「奈良関連本」を4冊まとめ読みしました
ここのところ、ドタバタしてどこにも出かけることが出来ませんでした。しかし、その間に、手元に溜まっていた奈良関係の本などをまとめ読みしましたので、順番にササッとご紹介したいと思います。
(4冊とは『百寺巡礼 第1巻 奈良』『ぶつぞう入門』『大和路・信濃路』『奈良のたからもの―まほろばの美ガイド』です)
やっと『百寺巡礼 第1巻』読了しました
ずっと手元に置きっぱなしになっていた、五木寛之さん『百寺巡礼 第1巻 奈良』を読みました。
五木寛之さんは、小説「青春の門」などで有名な小説家さんで、直木賞・吉川英治文学賞なども受賞されている方です。その著作は何冊か拝見したことがありました。私は知らなかったのですが、一時活動を休止して、1981年に龍谷大学へ通っていたこともあるのだそうです。その当時から仏教に興味をお持ちだったんでしょう。
そんな五木さんが、日本全国の百のお寺を巡るエッセイが、この「百寺巡礼」シリーズです。すでに文庫化されていますので、お近くの書店や図書館でも手に入ると思います。
お寺巡りのエッセイなどを読んでいると、よくあまりにもロマンチックに偏りすぎて、読みづらいものも多いものです。誰とは言いませんが、「私は感動のあまり、数十分の間、ただ仏様の前で立ち尽くしていました」的な内容ばかりが続いたりすると、「またかよ!」と、ちょっと白けたりするんですよね。
またその逆で、エッセイの体裁を取っていながら、あまりにも詳細すぎる歴史考証や、建築物・仏像などの専門的な記述が続いてしまうのも疲れるものです。それなら最初から専門書を読めば済むことですからね。
しかし、さすがは五木寛之さんはこの辺りのバランスがいいんですよね。もちろん、しっかりと下調べしてありますし、興味深い事実も語られたりしますが、時には自身の幼少期のエピソードを交えたり、小説家らしく過去のお寺の様子を想像してみたり。
これまで奈良のお寺に全く興味が無かった・・・という方が読むものとしては、やや分かりにくいかもしれませんが、奈良好き・お寺好きな方には心地よく読める一冊でしょう。
ちなみに、この『百寺巡礼 第1巻 奈良』に登場するお寺は、室生寺・長谷寺・薬師寺・唐招提寺・秋篠寺・法隆寺・中宮寺・飛鳥寺・当麻寺・東大寺の10ヶ所です。まさに奈良を代表するお寺を巡られています。
この百寺巡礼は、第2巻-北陸、第3巻-京都1、、、、と、文庫本でも完結していますので(第10巻まで)、ぜひ続きも読んでみたいと思いました。
百寺巡礼 第1巻 (1) (講談社文庫 い 1-60) | |
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気軽に読み流せる『ぶつぞう入門』
テレビの仏像番組などで姿をお見かけすることもある、漫画家の柴門ふみさんの、全国の仏像を巡るエッセイです。「東京ラブストーリー」の作者と言った方が分かりやすいかもしれませんね。
『ぶつぞう入門』というタイトルですが、決して仏像に関して詳しい解説があったりするものではなく、仏像初心者の柴門さんが編集者と一緒になって、好きなことを言いながら仏像を観て歩く・・・というもの。イメージとしては、「女版の見仏記」というところでしょうか。
法隆寺「釈迦三尊像」が布袋寅泰、「夢違観音」が松嶋菜々子、「地蔵菩薩像」が反町隆史にそれぞれ似ていると例えたり、東寺の「帝釈天」のハンサムさに驚いたり・・・と、まさに女性視点の仏像観賞です。ちなみに、柴門さんが好きな仏師は圧倒的に「運慶」だとか(ハンサム顔だから)。
同じラフな仏像巡りをしていても、みうらじゅん&いとうせいこうのお二人じゃ、まずこんな話の展開になりませんから、その違いに驚きますね。
本の中では日本全国のお寺を飛び回っていますが、雑誌の連載だったため、1章ごとの内容が短めで、各仏像に関する記述も、驚くほどあっさりと短めに切り上げています。1回の取材で3~4軒のお寺を巡り、イラストページも含めて10ページほどでまとめているんですから、なかなかのスピード感です(笑)
仏像好きとしてはかなり物足りない感もありますが、まだあまり知識が無い方が気楽に読むには最適でしょう。そういった意味では『ぶつぞう入門』というタイトルも間違いではないでしょう。
確かに、これを読んでいたら、仏像を観る小旅行へ行きたくなりますからね。サラッと気軽に読める、不思議な魅力のある一冊です。
ぶつぞう入門 (文春文庫) | |
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改めて古典『大和路・信濃路』も
お次は、奈良を描いたエッセイとして有名すぎるほど有名な、堀辰雄さんの『大和路・信濃路』です。
先に紹介した『百寺巡礼 第1巻 奈良』の秋篠寺の項目の中でも、堀辰雄さんが秋篠寺の伎芸天を「ミュウズ」と称した一文が引用されているほどですので、耳にしたことがある方も多いでしょう。
(このエピソードが紹介される時には、必ず「東洋のミューズ」と言ったことになっているんですが、『大和路・信濃路』では単に「ミュウズ」です。他のエッセイなどでこう呼んだのでしょうか?)
近代文学と称するものにはほぼ無縁だった私ですが、高校時代から軽井沢へアルバイトで行っていたりした関係もあって、そこを舞台にした小説(『風立ちぬ』など)を書いていた堀辰雄さんの作品だけは、ほぼ全て読んでいます。
しかし、セッセイ『大和路』だけは、奈良に関する土地勘がありませんでしたし、それどころかお寺の名前すら知らなかったころに読んだため、ほぼ記憶に残っていませんでした。奈良に移ってきてから「いつか読み直したい」と思っていたのですが、ようやく読了しました。
簡単なあらすじだけご紹介しておくと、「奈良を舞台にした小説の構想を練っていた堀辰雄は、奈良ホテルに宿泊。奈良の各所をフラフラと散歩しながらアイディアが浮かんでくるのを待っていたが、結局は失敗」本当にこんな感じです(笑)
詳しいことはまた別の機会に書きたいと思いますが、このエッセイのスタートは1941年10月10日のこと。まさに太平洋戦争開戦の2ヶ月前のことです。奈良のお寺はどこも寂れていて、海龍王寺や浄瑠璃寺などは廃寺だったことが記されていたりして、なかなか面白いんですよね。
図書館でも古本屋でもどこでも手に入るような作品ですし、仮名遣いなども分かりやすくなっていて気軽に読めます。今から約70年前の奈良の景色を知るために、ぜひ手にとってみてください。
大和路・信濃路 (新潮文庫) | |
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カフェ「くるみの木」オーナーさんの著書
最後に、図書館の奈良コーナーにあったため、何となく借りてきた『奈良のたからもの―まほろばの美ガイド』という一冊です。著者の石村由紀子さんは、奈良市法蓮町にあるカフェと雑貨のお店「くるみの木」のオーナーさんなんだとか。
本の内容は、サブタイトルが「まほろばの美ガイド」とあるように、奈良のカフェオーナーが気に入っている奈良の美しいものを紹介していく・・・というものです。
そのセレクトがなかなか面白くて、「修二会(お水取り)」「なら燈花会」「薬師寺」など、かなりベーシックなものもあれば、「ささやきの小径」「ウワナベ古墳」「宇陀の里」「夕陽観音」「唐古・鍵遺跡」など、地元の人間しか選ばないようなマニアックさですね。
奈良観光のガイドブックとするには、ややまとまりに欠けるかもしれませんが、パラパラッと眺めていると、それなりに新しい発見があるでしょう。気軽に読めて、奈良気分が盛り上がる一冊ですね
奈良のたからもの―まほろばの美ガイド (集英社be文庫) | |
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次は『死者の書』を読んでみる予定です
メモ代わりに書いておきますが、次は折口信夫(おりくちしのぶ)さんの『死者の書』を読んでみたいと思っています。
おどろおどろしいタイトルですが、当麻寺の中将姫伝説を元に、古墳の闇から大津皇子が復活して・・・と、二上山周辺を舞台にした古代小説なのだとか。難解そうですが、一応押さえておきたいところですね。
死者の書・身毒丸 (中公文庫) | |
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※ 2009/09/06 追記
よくよく考えてみれば、堀辰雄さんも折口信夫さんも、どちらもすでに「青空文庫」で、その作品の大部分は無料公開されている方たちでした。
パソコンのモニターで長文を読むのが苦じゃない方には手軽ですし、携帯電話などでも読めますので、図書館に行くまでもなく、無料でサクッとダウンロードしてご覧ください。
●堀辰雄「大和路・信濃路(新字新仮名)」--図書カード:No.4806
●折口信夫「死者の書(新字新仮名)」--図書カード:No.4398