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【最近読んだ本】中将姫の寺 當麻寺の365日

※記事内に商品プロモーションを含む場合があります。

西日本出版社「お寺の365日」シリーズの最新作として、當麻寺(葛城市)中之坊の松村貫主さまが、お寺の行事や中将姫のこと、懐かしい昔のエピソードなどを綴られた一冊。真言宗と浄土宗の二宗同居の不思議なお寺の日常練供養や中将姫當麻曼荼羅、またはかつての名物「當麻がに」のお話などなど。とても興味深く、超面白かったです!

 

中将姫ゆかりの古刹・當麻寺の365日

西日本出版社さんから発売されている「お寺の365日」シリーズで、興福寺、大安寺、金峯山寺、浄瑠璃寺に続いて登場した一冊。

當麻寺(葛城市)の塔頭寺院中之坊の貫主さま(≒ご住職)である松村實昭さんが、お寺の行事や中将姫のこと、懐かしい昔のエピソードなどを綴られています。

お寺での日常と歴史、修行。
「お寺の365日」シリーズ最新作。

真言宗と浄土宗が同居する寺院、ご本尊「綴織當麻曼荼羅」、練供養、中将姫のお写経、称讃浄土経、陀羅尼助、役行者、聖徳太子・・・當麻寺は長い歴史の中でいろいろな変遷があり、いまだに解明されていない謎も多いお寺です。
當麻寺中之坊貫主の著者が當麻寺に伝わる伝統行事を軸に、日々のつれづれや伝え聞いたことを書き連ねていきます。

(※以下、目次は割愛)

Amazon.co.jp の紹介ページより

 

當麻寺ファンにはすべてが興味深い!

個人的な話になりますが、私たちにとって、當麻寺は “ほぼ地元のお寺さん” という感覚です。

4月14日の中将姫の御命日に催される伝統行事「練供養会式」にはほぼ毎年参拝していますし、普段からのんびりと境内を散歩させていただくこともあります。貫主さまともご面識をいただいていて、物理的にも精神的にももっとも近しいお寺さんです。

(※地元で生まれ育ったうちの奥さんなどは、小学校の写生大会は當麻寺で行われていたとか。羨ましい!)

當麻寺『聖衆来迎練供養会式』(葛城市)2025年も間近から拝見できました(2025-04-27)中将姫さまの御命日4月14日に毎年営まれる、當麻寺(葛城市)『聖衆来迎練供養会式』(通称:練供養、お練り)。今年も間近で参拝させていただきました。菩薩さまたちが姫を西方浄土へお連れする、千年以上も続く壮大な宗教儀式です。動画とともにご紹介します!

▲2025年の練供養の様子。千年以上も続く演劇的な宗教儀式です。間近で拝見するとライブ感がすごいので、機会があればぜひご参拝ください!

 

本書では、當麻寺で生まれ育った貫主さまならではの、深くて興味深いお話が披露されていますが、それが當麻寺ファンにとってはどれも面白くて面白くて。

「かつて練供養の屋台では『當麻がに(モズクガニ)』が名物だった」なんてエピソードは初耳でびっくりしましたし、かつて中之坊で製造していた伝統のお薬・陀羅尼助づくりのお話などもとても興味深かったです。戦時中に金堂の弥勒菩薩像をお守りするために防空施設を作る計画があったというお話もまったく知りませんでした。

二宗同居の不思議なお寺の歴史なども

そんな當麻寺ですが、外から見るとなかなか複雑で分かりづらい面も多々あります。

當麻寺について最初もっとも驚いたのが「真言宗と浄土宗が並立している」という点でした。それぞれの宗派の塔頭(≒子院)が當麻寺の運営にあたっていて、本書によるとこういう形は信州善行寺や宇治平等院などにしか見られない珍しいものなのだとか。

當麻寺というお寺を運営をしていく上でも、例えば1月1日の夜明けには真言僧は金堂で、浄土僧は本堂(曼荼羅堂)で、両宗派それぞれに法要を勤めているとか。二宗同居のお寺ならではの運営方法がいろいろと確立されていることが紹介されていて、外部の人間にはほぼ見えない事柄だけにとても面白いです。

さらに「現在の本堂は曼荼羅堂だが、かつては金堂が本堂だった」といったお寺の歴史、弘法大使空海や聖徳太子との関係、ふたつの三重塔(国宝)など當麻寺の興味深い成り立ちについてもとても分かりやすく理解できます。

また、お寺さんのちょっとした日常に触れられるのもいいですね。細身の貫主さまは冬のお勤めが寒くてこたえる…という話題や、お供え物の話、読経の際に感じられることなど、仏さまにお仕えする僧侶ならではの心の描写がとても面白いです。

本書を読んで當麻寺へお参りください

古刹・當麻寺の歩みと現在を、とてもバランスよく掘り下げられていて、當麻寺ファンの私のような者にはもちろん、まだ當麻寺へお参りしたことがない方にもぜひ読んでほしい内容です。ぜひ!