
血を流す蛇の石『くつな石』と棚田の風景 @明日香村阪田
ピラミッド状の墳丘を持つことが判明した「都塚古墳」から1kmほど斜面を上ったところに『くつな石』という石が祀られています。石屋が石鑿を入れると赤い血が流れ出し、傷ついた蛇が現れ、その祟りで亡くなってしまった……という言い伝えのあるもの。上り坂は急ですが、途中に美しい棚田の風景が見下ろせる展望スポットもありました!
都塚古墳と美しい棚田の「明日香村阪田」
ピラミッド状の墳丘を持つことが判明し、大きな話題になった、明日香阪田の『都塚(みやこづか)古墳』(Wikipedia)。石舞台古墳から南へ400mほどの丘陵地にあります。
この都塚古墳と突き当たるようになっている坂道の部分に、これより1km先に『くつな石』がある、という旨の案内がありました。
「くつな石」の由来
昔この巨石に目を付けた石屋が石を切り出そうと、石鑿で「コン!」と一打ち…。すると石の割れ目から、赤い血が流れ出し、傷ついた蛇が顕れた。驚いた石屋はそのまま逃げ帰ったそうな。ところがその夜から、ひどい熱と激しい腹痛におそわれ、とうとう亡くなってしもうた。村人たちは、これを「祟り(たたり)」と恐れ、敬い、此の石を「神の宿る石」として祀った。それがくつな石である。
大字 阪田 景観ボランティア明日香
現地の説明より
正直なところ、くつな石というものについて、私はまったく聞いたことがありませんでした。飛鳥には不思議な石造物が多数遺されていますから、その一つかと思い、ちょっとした運動代わり行ってみることにしました。
しかし、急な上り坂を1kmも歩くことになりますから、かなりヘビーです(写真を撮りながらゆっくり歩いて30分くらいかかりました)。覚悟と準備をして挑んでください(笑)
話題の「都塚古墳」を見下ろしたところ。明日香村阪田の集落は、丘の斜面に棚田が連なる美しい土地です。飛鳥の棚田といえば、全国棚田百選にも選ばれている「稲淵」、夕日が美しい「栢森」などがありますが、阪田のものも見事でした
明日香村の阪田地区は「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金事業」によって整備が進められているそうです。耕地が急傾斜のため、農業生産性が低かったところを、景観や埋蔵文化財に配慮しながらの開発が行われています
道もきれいに整備されていて車も通れます(駐車スペースはほぼありません)。結構な急斜面を、真夏に1kmも上るのはかなり辛かった……。看板は何箇所か出ていますが、道に迷いそうな箇所も。とりあえず丘の上の方を目指していけば何とたどり着けるでしょう!
上り道は辛いですが、眼下の棚田の風景が少しずつ移り変わっていくのが楽しめます。風に揺れる稲穂を見ながら、次第に高いところへ登っていくと、風景が次第に移り変わっていって、見事な眺望でした!
一枚一枚の田んぼは狭いのですが、間近で見るとそれなりに広いんですね。いい棚田!
田んぼの向こうに独特の形の畝傍山、そして遥か遠くに二上山が見えました。
血を流し蛇が出る?祟りもある不思議な石
そうこうしているうちに、くつな石の近くへ。森の入口のような部分のフェンスを通り、ここから100m先になります。いのししや鹿などの有害獣が出てきますから、出入りの際には扉のクサリをかけ忘れないようにご注意を!
「長い坂道、おつかれさまでした」というねぎらいの言葉。そして、「この橋を渡らず、後ろ側の坂道をのぼると、眼下に阪田、島庄、岡などの大字、さらに甘樫丘、遠くに二上山を望める絶景が広がります」とあります。後で忘れずに見ておきます
映画『もののけ姫』の「こだま(木霊)」のように見える堤防を横目に、山道を100mほど進みます
ようやく『くつな石』が見えてきます。小さな木製の鳥居と、大事に祀られた巨石。きれいに手入れされているのが分かります。下で見たのと同じ内容の説明書きもあります
正面から。鳥居は、ボランティアの方たちが明日香の桧で制作、奉納したものだとか。地元の方と偶然ご一緒したのですが、この辺りでは蛇のことを「くちな」と呼び、そこから「くちな石」になったのではないかとのことでした。後で調べてみたところ、西日本では小さな蛇のことを「朽ち縄(くちなわ)」と呼ぶところもあるようです
くつな石をアップで。石鑿のあとかは分かりませんが、表面を掻いたような線が見えます。今でも傷つけようとすると赤い血が流れ、傷ついた蛇が出てきそうな雰囲気はありますね。古くは「雨乞いの神さま」として祀られていたこともあったというのですから、不思議なご神体ですね
鬱蒼とした森。水の流れもある日陰のため、真夏でもとても涼やかでした
棚田・畝傍山・二上山の絶景スポットも!
くつな石100m前のフェンスの反対側の道を進むと、こんな展望スポットがあります!正面に畝傍山、向こうに二上山。見事なものですね!
少し角度を変えて。棚田のすぐ上の細い舗装道路ですが、おそらくはこの景色が見られるためだけに敷設してあるようでした。頑張って上ってきた甲斐がありました(笑)
■くつな石
住所: 奈良県高市郡明日香村阪田
時間: 見学自由
■参考にさせていただきました
阪田のくつな石 - 奈良の名所・古跡
万葉集入門│くつな石
飛鳥京観光協会 あすか昔ものがたり│くつな石
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