2010-10-22

文豪設計の和モダン建築『志賀直哉旧居』@奈良市高畑

文豪設計の和モダン建築『志賀直哉旧居』@奈良市高畑

奈良市高畑の閑静な場所にある『志賀直哉旧居』。昭和の和洋中折衷のモダンテイストが感じられる建築物で、本当に素晴らしい雰囲気でした。偉大な文豪の書斎なども見られますし、昭和初期へタイムトリップできますね。


「高畑サロン」の中心となりました

奈良市高畑にある『志賀直哉旧居』は、白樺派の小説家として知られる「志賀直哉」が自ら設計し、居住した建物です。

志賀直哉は、一生のうちに28回もの転居を繰り返した人物です。奈良の古い文化財や自然の中で仕事を深めたいという希望を持っていたため、1925年に京都・山科から、奈良市幸町の借家に転居してきました。1928年に自らが設計を行った邸宅を奈良市高畑に建築し、翌年移り住んでいます。

この高畑の一帯は、春日山の原始林や飛火野の緑の芝生が借景として取り入れられるという、奈良の中でも特に静かで風光明媚な屋敷町であり、多くの画家や文化人などが同地に集まるようになりました。この邸宅は「高畑サロン」と呼ばれるようになり、武者小路実篤、小林秀雄などの文人たちがここに集いました。

1938年、鎌倉へ転居するまでの間に、大作「暗夜行路」の後編、「万歴赤絵」「晩秋」「山科の記憶」「邦子」「豊年虫」「雪の遠足」「リズム」などを発表しました。

1978年、厚生省社会保険庁所有の「飛火野荘」として使用されていたものを、学校法人奈良学園が買収し、老朽化した建物を改築。奈良文化女子短期大学のセミナーハウスとしても使用しています。さらに、2008年11月からは、昭和初期の姿に復元するための改修工事が行われました(2009年5月まで)。


シックでハイカラな数寄屋風建築です

志賀直哉旧居は、志賀直哉自身が設計した昭和初期の建物で、登録有形文化財となっています。数寄屋風に、洋風・中国風の様式も取り入れ、今見てもシックでハイカラですね。細部にまでこだわったことが感じられます。

順路に沿って、2階から1階へと見てまわるのですが、この日は不思議なほど人が多くて大変な騒ぎでした!普段はもっと静かだと思いますので、また機会をあらためてのんびりしに行きたいですね。


志賀直哉旧居@奈良市高畑-01

奈良市高畑にある『志賀直哉旧居』。文豪・志賀直哉が9年間住んだ邸宅を公開したものです。近くには新薬師寺や白毫寺などとも近い閑静な土地に建ちます

志賀直哉旧居@奈良市高畑-02
案内看板。社会保険庁が所有していた「飛火野荘」を、学校法人奈良学園が買取り、セミナーハウスとして保存・活用した経緯などについて書かれています

志賀直哉旧居@奈良市高畑-03
志賀直哉旧居の入口部分。敷地面積1,437平米(435坪)、建物は443平米(134坪)という広大な邸宅です。建物の内部をグルリと一周できるだけではなく、お庭にも降りられますので、自分の靴はビニール袋に入れて持ち歩くシステムになっています


志賀直哉旧居・二階客間など

志賀直哉旧居@奈良市高畑-05

志賀直哉旧居@奈良市高畑-06

志賀直哉旧居@奈良市高畑-07


文豪の二つの書斎は重厚でした

二階と一階にある志賀直哉の書斎です。一階の説明文には、志賀直哉本人のこんな文章が引用してありました。

「若い頃は書斎は北向きが好きだつた。明る過ぎると、気が散るので、机の上だけ明るく、ほかは薄暗いといふやうな窓の小さい部屋が好きで、我孫子でも奈良でもさういふ書斎を作つたが、年のせゐで、今はさむざむした書斎は厭になつた。奈良でも仕舞ひには二階の南向きの六畳を書斎にし、北向きの書斎は夏だけしか使はなかつた。」(志賀直哉『私の書斎』より)

一階の堂々としたデスクが置かれた部屋は、窓が北向きのため夏の間しか使われず、それ以外の季節には二階の和室で執筆を行っていたようです。窓から美しい緑が見える一階の書斎の雰囲気なんて最高なんですが、やはり文豪は色々と好みがあるようですね(笑)


志賀直哉旧居@奈良市高畑-08

志賀直哉が執筆を行っていた書斎の様子。机は北向きに置かれています。ここは夏の間に使っていた書斎で、普段は二階の書斎を使っていたようです。壁や机が本当に雰囲気がありますね。こんな机で仕事してみたいです!

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2階にある書斎。窓は南向きです。和室になっていますので、ここで文机などを出して執筆していたのでしょうか?


志賀直哉旧居・一階の茶室や水回り

一階北側には天井の低い趣きのある茶室が。西側には浴室・土間・台所などがあり、しっかりと復元されていました。


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ハイカラで美麗なサンルームと食堂

志賀直哉旧居の中心部にあたるのが、「サンルーム」と「食堂」です。

昭和初期の建物でありながら、広い吹き抜けで天井がガラスになったサンルームがあるのが驚きですね。いわゆる「高畑サロン」と呼ばれた集まりのシンボルとなった場所です。暖かな光が差し込み、すぐに庭に出られるのも開放的で穏やかな印象です。

また、食堂は邸宅の中で最も広い部屋にあたり、部屋の隅には大きなソファーがしつらえられています。天井は漆喰塗りで、中央部分を円形にくりぬいて大きな行灯型の照明を吊るしてあるのがポイント。まさにモダンデザインですね。


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和建築がお好きな方はぜひ!

食堂・サンルームの東側には、婦人や小人の部屋などの和室が並びます。どこも和建築の良さがしっかりと感じられるよう、見事にしつらえてありますね。奈良町などに多い古民家とはまた違った、ハイカラな和モダンの風情が感じられる素晴らしい建物でした。この手の建築物がお好きな方はぜひ!


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■志賀直哉旧居

HP: http://www.naragakuen.jp/sgnoy/index.html
住所: 奈良県奈良市高畑大道町1237-2
電話: 0742-26-6490
休館日: 月曜(貸切利用は可能)
営業時間: 9:30 - 17:30 (12月~2月の間は4:30で閉館)
拝観料: 大人 350円、中学生 200円、小学生 100円
駐車場: 無し(県営高畑駐車場を利用)
アクセス: JR・近鉄奈良駅から市内循環バス「破石町(わりいしちょう)」下車、徒歩5分






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