パワフルなアート空間!『生駒宝山寺参道エリア』@はならぁと2015
昨年に引き続き『奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015』の会場となった「生駒宝山寺参道エリア」。石段が続く参道にユニークな現代アートの作品などが展示され、独特の雰囲気を醸し出していました。力強いパラリンアートあり、30年間荷物とともに眠っていた建物での展示ありと、ワクワクしながら拝見しました!(※同会場での展示は終了しています)
『奈良・町家の芸術祭 はならぁと』とは
歴史的な町家・町並みを活用してアート作品を展示する『奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015』(Twitter・Facebook)。
ボランティアが中心の実行委員会が、県の補助や企業の協賛を受けて運営しており、2014年は約4.5万人が足を運ぶイベントに成長しました。これをきっかけとして、空き町家約30件が店舗や住居として再活用されるなど、街の活性化にも大きな役割を果たしています。
●はならぁと ぷらす
会場: 五條新町(紹介記事)、生駒宝山寺参道
会期: 2015年10月10日(土)~ 10月18日(日)
●はならぁと こあ
会場: 宇陀松山、八木札の辻、今井町
会期: 2015年10月24日(土)~ 11月3日(火祝)
生駒宝山寺は「はならぁと ぷらす」会場
この日は、「はならぁと ぷらす」(※各地域が主導して開催するサテライトエリア)となっている、生駒市の『生駒宝山寺』エリアを拝見してきました(※記事執筆時点ではもう終了しています)。
このエリアは、昨年もはならぁとの会場となっていて、建物も展示内容もとてもおもしろく、今年もぜひ来ようと思っていました。
宝山寺下の無料駐車場から。「観光生駒」と描かれたアーチが目印です。近鉄生駒ケーブルで登ることもできます
「ウルトラ・ダイアリー」@門前おかげ楼
はならぁとぷらす「生駒宝山寺参道」エリアのメイン会場となったのは、昨年は「旧たき万旅館」と呼ばれていた建物です。廃業した旅館でしたが、宿泊所兼レンタルスペースの『門前おかげ楼』(Facebook)として生まれ変わっていました。週末ということもあって、結構な賑わいでした
玄関からラウンジ部分を見たところ。ワークショップなども開催されていました。ここのテーマは「ULTRA DIARY(ウルトラ・ダイアリー)」。知的障害を持つ方たちの作品が展示されています。こうした芸術は「パラリンアート」などと呼ばれ、近年とくに注目を集めています。「アートセンターHANA | たんぽぽの家」さんが主体となって展示を行っていました
まずは、伊藤樹里さんの「ニュース」。ニュース口調で日々のあれこれを書き記しています。鉛筆は短さの限界まで使われ、削りかすも決して捨てないのだとか
「ニュース」の文章の一部を巨大な垂れ幕にして吊るしたもの(2階の吹き抜けから見たところ)。最初見たときは無駄な誤字や繰り返しが多く、何のことだか理解できなかったのですが、これはパソコンで入力したものなのだとか
高気圧について「気圧にとって明日は発達する気圧となって停滞して高気圧となってまた安定した晴れの天気となり k@お天気チャンネルとなって k@高気圧と呼ばれています。高気圧トなり気象庁で今後の天気予報にご注意下さい高気圧と停滞して発達して網暑となりました。(以下略)」など。これすごいんです!筒井康隆さんの作品的なパワーを感じました
平段には中村真由美さんの、奥の壁面には荒井隆さんの「日記」が
荒井さんの「日記」は、同じモチーフが何日も連続で出てきたりしますし、それが少しずつ姿を変えているのが分かります
中村さんの「日記」。真四角のシールのような形に描かれた絵、プリミティブな力を感じます
2階にも展示が続きます。昨年はこのスペースには立ち入れませんでしたが、ものすごくきれいになっていて驚きました!
壁沿いにずらりと並んでいたのが、中川雅仁さんの「脳内旅行」。小さな紙にびっしりと時刻表などを書き込み、空想の中での旅行を楽しんでいるのだとか。バスや電車、飛行機まで使って、海外へも行ってしまいます。楽しそう!
松田陽子さんの「手紙」という作品。自分が好んだ相手に手紙を添えて物を贈るのが好きなのだとか。本人の映像と贈った手紙などが展示されていて、ちょっとしたカオスでした
この建物では、障害者さんの作品だけではありません。「ヒロ忠之」さんのFRPなどで作成した「芽吹く兆し」という連作のひとつも展示してありました。不思議な雲型でタイトルは「飛(休憩中)雲」。参道エリアを少しずつ移動しながらこの日この場所にたどり着いたのだとか。以前いた場所にはこの小型版が設置してありました!
和室に展示された「黒瀬正剛 」さんの作品群。小さな点やしみ、文字とも形とも判別のつかないものが集まって、形容しづらいものを形作っていました
石段の参道沿いにいろんなアートが
参道の石段の途中にも、何箇所か作品が見られました。これは旧正木仏具店前に描かれた、女性ユニット「yurimari」さんの「パストプレゼント」という作品。シェードの部分までボロボロだったので、プラカップに彩色したものをたくさん繋げたのだとか。この通り自体がかなり不思議な場所ですから、こうした絵も意外と違和感なく溶け込んでいたのが面白かったです
小さな旧中山判断所で展示されていた「上条信浩 」さんの作品。タイトルは「キノムクママニ」。生命体のような立体感で、ぬめり感まで伝わってきそうな陶の立体作品がメインです。四柱推命などをやっていた小さな建物で、こんな不思議な造形物がある。その違和感だけで楽しくなります
建物も展示もユニーク @旧SANKI喫茶店
参道沿いの「旧SANKI喫茶店」会場。建物は3階建て、1階部分が以前は喫茶店として使用していたスペースです。坂にそって建てられているため、建物脇から地下室へも入れるようになっていて、そこも展示スペースになっていました
「清水啓一」さんの立体作品。タイトルは「endless 2015」。生命力のある樹を表現したものでしょうか。営業を終えて荒れ気味の喫茶店の中にあると、違和感がすごいですね
「浦野睦子 」さんの作品「祷りの灯」。生駒市生まれのアーテイストさんで、きっと幼い頃から見慣れているであろう、宝山寺参道の姿を屏風絵にしまています。屏風仕立てにするだけでまた違った表情に見えるのがいいですね
旧SANKI喫茶店の地下室部分で展示されていた「北川幸司」さんの「Lost」という作品。無為な線を重ねて作品にしている方で、この地下室の雰囲気にもあってます
面白いのは、地下室部分にお風呂や洗面所などが設置されていたこと。この建物は地上3階・地下1階で、薄暗い地下に水回りがあったようです。こんな生々しくも力強い展示スペースと巡り会える可能性があるのも、はならぁとの面白さですね!
まるで昭和のタイムカプセル @旧和久邸
そして今回の展示会場でもっとも衝撃的だったのが、蔦に包まれた「旧和久邸」。昭和のハイカラな建物ですが、持ち主の荷物などを中に残したまま、約30年間もひっそりと空き家になっていたのだとか!
旧和久邸の玄関から2階(立入禁止)を見上げたところ。友達の家でこんな作りをよく見た気がします
1階の二部屋が展示スペースになっています。奥のリビングルームには、グランドピアノや旧型のテレビ、応接セット、お酒が入った棚などがそのまま残っていて、そこに女性の顔をモチーフにした不思議なオブジェが。どこか悪夢的ですね
古めかしいソファーとクッション、その向こうから視線を感じます。これは「釜本幸治」さんの立体作品「浮標」です
若い女性の私室だったであろう一室を、「石原三加」さんが作品としていました。この角度からはよく見えませんが、絶頂期の西城秀樹さんのパネルなどが何枚も飾ってあり、タイムカプセルのようです。持ち主を失った物たちが妙に生々しいですね。びっくりしました!
不思議な宝山寺エリア、町歩きが楽しい!
こうした展示はとても楽しいのですが、宝山寺参道そのものもとても不思議で興味深いのです。
奈良と大坂を隔てる生駒山の、商売繁盛のご利益のある『宝山寺(ほうざんじ)』の門前で、ずっと石段が続く不思議な雰囲気の通りです。今も参拝客の姿が絶えません。
平地がほとんどなく、ずっと石段が続きます。小さな宗教団体の建物なども数多く点在していて、聖と俗が入り交ざったような不思議なエリアとなっています。写真を撮っても楽しいですし、イベント時期以外でもぜひ散策してみてください。
■奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015
HP: http://hanarart.jp/
Twitter: @HANARART
Facebook: https://www.facebook.com/hanarart
・はならぁと ぷらす
会場: 五條新町、生駒宝山寺参道
会期: 2015年10月10日(土)~ 10月18日(日)
・はならぁと こあ
会場: 宇陀松山、八木札の辻、今井町
会期: 2015年10月24日(土)~ 11月3日(火祝)
■生駒宝山寺参道│奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015
詳細: http://hanarart.jp/2015/hozanji
駐車場: 宝山寺第二駐車場(無料)
アクセス: 近鉄ケーブル宝山寺駅から徒歩約10分
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