2011-07-10

懐かしい奈良!『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』

懐かしい奈良!『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』

昭和20~30年代の奈良の風景を撮影した、入江泰吉さんの写真集『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景 昭和20~30年代』が出版されました。さっそく拝読しましたが、まぁ楽しいです!奈良好きには堪らない一冊でした。


懐かしい奈良の写真が二百点以上収録!

昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景 昭和20~30年代』は、奈良の風景や仏像を撮り続けた写真家「入江泰吉(いりえたいきち)」さんが写しとった、昭和の奈良県内の風景を集めた写真集です。

戦災で故郷である奈良に戻った入江泰吉(1905~1992)は、奈良大和路の風物に救われたと語っていた。約半世紀にわたって撮り続けてきた入江だが、その原点は、戦後すぐに見た、昔と変わらない農村風景であり、街を行き交う人や明るい子どもたちの表情だった。写真集に収録した二百点を越える写真からは、入江の温かいまなざしが感じられ、奈良大和路の飾らない風景が広がっている。これは入江の心の原風景であり、貴重な記録写真でもある。
Amazon販売ページより


書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-01

『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景 昭和20~30年代』の表紙。それほど大きなサイズではありませんが、計240ページと内容は充実しています。表紙の写真は、昭和31年11月に撮影された、東大寺界隈(雑司町)の風景。今から半世紀以上前(1956年)の奈良はこんなところでした


半世紀たっても今と変わらない風景も

写真集は計240ページで、次のような項目に分かれています。

1.奈良町界隈、2.佐保・佐紀・平城宮跡界隈、3.西の京、4.斑鳩・當麻界隈、5.山の辺の道・聖林寺界隈、6.飛鳥の里、7.文化財の記録

奈良市内の風景は、今は亡き…というものが多数見えますし(二月堂前の先代の良弁杉、荒池のボート、舗装されていない境内、伝香寺橋、移動式の街頭テレビなど)、福智院や高畑あたりまで行くと、とんでもない田舎の風景が広がっていたりします。白毫寺の近くや、佐保佐紀路の海龍王寺の境内に、特別なふうでもなく牛(!)がいたりします。

また、山の辺の道や聖林寺、また飛鳥の風景を見ると、今とそれほど変わらない懐かしい景色が見られたりして、そのギャップが面白いですね。ただし、この当時は石舞台古墳の上にみんなで上って記念写真を撮っていたり、亀石が田んぼの真ん中にポツリと寂しそうにあったりと、さすがに歴史の移り変わりが感じられました。

もちろん、全ての風景が今から半世紀も昔のことですから、隔世の感がありますね。今でも「奈良は田舎だ」などと言われますが、ずいぶん進歩したことが分かります(笑)


昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景 昭和20~30年代昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景 昭和20~30年代
入江泰吉 入江泰吉記念奈良市写真美術館

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この本を持って撮影現場を探してみたい

収録されている写真の中から、何枚かご紹介しておきます。

ちなみに、私は昭和44年生まれ(1969年)ですから、この時代の奈良を知らないどころか、まだ生まれてもいません。その当時の服装や風俗などを見るだけでも十分に楽しめましたし、奈良の町の今との違いが見つかって、何倍にも楽しめますね。

また、この本を持って撮影現場を探し当てて、今の風景と見比べてみたら楽しいでしょうね。この企画、いつかやってみたいと思います!


書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-02

近鉄奈良駅前(昭和30年頃)。建物が低くて、看板が懐かしい雰囲気です

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-03
東大寺南大門前交差点(昭和30年代前半)。意外とあまり変わってないかも?

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-04
大仏殿を望む(昭和31年11月)。若草中学校(多聞城跡)からの眺め。屋根瓦が続いています。この他、大仏殿前で、観光にきた米兵さんのシルエットが写っている写真なども掲載されています

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-05
選挙投票(般若寺本堂内)(昭和33年5月)。一番驚いた一枚。般若寺の本堂内が投票所になってます!キャプションには「『仏の前で清き一票』との見出しで新聞紙面を飾ったこともある、奈良らしい風景」とありました。確かに奈良らしいかも(笑)

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-06
興福寺境内(昭和30年頃)。興福寺の中金堂前の花見客!別の写真に、若草山でお弁当を広げている方たちの様子もありましたが、やはり当時は娯楽が少なかったんでしょうね

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-07
三条通り(昭和31年4月)。三条通りや餅飯殿などの写真も何枚も掲載されています。今も変わらない南都銀行の建物、つい最近無くなってしまった映画館。不思議な時間の流れを感じます

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-08
福智院界隈(昭和20年代後半)。この通りは「清水通り」というのだそうです。背後に見える、大きなお地蔵さまを祀る福智院本堂も、当時は塀もなく、通りに面していたんですね

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-09
海龍王寺境内(昭和20年代後半)。境内に黒く大きな牛の姿!堀辰雄のエッセイ『大和路』(昭和18年刊)では、ほとんど廃寺同然だったと書かれていたくらいですが、なかなか衝撃的な光景ですね

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-10
平城宮跡(昭和31年)。はるか向こうに見えるのは生駒山。ある意味では、今と一番変わっていない場所なのかもしれませんね

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-11
奈良ドリームランド(昭和36年11月)。同年7月の開園ですから、オープン間もないころの風景ですね。白黒写真のせいか、ものすごくハイカラに見えますね。「奈良の娯楽」と題して、この他も奈良競馬場やあやめ池遊園地の様子なども掲載されています

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-12
唐招提寺門前(昭和30年頃)。もちろん舗装なんてされていません。おさげ髪もバスの形も懐かしさが漂っています

書評『昭和の奈良大和路 入江泰吉の原風景』-13
近鉄橿原神宮前駅(昭和20年代)。中央口の様子だとか。よくこんな何気ない風景を撮影していましたね


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※奈良市にある「入江泰吉記念奈良市写真美術館」では、この出版に合わせて「入江泰吉 大和の暮らし―昭和20年~30年代―」という企画展も行っていますので、興味のある方はぞちらもぜひ!(2011年9月25日まで)
※システムの都合上、日付が変わっていますが、実際にこの本を読んだのは「2011年7月17日」です






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