
奈良・町家の芸術祭『HANARART 2013』@宇陀松山エリア
奈良県内各地の町家・町並みにアート作品を展示するイベント『奈良・町家の芸術祭 HANARART(はならぁと)2013』。先日の今井町エリアに続いて『宇陀松山エリア』(~10月27日まで)を拝見してきました。いつもは中に入れない趣ある町家が会場になっているため、建築物好きな私はそれだけで楽しくて仕方ありません!アートと素敵な共存をしていました。
奈良県内8箇所の町家・町並みで順番に開催中
歴史的な町家・町並みを活用してアート作品を展示する『奈良・町家の芸術祭 HANARART(はならぁと)2013』。2013年で3年目を迎えます。
会期は「2013年9月7日~11月26日」ですが、時期ごとに会場が移り、展示作品も一新されるため、どのタイミングで拝見しても、何度も足を運んでも、新鮮な楽しさがあるのがいいですね。
●五條新町(9月7日~9月16日) ●御所市名柄(9月14日~9月16日) ●八木札の辻(9月20日~9月29日) ●今井町(9月27日~10月6日) ●郡山城下町(10月12日~10月20日) ●宇陀松山(10月20日~10月27日) ●奈良きたまち(11月1日~11月10日) ●桜井本町(11月16日~11月26日)
歴史ある『宇陀松山エリア』の町並みでアート!
この日は「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された、宇陀市の『宇陀松山エリア』で開催されていたものを拝見してきました。約200軒の伝統的な建物が遺されている素敵な町並みですが、普段は建物の内部に入れないことも多いため、はならぁと期間中はチャンスそういった面でもチャンスなのです!
2013年のHANARARTでは、展示は3つのタイプに分かれています。
●作家が町家に滞在し、地域と深く関わりあいながら作品を制作・発表していく、長期滞在型アート展「えあ」
●多ジャンルにわたって作家が自由に開催する、自主企画現代アート展「もあ」
●現代アートに収まらない表現と地域の活動を紹介する「玉手箱プロジェクト」
今回は時間の制約があり、すべての会場を見て回ることは出来ませんでしたが、どれも渋い建築物とマッチしていたり、逆に強烈な違和感を発揮していたりして、どの会場のどの作品も楽しく拝見できました。
「もあ」作品 西山タカスケさん @新宅家住宅
昭和初期に建てられた町家。金星鎌の看板と、小さなショーウィンドウを持った店舗兼住宅。もとは荒物屋さんで、Γイ(かねい)という自社ブランドの鎌等を制作していたそうです。前面ガラス戸で、入ってすぐのミセノマの空間が、昔懐かしいお店の雰囲気を残しています。
会場となった「新宅家住宅」は、昭和初期に建てられた町家建築です。もとは荒物屋さんで、「金星鎌」の看板があるように、オリジナルの刃物を制作していたとか。以前から気になっていた建物ですが、中に入られる機会は滅多にありません!
アーティスト・西山タカスケさんの作品。板にインクを敷いて、そこに模様を描いて紙に写しとっていく、というイメージでしょうか
頭上には似顔絵的な作品も吊るされていました。この天井から棚も必見!何十年前の新聞折込チラシが貼ってあったりして、ちょっとしたタイムスリップでした!
棚に並んでいたクラシックなネズミ捕り。880円の値札がついたままになっていますが、おそらく売り物ではありません(笑)
タイミングが良かったのか、こちらで版画の「モノタイプ」という技法を使ったシンプルな作品作り体験もさせていただけました!インクの表面にコテなどで模様を描き、紙を乗せて写しとっていくもので、どんな作品になるのか分からないまま作業を進めていきます
向かって右手が私の、左手がウチの奥さんの作品です。何も知らずにやった処女作にしてはかっこいいですよね!貴重な体験をありがとうございました!
「もあ」作品 玉野由理+堀浩子さん @旧森田家住宅
マップで「とりおと」となっているスペース。はならぁと期間中もレンタル自転車の貸出場などに活用されています
もとの建物がどうなっていたのだろうかと不思議になるほど、内部は広々とした大空間が広がっています。土間と畳の間があったと思うんですが、その痕跡も判別できないほど。和の大空間という、ちょっと不思議な雰囲気でした
高い天井から大きな布に描いた作品を吊るしてあります。下にあるのは古い竈(かまど)。これだけ残してあるのも素敵なアクセントですね
展示されている作品は、玉野由理+堀浩子さんというお二人のもの。奈良出身で、現在はそれぞれ奈良とフランスを活動拠点とされているとか。薄暗い日本家屋の雰囲気に見事にはまっていました!
ダリアの花々 @まちなみギャラリー石景庵
コミュニティー兼展示スペースの「まちなみギャラリー石景庵」。1階が飲食スペースに、2階が展示スペースになっています。2階では10月27日(日)に開催される『第9回 菩薩と歩む夢行道』(紹介記事)の写真などが展示してありました
その裏庭部分には大きな「ダリアインフィオラータ」という作品が!新宅家住宅で作品を発表なさっていた西山タカスケさんが手がけたそうです。見事です!
ダリアをアップで。宇陀市ではダリア栽培が盛んですが、球根の状態で出荷するため、花の部分は以前まで不要物扱いされていたのだとか。それをこうしたアート作品に仕上げられるのですから素晴らしいですね
この前日まで、宇陀松山で『宇陀松山華小路』という路地にダリアの花を敷き詰めるイベントを開催していました。その花は好きに持ち帰っていいということになっていたので、各ご家庭の玄関先にこんな小さなダリアの一角が登場していました
「もあ」作品 たかはしなつきさんなど @旧森田家住宅
江戸時代末期の町家「旧森田家住宅」。薬や雑貨の商家だった建物が『催空間 源』という地域コミュニティの核施設として生まれ変わりました。外からも見える雨戸に薬の看板が使ってある、とても宇陀松山らしい建物です。これまでは地元の方でも中に入れる機会が少なかったそうですから、嬉しい限りです!
入ってすぐ。この会場では、牛の写真と間伐材を使った不思議な作品が展示され、薬草で染められた布製品などの販売も行われていました
木下伊織さんの「Jamais-vu」という作品たち。白黒フィルムで撮影した牛です。アップの画像が無いので伝わりづらいですが、これが迫力とインパクトがあって面白いんです!お尻側のアップとか観ていて飽きさせません
奥の座敷には、たかはしなつきさんの作品が展示されていました。「室生深野の間伐材と樹齢600年といわれているカヤを使い自然のもつ神秘的な魅力を表現します。」とのこと。木の素材感と古民家、素敵に融合していますね
たかはしさんの作品は、室生の森の間伐材に、麻布や漆を使って表情をつけています。ある意味では古典的な仏像彫刻の質感に近いものも感じられて、とても素敵でした。トーテンポールのようなプリミティブな表情がありますから、ぜひ会場でじっくりとご覧ください
薬草などで染められた布製品たちが販売されていました。古くから薬狩りの地として知られたエリアですから、らしい作品ですね
「もあ」作品 やまなみ工房さん @千軒舎
宇陀松山の一番南側にある「千軒舎」会場。道の駅「宇陀路大宇陀」の駐車場を利用すると、ここが最初の会場になります。こちらでは滋賀県甲賀市にある「やまなみ工房」さんの作品を展示しています。障がい者の方たちによる力強いアート作品は、ものすごいパワーでした!
この人すごい!先端をカットしていくのでしょうか、ミカンの粒々のようなものが生えてていてビックリします。ここは建物も素敵で、後ろの欄間の幾何学的なかっこ良さにはいつも惚れ惚れしてしまいます。建具なども凝ったものが多いのでお見逃しなく!
床の間には仏さま!頭が小さめの方たちは、どことなく神々しさすら感じますね
裏手の蔵にも作品が展示されています。建築も素敵ですからぜひご覧ください!
「もあ」作品 はやしろみさんなど @伊那佐郵人
築80年の旧特定郵便局舎を使用した「旧伊那佐郵便局」会場。現在はちょっと変わったレストラン『伊那佐郵人』さん(紹介記事)として営業なさってます。宇陀松山の中でもここだけ位置が離れていますので(4kmほど)、歩いて移動するのはしんどいのでお気をつけください
店内には地元在住のアーティスト「はやし ろみ」さんの可愛らしい水彩作品が展示してあります。宇陀に縁のある花々(彼岸花・かざぐるま・桜など)をモチーフにしています。個人的にこのヒガンバナの作品が一番好きでした!他の会場でどっしりとした印象の作品を観てきただけに、ちょっとホッとする感がありました
小冊子と期間限定の紅茶とコースターのセットなどもありました
1階と2階の座敷部分では、こんな不思議な展示も。これは帖佐陽師+揚野実和さんのお二人のユニットによる「トウメイのみつけかた」という作品なのだとか
糸が通してあって、そこに写真がぶら下げてあります。[1]1階の廊下に貼ってある写真から好きなものを選ぶ [2]吊るしてある写真から好きなものを選び、最初の写真と取り替える [3]取り替えた写真は持ち帰ってOK という流れです。旧伊那佐郵便局の古い写真などもあり、ちょっと不思議で楽しい企画でした!
■奈良・町家の芸術祭 HANARART 2013
HP: http://hanarart.main.jp/
期間: 2013年9月7日 ~ 11月26日
会場: 時期ごとに会場が移っていきます
●五條新町(9月7日~9月16日)
●御所市名柄(9月14日~9月16日)
●八木札の辻(9月20日~9月29日)
●今井町(9月27日~10月6日)
●郡山城下町(10月12日~10月20日)
●宇陀松山(10月20日~10月27日)
●奈良きたまち(11月1日~11月10日)
●桜井本町(11月16日~11月26日)
Twitter: @HANARART
Facebook: https://www.facebook.com/hanarart
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