2012-10-01

充実の展示内容『島根県立古代出雲歴史博物館』@出雲市

充実の展示内容『島根県立古代出雲歴史博物館』@出雲市

出雲大社の近くにある歴史博物館『島根県立古代出雲歴史博物館』。島根県内の荒神谷遺跡・加茂岩倉遺跡などから出土した、国宝の銅剣・銅鐸・銅矛などが展示してある、素晴らしい博物館です。古代の出雲大社の復元模型などもあり、古代史がお好きな方は必見の内容でした!


古代の出雲のすごさが伝わってきました

2012年11月11日まで、出雲大社周辺で開催されている『神話博しまね』。そのメイン会場となっているのが、近代的で美しい博物館『島根県立古代出雲歴史博物館』(Wikipedia)です。

2007年3月にオープンした真新しい施設で、歴史ある島根だけに、古代の出雲大社や、考古学史上の大発見と騒がれた「荒神谷遺跡」出土の大量の銅剣・銅矛・銅鐸、さらに「加茂岩倉遺跡」から出土した銅鐸、さらには旧石見国の遺物など、神々の代から出雲風土記の世界まで、充実した展示内容となっています。

私たちは日本神話や古代史が好きですから、今回の出雲旅行でもここが一番楽しめました。慌ただしい日程でしたが、たっぷり2時間以上も滞在していたほどです。こういった施設は事前にどれだけの予備知識があるかによって楽しさは大きく変わるものですので、出来れば事前に少しだけ予習していくことをおすすめします。


島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-01

『島根県立古代出雲歴史博物館』の看板。拝観するのは初めてでしたので、この文字を見ているだけでテンションが上ります!出雲大社に関する「巨大な産本柱」「平安時代の十分の一模型」「江戸時代の出雲大社復元模型」や、48m・39個・358本・38tという数字だけでも強烈。「この数に驚いたのは日本の歴史。刺激ぞくぞく、島根の歴史。」というキャッチコピーに誇張はありません


大迫力の「出雲大社と神々の国の祭り」

この日は、残念ながら出雲大社境内遺跡から出土した「宇豆柱(うづばしら)」は見られませんでしたが、最初の常設展示コーナー「出雲大社と神々の国の祭り」から、ものすごい迫力です!

この模型を見ると、西洋の「バベルの塔」ではありませんが、人智を超えた存在になりすぎて、後の時代まで残らなかったのかも…などと思ってしまいますね。落雷や嵐で倒壊したのだと思いますが、それも必然だったのかもしれません。

そんな復元模型などとともに、復元文化財ながらも出雲大社の巨大本殿の設計図「金輪御造営差図」が見られたり、平安時代の巨大な建物ランキングを示した「雲太・和二・京三」(和二が東大寺大仏殿)と描かれた書物「口遊(くちずさみ)」が展示してあったりと、本当に興味深い展示内容でした。


島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-03

古代出雲歴史博物館の中央ロビー。残念ながら、出雲大社境内遺跡から出土した本物の「宇豆柱(うづばしら)」は、京博へ出張中で見られませんでした。3本の巨木を束ねて柱として使ったという、その巨大さが伝わる模型が展示してありました

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-05
「雲太(うんた)」と呼ばれる巨大さを誇った、平安時代の出雲大社本殿を10分の1サイズで復元した模型。階段の中ほどに小さく神主さん人形が。いかに巨大だったかひと目で分かりますね。これだけの高層建築を支える柱は、巨木3本を束ねたもの。今から千年も前にこんなものが現存したのかと思うと、驚くほかありませんね

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-04
下から見上げたところ。本殿は風で揺れて大変だったでしょうね

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-06
平安時代の出雲大社本殿の姿を、色んな方がそれぞれの試算に従って復元したもの。高さが低いもの、階段が急なもの、しっかり補強が入っているもの、宇豆柱が内側に傾いているものなどがあります。このスペースの後ろ側にはガラス窓があり、背後からも見られるようになっていました

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-07
実際に出雲大社の屋根にあった「千木(ちぎ。斜めのもの。1本は復元)」と「勝男木(かつおぎ。横のもの)」。実物はさすがに巨大で、千木が830cm、勝男木が545cmあります。1881年の遷宮で使用され、1953年に撤下されたものだとか

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-08
平安時代の貴族の子供たちの教科書として使用されたといわれる「口遊(くちずさみ)」の復元。大きい建物ベスト3として、「雲太(うんた。出雲大社本殿)」「和二(わに。東大寺大仏殿)」「京三(きょうさん。平安宮の大極殿)」が挙げられています。東大寺大仏殿の大きさを表す時によく引用される資料ですね。複製品とはいえ、間近で見られて感激しました!

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-09
巨大本殿の設計図「金輪御造営差図(かなわのごぞうえいさしず)」(複製文化財)。昔の出雲大社の設計図とされるもので、3本を束ねて1本の柱にしてあり、階段の長さは「1町(約109m)」とあります。長らく実在を疑われていたのですが、2000年ごろに鎌倉時代の本殿の柱がこの図とほぼ同じ構造で発見されました

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-10
慶長14年(1609年)の出雲大社の復元模型。戦国大名・尼子氏の意向により三重塔や鐘楼が建てられ、仏教色が濃くなっていたそうです。本殿は特徴的な「大社造」はそのままですが、高さは約20mほどだったとか。当然のことかもしれませんが、時代によって大きく変わるものですね

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-11
神社建築の様式の違いを分かりやすく見せる模型もありました。一番手前が奈良・春日大社本殿。出雲大社は一番奥なんですが、見づらくてすみません!

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-12
この他にも、出雲市の青木遺跡から出土した、日本最古級の神像や絵馬なども展示されていました(複製文化財)


やや渋めの「出雲國風土記の世界」

お次は、奈良時代の出雲の様子を伝える「出雲国風土記」(Wikipedia)の内容を分かりやすく展示した「出雲國風土記の世界」コーナーです。

713年、元明天皇によって諸国へ編纂が命じられた風土記ですが、現在まで残っているのは常陸(茨城県)・播磨(兵庫県)・出雲(島根県)・肥前(佐賀県・長崎県)・豊後(大分県)の5か国のものだけです。出雲国風土記は、有名な「国引き神話」などが収められていて、現存する風土記の中でも最も完本に近い、とても貴重なものです。

パネルやジオラマを使って、奈良時代の出雲の国の人々の生活ぶりを、分かりやすく展示してありました。


島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-13

1300年前に作られた「出雲国風土記」を推定復元したもの。現在伝わる写本は冊子になっていますが、当時は上下2巻の巻物だったとか。現在でも使用されている漢字も多く見られるそうです

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-14
その当時の農村の様子を復元した巨大なジオラマ。小さな民家がぽつりぽつりと建つだけで、驚くほど渋い(=地味な)ジオラマでした!

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-15
出雲国風土記にも名前が見られる「朝酌促戸(あさくみのせと)」で行われていた漁の様子。小枝を束ねたものを水中に刺して、引っかかった魚を捕まえていたのだとか


「青銅器と金色の大刀」荒神谷遺跡出土品

古代出雲歴史博物館の常設展示のラスト「青銅器と金色の大刀」コーナーがすごいんです!

まずは、出雲市斐川町の「荒神谷遺跡」から出土した、358本の銅剣・6個の銅鐸・16本の銅矛が(他所の博物館への貸し出しなどはありますが)全て展示されています!

これらは1983年からの発掘調査で見つかったもので、それまでは出雲からは青銅器の出土例は全く無かった上、銅剣と銅鐸が同じ場所から見つかる例もなかったため、考古学の常識を覆す大発見となったものです。現在では「島根県荒神谷遺跡出土品」として一括で国宝指定されています。

大きなガラスケース内に、本物の銅剣(358本!)と復元された銅剣がずらりと並ぶ様子は、まさに圧巻ですね。その隣には、ちゃんと銅矛と銅鐸も並べられていて、本物だけが持つ迫力がありました。


島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-16

国宝「島根県荒神谷遺跡出土品」から、358本の銅剣の展示コーナー!上部のものは作られた当時のもののように黄金色の輝いたレプリカで、中段から下が本当に出土した銅剣です。迫力のある素晴らしい展示ですね!

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-17
荒神谷遺跡出土の銅剣がズラリ。1983年に広域農道の建設に伴い発掘調査したところ、きれいに4列に並べられた大量の銅剣が発掘されました

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-18
銅剣のお隣には、同じ荒神谷遺跡から出土した16本の銅矛も。槍状の武具ですが、これを実際に振り回して戦ったりしていたのか、すでに祭器化していたのか。主に九州で出土する例が多いそうです

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-19
荒神谷遺跡から見つかった銅鐸6個


「青銅器と金色の大刀」加茂岩倉遺跡出土品

さらに、「加茂岩倉遺跡」から出土した39個の銅鐸(国宝)も全て展示してあります!

加茂岩倉遺跡とは、荒神谷遺跡の大発見から遅れること13年。1996年に加茂町の農道工事の際に偶然発見されました。銅鐸は関西地方で出土することが多いため、出雲は東西の文化が集まる土地であり、古代出雲王朝のようなものが存在した証とする考え方もあるようです。加茂岩倉遺跡の銅鐸は、ドンボや鹿、亀(ウミガメ)などが描かれたものや、×印が付けられたものもあるのが特徴です。

銅鐸は美しいガラスケースの中に収められていて、色んな角度からじっくりと見られました。ライトアップされているので、プリミティブな鹿や亀の文様もくっきりと観察できます。素晴らしい展示ですね!


島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-20

島根県雲南市の「加茂岩倉遺跡」から出土した銅鐸39個(何点かは複製文化財の展示でした)。割れてしまったものは、偶然重機で掘り当てた時に破損したものだとか。1箇所の遺跡から39個もの銅鐸が見つかったのは、もちろん日本最多です

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-21
大きいものと小さいものがあります。土に埋められた時点で、大きい銅鐸の中に小さい銅鐸を入れる「入れ子状」になっていたそうです

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-23
加茂岩倉遺跡から発掘された「23号銅鐸(国宝)」。シカやイノシシと見られる四足動物や、双頭渦文などが描かれています。これらは近畿圏の銅鐸とはまた違った文様であり、出雲かその周辺で作られた可能性があるそうです

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-24
23号銅鐸のアップ。シカと双頭渦文の文様が美しいですね

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-25
加茂岩倉遺跡から出土した「10号銅鐸(国宝)」。取っ手の部分に「亀」も文様が見えます。その形からして、淡水性の亀ではなく、ウミガメであろうと考えられているとか


景初三年の銘の卑弥呼の(かもしれない)銅鏡も

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-26
古代出雲歴史博物館の見どころは、国宝銅器だけではありません。これは雲南市の神原神社古墳から出土した「銅鏡(重文)」で、邪馬台国の女王卑弥呼が魏に使いを送り、銅鏡100枚を賜った「景初三年(239年)」の銘が入ったもの!全国で2面しか見つかっていないのだとか。中央から見かって左にあるそうですが、残念ながら読めませんでした

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-27
古墳時代の出雲も、ジオラマを使った分かりやすい展示でした。出雲独特の「四隅突出型墳丘墓」は必見です!

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-28
「事代主命」の掛け軸など。すっかり布袋様のルックスになっています。お土産に売っていたら欲しいくらいの福々しさでした

島根県立古代出雲歴史博物館@出雲市-29
ミュージアムショップも充実していました。私は図録などを買い込んできました



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■島根県立古代出雲歴史博物館

HP: http://www.izm.ed.jp/
住所: 島根県出雲市大社町杵築東99-4
電話: 0853-53-8600
開館時間: 9:00 - 18:00(11月~2月は17:00まで)
休館日: 毎月第3火曜日(祝日の場合は翌日休)
観覧料: 一般 600円、大学生 400円、小中高 200円
駐車場: 無料駐車場あり
アクセス: 一畑電車「出雲大社前駅」下車、徒歩7分

※『神話博しまね』開催期間中(2012年7月21日~11月11日まで)

観覧料: 神話映像館とのセット券は1,000円(※高校生以下は無料。大学生は割引あり。詳しくはこちら
駐車場: 無料駐車場あり(平日は近隣駐車場を利用可。土日祝はパーク&ライド駐車場からシャトルバスが運行。詳しくはこちら

※実際に島根県を回ったのは「2012年9月23日~25日」でした


■参考にさせていただきました!

島根県立古代出雲歴史博物館 - Wikipedia
【神話博しまね】よみがえる はじまりの物語
神々の国しまね ~古事記1300年~ スペシャルサイト
神々の国しまね ~古事記1300年~ 公式ガイドブック(電子版)






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