
鹿と人間との共存を考えさせられる『角鹿公開』@鹿苑
奈良公園内にある鹿の収容施設「鹿苑」で、初の一般公開となる『角鹿公開』が始まりました。畑を荒らしたり、気性が荒くて人間に危害を加える恐れがあり、人間との共存が難しいと判断された雄鹿が暮らすエリアが見られます。金網越しの至近距離で見る角鹿たちは迫力がありますし、いろいろと考えさせられました。
鹿の角きり場の裏手、鹿苑内部の一般公開
春日大社の境内地にある「鹿苑(ろくえん)」では、初めての一般公開となる『角鹿公開』を行なっています。
この鹿苑とは、負傷や病気の鹿、畑を荒らしたり人に危害を加える鹿などを隔離するために施設で、現在約300頭の鹿たちが収容されています。ここにある「鹿の角きり場」では、10月初旬に恒例の「鹿の角きり」が行われたり、春には奈良公園へデビュー前の生まれたての小鹿が見られる「小鹿公開」などが行われます。
しかし、その背後にある部分が一般公開されるのは初めてとのこととなります。この一般公開は、入場料の代わりに100円程度の「協力金」が必要です。これが奈良の鹿の保護活動へ充てられることになりますし、鹿の生態と鹿保護の活動の実態を広く知ってもらえるきっかけになれば…との狙いもあるとか。このために見学用の通路も設けたというのですから、気合が入ってますね!
鹿の収容施設『鹿苑』では、2012年12月3日から、初の一般公開「角鹿公開」を行なっています(2013年2月末まで)。平日の午後のみの公開です
角鹿公開のパンフレット。鹿苑の活動内容や、天然記念物である奈良のシカの生態や頭数などが解説されています。詳しくは『角鹿公開』のページからご覧ください(PDFファイルです)
鹿苑の入口。定期的に一般公開されてる「鹿の角きり場」の裏手にあります。この辺りは何度も来ていますが、ここが開いているのを見るのは初めてでした
入口前には「協力金」を入れる箱が置いてあります。「鹿苑に保護されている鹿たちのエサ代として、100円程度ご協力お願いします。」とありました。100円以上入れてもいいですよ!
徘徊・畑荒らし・荒くれ鹿が収容されるエリア
今回の「角鹿公開」では、金網越しに角が生えたままのオス鹿たちが間近に見られます。
奈良公園にいる雄鹿たちは、この時期は角は切り落とされていますが、鹿苑に収容された鹿たちの角はそのままです。
実は、今回公開される6番エリア・7番エリアの角鹿たちは、奈良公園を離れて遠出したり、畑を荒らしたりすることを覚えてしまった、または気性が荒くて人間に危害を加える恐れがあるため、人間との共存が難しいと判断された者たちが暮らす場所です。6番エリアにいる鹿たちは、これから一生ここで過ごすことになるのだというから、ちょっと切ないですね。
鹿たちの楽園に見える奈良公園ですが、その裏ではこんな現実もあるのです。可愛らしい鹿の姿に癒されるだけではなく、奈良の鹿愛護会の皆さんがこうして活動してくださっているからこそ、奈良公園の鹿と人間は共存できているということを知るのも大切なことでしょう。
鹿苑のマップ。角きり場の裏側は堆肥場・療養スペース・治療室なども含めて9つのエリアに分かれています。下のオレンジ色の部分が見学通路。6の「人との共生が難しい角ジカ」50頭と、7の「発情期に特に気が荒い角ジカ」14頭(三月初めに奈良公園に解放されるそうです)が公開されます
6の「人との共生が難しい角ジカ」エリア。角が生えたままの雄鹿50頭が収容されています。もちろん檻越しですが、間近に鹿たちが見られて迫力がありました!
公開初日だったため、一般の観光客の方の姿はごくわずか。報道各社さんがいらっしゃってました。この写真は取材が終わって皆さんのんびりしてたところです(笑)
金網越しに撮影したもの。この季節、奈良公園の鹿たちは角が切り落とされているのに、ここの鹿たちはみんな伸ばしたままです。時期が来たら自然に落ちるのだとか。正面奥の金網の向こうは、体が不自由なメス鹿たち。増え過ぎを防ぐためオスメス分けて保護しているそうです
6番のエリアの角鹿たちは、奈良公園を離れて遠出したり、畑を荒らしたりすることを覚えてしまったり、人に向かっていく気性の荒い雄鹿たちです。そんなクセがついてしまうともう治らないため、人間との共存のため、彼らは一生ここで過ごさなくてはいけないのだとか。鹿たちの楽園に見える奈良公園の、ちょっと切ない現実が垣間見れます
みんな特にやることもないので、落ちてきた好物のドングリを食べたり、角を突き合ったりしていました
新設された見学通路の奥から見たところ。左手が7番エリアには、発情期になると気が荒くなる角シカ14頭が収容されていました。三月初めに奈良公園に解放されるまでここで暮らすそうです。初冬の季節は通路にたくさんのドングリが落ちています。投げ入れてあげると鹿が喜びます
通路にそって、奈良公園の鹿に関するクイズが出題されています。パネルをめくるとすぐに答えが分かりますので、お子さんたちも楽しめるでしょう。鹿の瞳の形、どれだか分かりますか?
パネル展示では奈良の鹿保護の活動内容なども
鹿苑の一般公開エリアの入口部分には、パネルなどを使用して奈良公園の鹿の歴史や現在の状況などが解説されています。鹿の角きりの展示などは充実していて、見ているだけでも面白いですし、交通事故のデータなどは身につまされるような思いがしました。奈良の鹿愛護会の方々の活動内容も解説されていて、どれだけ大変なものなのかが伝わって来ました。
手が空いていればスタッフの方のお話も聞けると思いますし、ぜひたくさんの方に見に行って欲しいと思います!
入口部分には、奈良公園の鹿たちに関するさまざまな展示がありました。これは鹿の角きりの際に着用される衣装と道具。手前が烏帽子をかぶった「神官」で、片手にノコギリを持ち角を切り落とします。奥のはっぴ姿は「勢子(せこ)」。鹿を捕まえる「十字」という道具を持っています
奈良の鹿の歴史や現状など、分かりやすいパネル展示でした。車と鹿との交通事故の頻発ポイントマップや、鹿が誤って食べてしまい胃に詰まらせて死んでしまったゴミなども見られ、色々と考えさせられます
「角でわかるニホンジカの年齢」という展示。並べてみると違いますね!
これは展示物ではありませんが、鹿苑前に停まっていた奈良の鹿愛護会さんの鹿モチーフの車たち。こんなミニカーが発売されないかしら(笑)。運が良ければ見られるかもしれませんね!
■鹿苑「角鹿公開」
HP: http://www.naradeer.com/
場所: 鹿苑(奈良県奈良市春日野町160)
電話: 0742-22-2388
期間: 2012年12月3日~2013年2月28日(土日祝、年末年始を除く)
料金: 100円程度の協力金が必要
駐車場: 近隣に有料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩約25分
※詳しくは『角鹿公開』のパンフレットをご覧ください(PDFファイルです)。
■参考にさせていただきました
奈良「鹿苑」一般公開 - MSN産経ニュース
来月3日から鹿苑を一般公開 奈良の鹿愛護会 - MSN産経ニュース
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