
【書評】『古事記・日本書紀』関連スポット探訪本3冊
歴史書「古事記」が編纂されてから1300年を迎えます。解説書などが続々と登場していますが、その中から、古事記・日本書紀の「関連スポット」を巡る際に役立ちそうなガイド本3冊を読んでみました。島根・宮崎・兵庫・奈良など、日本各地の古事記ゆかりの土地に旅してみたくなります。
『神話の世界をめぐる古事記・日本書紀探訪ガイド』
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日本全国に点在する古事記・日本書紀にまつわる約70ヶ所を紹介した一冊で、神代からヤマト王権、飛鳥時代まで、時代別にまとまっています。歴史をテーマにしたガイド本を多数手がけているメイツ出版さんのものなので、とても使いやすいオーソドックスなタイプの旅行ガイド本になっています。個人的には、記紀関連の旅行に持って行くならこれを選ぶと思います。
章の頭に、古事記のあらすじを2ページ、その後はスポットの紹介を2ページ(もしくは1ページ)という構成で、それぞれどのような場面で登場したのかがしっかり解説されていますので、古事記のストーリーが頭に入っている人間にとってはとても分かりやすいですね。大きめの写真入りで紹介されているため、詳しい説明を読みながら現地に行った気分になれる、読み物としても楽しめます。
それは同時に、初心者の方だとやや関連性を把握するのが難しい可能性もあるということですから、分かりやすい物語解説がもう一冊必要になるかもしれません。さすがにディープなスポットは紹介されていませんが、幅広い層におすすめしたい一冊です。
冒頭にあるマップ。日本全国の近畿・出雲・九州を中心に、約70ヶ所が紹介されています。神話の時代の痕跡が、日本各地に遺されていることも驚きですね。この全てに行くことは難しいかもしれませんが、読んでいるだけでも楽しめます
関連スポットの紹介ページ。最初は兵庫県の「伊弉諾神宮」と「おのころ島神社」。日本の国が生まれた場所とされる土地に祀られています。通常の観光ガイド本と同様に、簡潔な解説と拝観情報があるため、とても使いやすいでしょう
奈良県内からも、最多の15ヶ所が紹介されています。こちらは葛城市の「葛城一言主神社」と、滋賀県の「蒲生野」のページです。普段からお詣りしているような身近な神社なども、古事記や日本書紀の関連スポットですから、改めて見直すいいきっかけになりますね
『古事記・日本書紀を歩く―神話と伝説の世界を訪ねて』
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古事記・日本書紀の舞台になった土地を、実際に歩いて紹介する一冊。古事記のストーリー展開通りの順番で、神々の時代から大王の世紀、政権が確立するまでを追っています。
普通のガイド本とは違い、まずは古事記の現代語訳が簡単に紹介され、その舞台になった地域(出雲・宮崎・熊野・大和・難波・伊勢・吉備など)の史跡をめぐります。ただし、ガイドブック的に必要な情報を分かりやすくまとめるのではなく、「宮司の●●さんにお話を伺うと…」というように、紀行文的になっているのが特徴です。その分だけガイドブックとしてはやや使いづらいのですが(紹介したスポットの住所などの情報はちゃんと掲載されています)、読み物として面白いです。
奈良の情報も充実していますが、やはり古事記のゆかりの土地巡りといえば、1巻の神代の舞台となった出雲や宮崎です。この辺りの記述が楽しくて仕方ありません。この本と一般的なガイド本をセットにして、古事記ゆかりの土地巡りをしてみたいですね!
伊邪那岐命が「黄泉の国」と向かった関連の土地を紹介するページ。島根・鳥取の猪目洞窟や黄泉平坂などが紹介されています。テキストの量が多めですが、古事記のストーリーを簡潔に紹介してあるため、その土地がどんなシーンで登場したのかが分かりやすくなっています
宮崎県に伝わる天孫降臨の関連スポットの紹介ページ。大きめの写真を使っていますが、古事記のエピソードとともに、霧島東神社・高千穂峰・高千穂河原・霧島神宮・霧島神話の里公園・猿田彦神社と、コンパクトに6ヶ所が紹介されていますので、コース選定には比較的使いやすいかもしれません
『神様に出会える 聖地めぐりガイド』
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2009年に出版された、いわゆるパワースポット本です。ただし、半分以上の80ページほどで「古事記」の物語を紹介しており、ガイドのページは60ページほど。装丁からして仰々しさがなく、女性が持ちやすいように意識してあります。しかし、スポット巡りに合わせて立ち寄りたい飲食店の情報を盛り込むのではなく、古事記のストーリーを読ませるようにしてあるのはいいですね。
前半の古事記の物語部分ですが、平易な文章に訳してあって、とても読みやすいです。神様の表記は、漢字にふりがな。天地開闢から雄略天皇の時代(何故か80年忘れられた赤猪子のエピソード)までを描いています。
また、この文章がクセがあってなかなか面白いんです。悪く言えば自動翻訳をしたもののようですし、「その一文は本筋と関係ないからカットしてもいいんじゃない?」という点が数多くありますので、ぜひ探してみてください(笑)
後半の「聖地ガイド」は、日本全国の7コースを、それぞれ2泊3日以内で回れるようなコースを紹介しています。公共交通機関を利用しての移動方法も書かれていて、バスの本数が少ないなどの注意点も。スポットの紹介はそれほど丁寧ではありませんが、各1~1/2ページずつで簡単に済ませてあります。この一冊でがっつり回れるとはとても思いませんが、どうせ別にガイドブックを持っていくんだと割り切れば、聖地巡りのお供にはちょうどいいサイズと内容でしょう。
これから古事記関連の土地を巡ってみたいと思っている女性にはオススメです。
前半は『ものがたり「古事記」』。古事記を平易な文章で掲載しています。独特のテイストです
後半は、東北山形、関東、伊勢熊野、中部長野、関西、出雲、九州宮崎と、全国の7つの関連の土地を巡るコースガイドになっています。スポット情報はそれほど細かくありませんが、公共交通機関を使ってスムーズに回れるようなコース設定になっています
それぞれのコースには、5~7ページほどのスポット解説がつきます。初心者の方などには丁度いい情報量かもしれませんね
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