨に覆われた木棺の中から、銅鏡や竪櫛、水銀朱などが見つかっています。2024年3月に行われた現地公開を拝見してきました。大発見の現場を生で観られて感動しました!

 

 

大発見が相次ぐ「富雄丸山古墳」とは

奈良市丸山1丁目に位置する『富雄丸山(とみおまるやま)古墳』は、4世紀後半(古墳時代前期後半)に築造された古墳です。2017年に行われた航空レーザーを用いた三次元測量によって、直径109mの日本最大の円墳であることが判明しました。

2022年10月には、墳丘の北東側にある「造出し(つくりだし)」から粘土槨の埋葬施設が見つかり、過去最大となる蛇行剣(※後に全長2.85mと判明)、その下層から今までに例を見ない盾形銅鏡(鼉⿓⽂(だりゅうもん)盾形銅鏡)が出土し、大きな話題となりました(詳しくはこちら

さらにその後、粘土槨に覆われた木棺の中から、3枚の銅鏡、9点の竪櫛、真っ赤な水銀朱などが見つかりました。2024年3月16・17日に行われた現地公開では、その様子を間近で拝見できました。

■関連ページWikipedia – 富雄丸山古墳
奈良市 埋蔵文化財調査センター
【最新動画公開中】富雄丸山古墳まとめ情報 – 奈良市
 

富雄丸山古墳「造出し」部分を発掘調査中

富雄丸山古墳(奈良市)の第七次調査の現地公開。2日間開催された2日目に行ってきました。受付は隣接する「西部生涯スポーツセンター グラウンド」で行われ、この日は午後から雨の予報でしたが、たくさんの人が訪れていました。
▲近くにあった住宅地図。周囲は宅地として開発されており、たくさんの住宅が並びます。近くに駐車スペースなどは一切ありませんので、現地を訪れる際には必ず公共交通機関を利用してください。
現地公開の現場への行列です。富雄丸山古墳を取り囲むようにフェンスが設置されていて、それに沿って数十メートル続いていました。初日の行列はさらにすごかったそうですが、2日目の午後となると思ったよりも空いていて助かりました。
▲当日配布された資料より。今回の大発見があった場所は、墳丘の頂部ではなく、北東側に設けられた「造出し」の部分です。つまり、そこに葬られているのはこの巨大な古墳のメインの被葬者ではなく、その方と近しい誰かであると考えられます。
▲発掘現場は広くないため、20人単位くらいで徐々に進む感じでした。墳丘の中腹辺り、この覆いの中が発掘現場となります!

 

粘土に覆われていた木棺が綺麗に残ってます

▲富雄丸山古墳(第七次調査)の発掘現場です。
木棺はコウヤマキを加工した割竹形木棺で、その周囲を保護するための粘土(粘土槨)で覆われていたため、木棺が腐食することなく綺麗に残されています。盗掘も受けていないため、ほぼ完全な状態で見つかりました。
▲別角度から。
木棺の内部は仕切り板が立てられ3分割されています。被葬者の足元にあたる側からは3枚の青銅鏡が見つかりました。その向こう側には木棺を覆っていた粘土がリアルに感じられます。
木棺の中央近くには竪櫛(たてぐし)9点が見つかっています。
アップで見ると、木棺や仕切り板などがほぼ完全な状態で出土したことがわかります。4世紀に埋葬されたとは思えないほどですね!
▲そして、真っ赤な水銀朱(すいぎんしゅ)もありました。こちらは被葬者の頭側で、人骨に由来すると考えられるリンなども多く検出されているそうです。

当時は被葬者が男性でも女性でも竪櫛を副葬したそうです。しかし、男性の場合に多い矢じりや甲冑などの武器類が木棺内にないことから、被葬者は女性だったのではないかとの説が出ているとか。
▲配布された資料より。
埋葬施設内での位置関係がわかります。粘土槨に覆われた木棺、その上に巨大な蛇行剣、そして特異な盾形銅鏡が埋葬されていました。
▲現場全体の様子。たくさんの来場者があったのでゆっくり拝見する……とはいきませんでしたが、いくらか立ち止まる時間もあり、思っていたよりもじっくり観察できました。
▲別角度から。この日は久々に現地公開へお邪魔しましたが、リアルな現場ならではの生々しさがあっていいですね!「奈良に暮らしていて良かった!」と思える大きなポイントです 笑

 

円墳の頂部の埋葬施設はすでに調査済み

▲さらに、その先の円墳の頂上部分へも行けました。
見晴らしの良い丘にしか見えませんが、3段築成の墳丘であり、この円墳の主たる被葬者が眠っていた場所です。

こちらは明治時代に盗掘されており、現在はここから出土したと伝わる石製品や三角縁神獣鏡などが残されるのみ。造出し部分からあれだけのものが見つかったのですから、ここも未盗掘だったらどれだけの副葬品があったことか。本当に残念です。
▲墳丘の頂部を発掘した際の写真が展示してありました。
こちらも埋葬施設は粘土槨で、その内部には割竹形木棺があったと考えられるそうです。
▲円墳の頂上から、造出し部分を見たところ。3段になっている円墳の1~2段目に造られていますから、だいぶ低い位置に感じられます。

 

蛇行剣の大きさが伝わる展示ブースも

▲また、受付近くのテントでは、先に見つかった蛇行剣と盾形銅鏡のサイズ感などがわかる資料の展示も行われていました。本当に大きいです!
▲その隣では、NHKさんの「奈良のええとこVR」のブースが。こちらではヘッドセットを装着して、発掘現場のVR映像が見られたのですが、これが驚くほどリアル!発見があった現場の興奮が伝わってきて、まさにその場に居合わせたかのようでした。機会があったらぜひ体験してみてください!
▲なお、先に書いたように、富雄丸山古墳の周辺には駐車場などはありません(有料Pもほぼ見つかりません)。かといって、混雑するバスに乗るのも気が進まない……と思った私たちは、大和郡山市側へ車を停めてそこから歩いて現地へ行くことにしました。徒歩30分弱の距離です。のどかな道をトレッキングのつもりで歩けますよ!

 

「蛇行剣」が橿考研付属博物館で初公開に!

富雄丸山古墳から出土した巨大な鉄剣「蛇行剣」は、2024年春、橿原考古学研究所付属博物館(橿原市)で初公開されます。こちらも必見です!

 

特別公開「富雄丸山古墳の蛇行剣-クリーニング作業が明らかにした巨大鉄剣のすがた-」
期間2024年3月30日(土)~4月7日(日)
※4/1(月)は休み
会場奈良県立橿原考古学研究所附属博物館(橿原市)特別展示室
※ホームページはこちら
 

 

富雄丸山古墳

所在地奈良県奈良市丸山1丁目
形状円墳
規模直径109m
築造時期4世紀後半
関連ページWikipedia – 富雄丸山古墳
奈良市 埋蔵文化財調査センター
【最新動画公開中】富雄丸山古墳まとめ情報 – 奈良市
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