2013-10-12

奈良の秋の伝統行事『鹿の角きり』@鹿苑角きり場

奈良の秋の伝統行事『鹿の角きり』@鹿苑角きり場

奈良の秋の伝統行事『鹿の角きり』を観てきました。人間と奈良の鹿との共存のために、勢子(せこ)と呼ばれる方たちが牡鹿を追い込み、神官役の方が伸びた角を切り落とす、勇壮な行事です。逃げまわる鹿たち、追い込む男たちの真剣勝負で、すごい迫力です!お土産に本物の鹿の角を買えたりしますので、それも必見です!


鹿のため人間との共存のため、角が切られます

奈良の秋の風物詩となっている、勇壮な伝統行事『鹿の角きり』。伸びた角が町民に害を与えたり、お互いに突き合って怪我をしたりするのを防ぐため、1671年ごろ、鹿たちを管理する立場にあった興福寺が、奈良奉行の立会いのもとで始めたと伝えられています。この頃は奈良町の袋小路などに鹿を追い込んで角を切っていたそうです。

その後、1891年には春日大社の表参道を区切り、観賞席も設けて行われるように。1929年からは鹿苑の一角に鹿の角きり場も設けられ、現在は「一般財団法人 奈良の鹿愛護会」の方たちによって続けられています。

暴れる牡鹿をつかまえてシンボルである角を切り落とすなんて、ちょっと可哀想な気もしますが、これも人間と鹿との共存のため。ちなみに、この『鹿の角きり』の時に切られなかった牡鹿たちも、すべてひと目に触れないところで角を切り落とされています。

2013年の鹿の角きり行事は、10月初旬の3連休(10月12日~14日)に行われました。私たちは今年が初めてでしたので勝手も分からず、12:00スタートの初回に間に合わず、30分ほど遅れて到着しましたが、もうすでに2回目の入場を待つ行列が出来ていました。初日の初回は、行事に先立って「安全祈願祭」なども行われるため、それだけ人気も高いのでしょうね。初回狙いの方は、早めに並んでおいた方が良さそうです。


『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-01

春日大社参道にある「鹿苑」で行われる伝統行事『鹿の角きり』。初日の初回には間に合わず、12時半ごろに到着したところ、第2回(13時スタート)を待つ方たちの行列が出来ていました

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-02
鹿の角きり行事のタイムスケジュール表。初日の初回は、11時半に開場。12時から「安全祈願祭」が行われ、12時20分から行事が始まります。各回は30分くらいで終わります。14時半が最終で、15時に終了。後半の時間、後半の日程になるほど空いていくようですので、混雑を避ける場合は14時ごろを狙うといいかもしれませんね。なお、三脚の使用は禁止されていますのでご注意ください


1回に3頭ずつ鹿が入場。所要時間30分ほどです

観客席がついた「鹿の角きり場」にはこれまで何度か入場していますが、この日は春日大社の神紋(下がり藤)入りの幕がかけられ、解説のアナウンスと太鼓の音が鳴り響き、とても勇壮で神聖な雰囲気でした。

なお、鹿の角きり場の北側から入場しますが、1回に3頭の牡鹿が登場し、まずは北側、次に南側、最後に中央と、3箇所で角を切るところを披露してくれます。やはり真ん中くらいが一番見やすいですが、各回ごとに完全入れ替え制というわけでも無く、余程の混雑でなければ次の回も引き続き観ていても問題ないようですので、あまり焦る必要はありません。

鹿の角きりは、大まかに分けて [1]鹿の角に縄をかける [2]縄を引いて捕まえる [3]角を切る という順で行われます。最初の「角に縄をかける」部分ですが、広い鹿の角きり場の中を鹿が猛スピードで走り回るため、ものすごい迫力です!ただし、なかなか上手く写真に収めるのが難しいですので、以下の動画をご覧いただくのが分かりやすいでしょう。


奈良市の春日大社で「鹿の角きり」始まる by 産経新聞さん(1:28)


鹿たちはもちろん必死で逃げまわりますが、旗がついた竹の棒を持った「勢子(せこ)」と呼ばれる方たちは、出来るだけ外周の壁に沿って走らせるように鹿を誘導していきます。鹿のルートを制限し、鹿の角に縄をかけやすするのです。完全にコントロールすることはできず、真ん中を割られたりしていましたが、こうなると危険が伴うのだとか。

鹿の角に縄をかける際には、竹でできた「十字」という道具で輪っかを作り、それを投げつけるのですが、この音がパシーンと乾いた音で響きます。勢子の方たちの掛け声とこの音が混ざり合い、大した迫力でした!


『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-03

鹿の角きり場の様子。入場した側と真逆の位置に本部とカメラマン席が設けられています。観客席のすぐ手前の壁近くも鹿は走りますから、やはり最前列が見やすいでしょう

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-04
1回につき3頭の牡鹿が会場に入れられます。1頭ずつ順番に、観客席から向かって左・右・中央の位置で角を切られていきます

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-05
立派な角!会場アナウンスでは、このクラスの角を磨くと2本セットで30万円ほどで取引されるとおっしゃってました。なお、鹿の角きりに登場するのは、特に立派な角を持つオスが選ばれているとか

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-06
ちょっとした合間にも、角を突き合わせて喧嘩をしていました。鹿の角は人が切らなくても春先になると自然に落ちて、また新しい角が生えてくるそうです。しかし、このくらいの角で争っては怪我をする確率も増えるでしょうから(木などにこすりつけて角を尖らせる習性があるとか)、やはり切り落とす方がベターなんでしょうね

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-07
勢子さんたちがスタンバイ。鹿を外壁にそって走らせるように誘導しています

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-08
角に縄をかける役割の方が、手に持った「十字」という器具を投げつけます。鹿も全力で逃げまわっていて、簡単に縄はかかりませんし、かかりが浅かったりします。上手くかかるまでこれを繰り返します

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-09
外側へ誘導していますが、その間隙を縫って内側へ切れ込むことも。最初は3頭同時に登場しますので、見えない角度からぶつかってこられたりするとかなり危険なのだとか。真剣勝負ですね


走り回る鹿たちと勢子さんとの真剣勝負!

角に縄をかけられた鹿は、鹿の角切り場内の2箇所に立てられた柱を利用して、じっくりと取り押さえられます。この部分は見やすく動画が撮れましたので、迫力の攻防をご覧ください。この辺りの攻防は本当に迫力がありますし、全力で暴れる鹿と危険と隣合わせの緊張感が伝わってきます。


私たちが撮影した動画です。角に縄がかけられた後の緊迫した攻防をご覧ください(1:35)

実は、鹿を押さえつけて角を切るなんてちょっと残酷なイメージがあったのですが、こんな大変なことをしているのかと思えば、だいぶ考え方も変わりました。ぜひ会場へ行って、迫力の動きや音を体感してみてください。


『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-10

鹿の角にかかった縄を捕まえて、柱が立っている方向へ誘導していきます

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-11
この柱を使って引っ張るのですが、鹿も踏ん張って抵抗します

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-13
ちょっとずつ引き寄せて、鹿を取り押さえるタイミングを見計らいます

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-14
まず頭側から、勢子さんが取り囲んでいきます!頭が動かせない状態とはいえ、まだ後ろ足で抵抗しますから、かなりの緊張感ですね

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-15
取り押さえられた鹿は、大人数名がかりで持ち上げられて運ばれます

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-16
ござと枕がある場所に押さえつけられます。この日は鹿の角きり行事の初日だったため、報道陣が多すぎでした(笑)

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-18
のこぎりを手にした神官役の方が登場し、順番に角を切り落としていきます。角を切る前に、まずは鹿に水をひと口飲ませて落ち着かせるのだとか。また、鹿の耳を押さえて目をふさぎ、見えないようにしているのだそうです

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-19
ほんの数十秒で角が切り落とされます

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-20
2本とも切り落とされたら、それを観客側へ掲げます。拍手喝采!取り押さえられている鹿を離すときも、みんなで呼吸を合わせて行います。最後まで緊張の連続ですね


鹿の角が購入できるブースも登場してます

普段は静かな鹿苑ですが、鹿の角きりの日だけはちょっとした物販ブースなども登場し、とての賑やかです。記念撮影ができたり、鹿の角が買えたり(!)しますので、こちらも必見ですね。

なお、鹿苑の一部は普段から一般公開されていますので、ぜひ気軽に足を伸ばしてみてください(入場無料ですが、100円程度の協力金が必要)。


『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-21

鹿の角きり場の裏側には、たくさんの鹿が収容されています。観客席からも見えるのですが、すぐ近くに真っ白い鹿の姿も観られました。奈良公園へ放つとカメラを持った観光客などに追い回されてしまうため、ずっとここで過ごすのだとか。可哀想ですね

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-22
会場前には、奈良の鹿の保護に努めている「鹿サポーターズクラブ」さんのグッズ販売ブースなども。また、面白いところでは、奈良の鹿の故郷とも伝わる、茨城県鹿嶋市の観光PRのブースも。「剣聖・塚原卜伝の誕生の地」という点もアピールなさってました!

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-23
なんと、細工される前の、本物の鹿の角も販売されていました!小さいもので1本1,000円、大きなものは7,000円。こんなものが購入できると思っていなかったので、喜んで購入しました!(もちろん「小」ですが)

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-24
奈良の鹿愛護会のはっぴを着て、鹿の角を手に持って、鹿のゆるキャラと一緒に記念写真が撮れるコーナーも。大盛況でした!

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-25
鹿苑の前には『「奈良のシカ」の保護活動支援自動販売機』が設置してあります。この自販機の売上の一部は、奈良の鹿愛護会の活動に充てられます

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-26
この自販機でドリンクを買うだけでもいいのですが、50円・100円といった少額の寄付も出来るようになっています。見かけたらぜひ利用してみてください!

『鹿の角きり』@鹿苑角きり場-27
いつもどおり、奈良公園にはたくさんの鹿たちの姿が見られます。そんな鹿たちを観ながら春日大社の参道を歩き、鹿の角きりを観て……と、充実した鹿三昧な一日になりました!



大きな地図で見る


■鹿の角きり

HP: http://www.naradeer.com/
場所: 鹿苑(奈良県奈良市春日野町160)
電話: 0742-22-2388
期間: 2013年10月12日・13日・14日 12:00~15:00
料金: 大人 1,000円、こども 500円
駐車場: 近隣に有料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩約25分


■参考にさせていただきました

春日野奈良観光 - 鹿の角切り
なら・観光ボランティアガイドの会“朱雀(すざく)”- 奈良公園 鹿苑 鹿の角切り


■関連する記事






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ