『奈良・町家の芸術祭 はならぁと2021』桜井・戒重エリア
奈良県内各地の町家などにアート作品を展示する『奈良・町家の芸術祭 はならぁと2021』が始まっています。「桜井・戒重エリア」は、旧医院・元寿司屋・理髪店裏平家という3会場で開催されています。不思議なアート作品とかつての住人の気配が入り混じったような、とてもはならぁとらしい内容で楽しかったです!
地球に優しいエコロジカルな芸術祭
歴史的な町家・町並みを活用してアート作品を展示するイベント『奈良・町家の芸術祭 はならぁと』(Twitter・Instagram・Facebook)。11年目を迎える2021年も無事に開幕しまいた。
今年も昨年に引き続き「地球に優しいエコロジカルな芸術祭」をテーマに、「宇陀松山」「桜井・戒重」「橿原・八木」「天理」の4つのエリアで開催されます。
「はならぁと」とは、奈良県各地にのこる古い町家などを活用して開催されます。対象となるのは、観光化されたキレイな古民家ばかりではありません。誰も住まなくなってすでに朽ちかけたような建物も多く扱われます。
こうした建物をアーティストやボランティアの皆さんが片付け、イベント会場とすることで新たな価値が見いだされ、カフェや住居としてあらためて利活用されることに繋がっています。
私たちは時代を感じるような古びた建物を巡るのが大好きなので、はならぁとの期間中に、いろんな建物に入らせてもらえるのが楽しくて仕方ありません。
今年も、初日から「桜井・戒重エリア」(11/3まで。火水木は休み)を拝見してきましたので、簡単にレポートしておきます。
光を遮断された箱へ入る体験
はならぁと「桜井・戒重 エリア」の会場となるのは、竹内街道・横大路(旧伊勢街道)沿いに位置する3箇所。こちらは「旧医院」と呼ばれる建物です。いかにも「昔の病院」という佇まいですね。
入口部分に展示されているのが、この地域での開催を主導した「かいじゅう未来計画」代表の岡本奈香子さんの作品「感覚遮断によるニューロダイブ」です。箱状の物体と、その内部を映すモニターがあり、来場者は、箱の中に入って体感する仕組みです。
箱の中から見たところ。この内部では光や音など外部刺激が遮断されます。こうした状況で現れる、幾何学模様などのイメージが現れる「感覚遮断実験」を体験できるもの。宗教的体験やオカルト的な体験との関連性もあると考えらています。
内部の様子はモニターで観察できます。これはスマホのライトを付けているので中の様子がわかりますが、それを消すと本当に真っ暗で、自分の手も見えないほどです。他ではなかなか出会えない真の暗闇を体感できました!
朽ちかけた「元寿司屋」では
次の「元寿司屋」会場は、現役の床屋さんが2軒並んだ建物です。写真手前がは現役の理髪店ですが、こちらがミニチュア模型みたいでほんと素敵です。店前で3色のサインポールがくるくると回っていますが、ちょうどいい感じの振動ノイズがずっと聞こえていて、脳がトリップしそうでした(笑)
元お寿司屋さんの内部は、天井部分が檜皮葺の二重になっていたり、小さいながらもしっかりとした作りです。数年前まで営業してたそうで、その雰囲気が残ってます。
1階の壁面などには、フィンランドのアーティスト、ヤーナ・マイヤラさん、ヴィッレ・リンナさんらの作品が展示されています。
作品はこの建物から発想を得たものなのか、とても馴染んでいるような、逆に強烈なギャップがあるような。非日常的な違和感が楽しいんですよね。
まだ綺麗に見えた建物ですが、その裏手では天井も落ちていて、そこに巨木がどーんと伸びています!アーティストさんがこの様子を鑑賞する窓をつけて、作品化しました。古びた電球やスイッチまですべて含めての作品ですね。
窓から見上げると、破れた屋根の向こうに青空が広がっていました。家ってこんな朽ち方をするんですね。
2階の会場へ上がるために、細くて急な階段を上がります。昔の友だちの家の階段を思い出しますね。2階の八畳間くらいの和室は宴会場として使っていたのでしょう。狭いのにトイレも増設されていました(この右手の白い壁のところ)。
古びた畳の上に並ぶ、何らかの機械たち。「真鍮、ホース、アンプ、変圧器等」という作品のようです。一昔前のメカっぽいのも、配線がごちゃっとしているのも日本的な感じがして、とても好きです。室内を動作音が巡っていく感じですので、ぜひ耳を澄ましてみてください。
人の気配を感じる「理髪店裏平屋」
そして今回、お隣の床屋さんとの間の路地の奥に、もう一つの会場があります。右が床屋さんで、左が元寿司屋さん。一方は人の暮らしの痕跡が消えていて、一方は生活があふれ出ていて。こんな路地に勝手に入ったら普通は怒られますからね、こんな場所を見られただけで満足です!
路地の奥の「理髪店裏平屋」は、かつてはどこにでもあった普通のお宅です。ここが空き家になって、少しずつ朽ちていって。そんな建物に入った途端に、こんな不気味系なアート作品が展示されて。
※会場にも注意書きがありましたが、やや刺激強めの作品ですのでご注意ください。
これらの作品は、橿原市出身の林圭介さんのもの。なかなかの刺激物です。廃墟化した昭和的な家屋と、洋装の不気味な肖像画。すごいですね。
奥の部屋には、池田昇太郎さんのインスタレーション作品が。床を抜いて地面が見えた一角に、工事の作業中のような映像が投影されます。解体されていくような、再生されていくような。じっと見入ってしまいました。
はならぁとの会場となる民家では、以前の住人さんの痕跡が残っていることも多く、これこそが醍醐味ともいえます。
この部屋の壁には元プロ野球・吉岡雄二さんのコーナーや、タバコやバイク、Jリーグチームのポスターなどが残っていたり。人が暮らした気配が濃密に感じられました。
展示された作品の足元にも、おそらくこの家にあったであろう百科事典が使われていました。アート作品そのものだけではなく、かつての住人の気配も作品の一部に取り込まれているのが面白いところです。
路地を奥から見たところ。古くから続く町家や昭和の住宅・店舗など、奈良という土地で営まれていた普通の生活が垣間見られて、本当に楽しいです。そこにアート展示という要素も加わって、驚いたり苦笑いしたりできます。ぜひ足を運んでみてください!
■奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2021
HP: http://hanarart.jp/
Twitter: @HANARART
Instagram: @hanarart.artfestival
Facebook: @hanarart
●【はならぁと さてらいと】宇陀松山エリア
・会期:2021年10月22日(金曜日)~24日(日曜日)
・開場時間:10:00~17:00
※地域連携企画「宇陀松山華小路2021」(10月23日・24日開催)
●【はならぁと さてらいと】桜井・戒重エリア
・会期:2021年10月22日(金)~25日(月)、10月29日(金)~11月1日(月)、11月3日(水・祝)
・開場時間:11:00~17:00
●【はならぁと さてらいと】橿原・八木エリア
・会期:2021年10月29日(金)~10月31日(月)
・開場時間:10:00~17:00
●【はならぁと こあ】天理エリア
・会期:2022年2月11日(金・祝)~14日(月)、2月18日(金)~21日(月)、23日(火・祝)、2月25日(金)~28日(月)
・開場時間:10:00~17:00
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