
奈良・町家の芸術祭『HANARART(はならぁと)2013』開催中
3年目を迎えた、町家・町並みにアート作品を展示するイベント『奈良・町家の芸術祭 HANARART(はならぁと)2013』(9月7日~11月26日)。県内8箇所の会場で順番に開催になっていますが、橿原市の「今井町エリア」を観て来ました。歴史ある町家×現代アート。この違和感が面白くて、想像以上に楽しかったです!
奈良県内8箇所の町家・町並みで開催されます
瀬戸内海の島々で開催される「瀬戸内国際芸術祭」や、新潟県の里山で行われる「大地の芸術祭の里」など、各地で景観を活かしたアート系イベントが盛んになっています。
奈良県でも、歴史的な町家・町並みを活用してアート作品を展示する『奈良・町家の芸術祭 HANARART(はならぁと)2013』が開催されています!
HANARARTのイベントは2011年からスタートしており、今年で3年目。歴史ある美しい町並みも、空き家の増加と老朽化が進みコミュニティが崩壊しつつあります。この歴史的な町に誇りを持ち、住民が主体となって多くの人が集う魅力的な町とすることを目標にして開催されています。
会期は「2013年9月7日~11月26日」ですが、時期ごとに会場が移り、展示作品も一新されるため、どのタイミングで拝見しても、何度も足を運んでも、新鮮な楽しさがあるのがいいですね。
●五條新町(9月7日~9月16日) ●御所市名柄(9月14日~9月16日) ●八木札の辻(9月20日~9月29日) ●今井町(9月27日~10月6日) ●郡山城下町(10月12日~10月20日) ●宇陀松山(10月20日~10月27日) ●奈良きたまち(11月1日~11月10日) ●桜井本町(11月16日~11月26日)
江戸時代の町並みが残る「今井町エリア」
今回、私たちは橿原市の「今井町エリア」(9月27日~10月6日)の展示を拝見してきました。
今井町(Wikipedia)には戦国時代からの町並みが残り、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。普通に歩くだけで十分に面白い通りですが、そこにアート作品が入り込むと、また不思議な違和感が発生するんでしょう!
橿原市今井町のシンボル的な建物である、今井まちなみ交流センター「華甍(はないらか)」。この裏手にコインパーキングがありますので(1日最大500円)、お車の方はここからスタートするといいでしょう。今井町のパンフレットなども手に入ります
今井町の街並み。江戸時代に商業都市として発展した寺内町で、600m×310mという小さな町ながら、かつては「大和の金は今井に七分」と言われたほど繁栄を極めました。今でも十分にその雰囲気が感じられます
「えあ」作品 河合晋平さん @旧米谷家
2013年のHANARARTでは、展示は3つのタイプに分かれています。
●作家が町家に滞在し、地域と深く関わりあいながら作品を制作・発表していく、長期滞在型アート展「えあ」
●多ジャンルにわたって作家が自由に開催する、自主企画現代アート展「もあ」
●現代アートに収まらない表現と地域の活動を紹介する「玉手箱プロジェクト」
今井町エリアの「えあ」展示は、重要文化財の建築物「旧米谷家」を舞台にした、現代アート作家・河合晋平さんの作品です。
会場にあった作品展示のコンセプトを掲載しておくと、「18世紀中頃に建てられたといわれる旧米谷家の美しい趣きのある内部空間で、ほんの10年くらい前に敷かれた歴史的な価値とは無縁の畳が29枚あります。重要文化財に指定された空間の中で過ごし続ける畳達の想いを胸に、河合が生み出す絵の具の存在物、ポリプレプが旧米谷家に現れる!」とのこと。
写真を観たら分かりますが、ものすごい違和感です!この現代アートが理解できるかどうかは別にして、見た目が面白いこと、これだけで十分ですね(笑)
今井町にある重要文化財「旧米谷家住宅」。18世紀中頃の建物で、代々金物商・肥料商を営んできた家系でした。広い土間をもつ堂々たる商家の建築です。屋根に煙だしがついている建物も、今井町では何軒も観られます
HANARART会場では、こうしたのぼりがありますので、これを目印にしましょう。まず公式マップを手に入れておくと歩きやすいですね
畳の上にタイル風の何かが敷き詰められています!遠目に見ると、昭和の床タイルみたいですね
アップにすると、不思議なドットが連続していることが分かります。スタッフの方にお聞きしたところによると、絵の具を垂らして2枚の透明の板で挟み込んでいるようです。印刷などではなく、一枚として同じものはないということですね。畳が透けて見えるのも面白いです
別アングルから。この板の間部分は上がらせていただけます。奥の間にある畳の上にもすべて敷き詰めてありますから、大した迫力です!
中庭にある蔵の間。ここの畳には青い絵の具が。この違和感、すごいですね(笑)
自主企画現代アート展「もあ」は6箇所で開催
作家さんたとちが自由に開催する、自主企画現代アート展「もあ」は、今井町エリアの計6箇所で開催されていました。時間の関係もあってすべては拝見できませんでしたが、簡単にご紹介していきます。
「もあ」作品 小松原智史さん @嘉雲亭
趣ある町家に入ると、いきなりこんな雰囲気です!展示されているのは小松原智史さんの作品です。大きなキャンバスや衝立など、色んなタイプの作品が観られました
会場となった『町家民宿 嘉雲亭』さんは、今井町にある唯一の宿泊施設。普段は箱階段で2階にも上がれます。いつか宿泊してみたいですね!
作品のアップ。緻密に書き込まれています。不思議な魅力がありますね
こんな立体作品も。落ち着いた町家の雰囲気とのギャップが楽しいですね!
「もあ」作品たち @今井まちや館
復元された施設「今井まちや館」会場には、複数のアーティストさんの作品が展示されていました。入ってすぐの板の間には、こんな風変わりな作品がズラリ!
こちらは沖晋吾さんという方の作品で、盛り塩の上に顔が乗せられています。ジブリ映画のこだまみたいですね!インパクトは抜群。老若男女、みんなが歓声をあげていました!
こんな落ち着いた町家空間の中に、ゆったりとアート作品が展示されています
こちらは安藤はるかさんの作品。日本画の画材やアクリルガッシュなどを使用しているとか。間近で見ると面白い効果があって、思わず引きこまれました
一井弘和さんの作品。木彫を中心に、水晶・漆・金・和紙など、さまざまな自然素材を融合して作品制作をしている方だとか。独特の雰囲気ですね
菊の花の連作は、清川為都子さんの作品。モダンアートのようでクラシカルな雰囲気もあって、とても素敵でした!
「もあ」作品 ぼく達×緑たち @旧北町生活広場
町家×グリーンの素敵な展示。テーマは「植物連鎖~緑ある日常~」だとか。軒先から緑があるだけでいい雰囲気になりますね
建物の中庭部分には、小さな苔玉たちが配置され、大きなエキゾチックな植物たちとの対比が観られます。白い玉砂利が敷かれていたりして見目麗しいですね
羊たちが線路脇の草を食べる「羊プロジェクト」
現代アートに収まらないさまざまな表現と、地域の活動を紹介する「玉手箱プロジェクト」。今井町の8会場で、作品や歴史資料の展示、演奏会などが行われます。
その中でも最もユニークなのが、JR桜井線(万葉まほろば線)の土手、金橋駅~畝傍駅の間でで開催される「羊プロジェクト」でしょう。山添村の「めぇめぇ牧場」の羊たちを線路脇に放ち、除草とエサ不足の解消、さらに地域のコミニティーの活性化などを目的として定期的に行われています。
電車が走るすぐ脇で羊がのんびりと草を食んでいるだけでも、ちょっと尖ったアート作品よりもインパクトありますね!はならぁとの開催期間が終わってからも続けられると思いますので、ぜひ観に行ってみてください!
はならぁと「羊プロジェクト」の舞台となる、JR桜井線(万葉まほろば線)の土手。青い空と雑草の緑。まだ彼岸花の赤が少しだけ残っていました。線路脇は契約駐車場になっていて、フェンス越しに眺められます
放たれている羊は2頭でした
おそらく地元の小学生たちが書いたであろう看板が飾られています
線路脇の雑草はかなり固そうで、とても美味しそうには見えませんが、羊たちは平気なんですね。ムシャムシャと食べ続けていました。あまりに夢中で、電車が通って大きな音がしても見向きもしません!
電車と羊!ものすごい違和感です!万葉まほろば線を走る、万葉歌が描かれたラッピング車輌というのもポイント高いですね
柵の近くにいた1頭。小さなお子さんがむしった草を顔の前に持って行っていましたが、一応は食べてくれていたようでした(笑)
この距離です。草を食べるのに夢中で、ほとんどこちらを向いてくれませんが、それでも可愛いものですね。お子さんは大喜びでしょう!
「歴史ある町家×現代アート」違和感が楽しい!
今回が3回目となる『奈良・町家の芸術祭 HANARART』ですが、実は私はその前身である「奈良アートプロム2010」(紹介記事)に行ったきりで、今回が初めてでした。アートも町家も大好きですが、何となく「現代アートはよく分からない」というような意識もあり、あまり積極的に観てみようと思えなかったのです。
しかし、今回しっかりと拝見してみたところ、予想以上に面白かったです!
他の芸術祭では、自然の中にアート作品を置いてその違和感を楽しむようなものも少なくありませんが、舞台を「町家」に移しても、その面白さは十分に感じられます。歴史ある建築物をそのまま見学するだけでももちろん楽しいのですが、そこに現代アートが加わると、まったく違った景色へと変化するんですね。
しかも、今年のように県内の古い町並みを残す8会場を移動しながら開催するなど、他の県では不可能です。奈良の強みを活かした贅沢な展開ですね。
町家×現代アート。この組み合わせを好ましいと思うかどうかは人それぞれですが、この強烈な違和感は、一度体験してみて欲しいですね。ぜひあまり構えたりせず、カメラを片手に古い町並みを散策するついでに、笑いながらアートを楽しんでみてください!
はならぁとオリジナルグッズも販売していました。公式Tシャツにポロシャツ、クリアファイルにオリジナルの割り箸も!公式図録(@1,000円)もありますので、アートファンの方はぜひ!
■奈良・町家の芸術祭 HANARART 2013
HP: http://hanarart.main.jp/
期間: 2013年9月7日 ~ 11月26日
会場: 時期ごとに会場が移っていきます
●五條新町(9月7日~9月16日)
●御所市名柄(9月14日~9月16日)
●八木札の辻(9月20日~9月29日)
●今井町(9月27日~10月6日)
●郡山城下町(10月12日~10月20日)
●宇陀松山(10月20日~10月27日)
●奈良きたまち(11月1日~11月10日)
●桜井本町(11月16日~11月26日)
Twitter: @HANARART
Facebook: https://www.facebook.com/hanarart
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