2014-12-07

充実の展示『特別陳列 おん祭と春日信仰の美術』@奈良博

充実の展示『特別陳列 おん祭と春日信仰の美術』@奈良博

奈良国立博物館で毎年開催されている『特別陳列 おん祭と春日信仰の美術』(2015年1月18日まで)。今年のテーマはあまり馴染みのない「威儀物 ─神前のかざり─」でしたが、これがユニークで面白かったです。会場の後半は「名品展 珠玉の仏教美術」。仏像絵画書跡など、こちらも素晴らしい展示内容でした。さすが奈良博!


1136年から続く例祭『春日若宮おん祭』

春日若宮おん祭」(Wikipedia)とは、春日大社の摂社・若宮神社の例祭で、毎年「12月15日~18日」にかけて催されます。

国の重要無形民俗文化財に指定されています。1136年(保延2年)に、関白・藤原忠通が五穀豊穣を祈って始めて以来、一度も途切れることなく、連綿と守り継がれている伝統行事で、2014年で879回目を迎えます。長らく大和の国を挙げて盛大に行なわれてきました。

17日の午前0時より、若宮様が参道脇に設けられた御旅所にお遷りになる「遷幸の儀」から始まり、正午から時代行列「御渡り式」が奈良市内を練り歩き、御旅所の若宮様の前で、夜遅くまでさまざまな神事芸能が奉納されます。


恒例の「おん祭」展。テーマは「威儀物」

奈良市の「奈良国立博物館」で毎年開催されている『特別陳列 おん祭と春日信仰の美術』(12月9日~2015年1月18日まで)。このタイトルでの特別展は2006年に始まり、2014年で9回目を迎えます。

しかし、今回は東新館の一室のみを使い、かなりコンパクトにまとまっている印象で、飽きる暇もありません。神さまのお姿を描いた神影図、おん祭の様子を描いた絵巻、境内図と仏の姿を描いた宮曼荼羅など、美しくも神々しい品が数多く拝見できました。

この展示は、毎年少しずつテーマを変えてあり、2006年は舎利信仰・春日地蔵、その後は神楽、田楽、雅楽、能楽、競馬・相撲・社家記録、社家の文芸活動、大和士と続いてきました。

そして、今年のテーマは「威儀物 ─神前のかざり─」です。威儀物は「いぎもの」と読み、祭礼や法会の威儀を増すために飾り付けられる諸具のこと。さまざまな飾り物を総称して威儀物と呼ぶのだそうです。

この名前だけを聞いてもまったくピンと来ませんが、これがとても面白かったです!

主役は、不思議な3連の台「千切台(ちきりだい)」。八角形の台が繋がった他ではまず見られないような凝った形で、近世になって復元されたものなどが展示されています。その造形自体に意味が込められているのでしょうが、純粋にデザインとして面白いですね。

またお供えのミカンをどこにいくつ積むかなど、威儀物をこしらえる際に手順書のような「春日社若宮祭図解」の解説などもあって、これも華やかで楽しかったです。おん祭ともなると、お供え物の見た目の豪華さも抜群です。談山神社の「嘉吉祭」のものなどが有名ですが、それに匹敵する華やかさかもしれません。

15日に餅飯殿で行われる「大宿所祭(おおしゅくしょさい)」などで一部は拝見できるはずですので、こちらも楽しみにしておきたいと思います。

おん祭の特別陳列は以前も拝見していますが、展示内容が古文書などが多めの印象でした。私が詳しくないこともあって、どうしても「お勉強する」という雰囲気があって、正直なところ、やや堅苦しい感があったのです。


特別陳列 おん祭と春日信仰の美術@奈良博-01

奈良国立博物館で開催中の『特別陳列 おん祭と春日信仰の美術』(2015年1月18日まで)。正倉院展の時の混雑が嘘のようにのんびりと拝見できます。12月17日(水)のおん祭当日は「入館無料」になりますのでぜひ!

特別陳列 おん祭と春日信仰の美術@奈良博-07
2014年の『おん祭と春日信仰の美術』のチラシ表面。中央の部分のデザインも「千切台」をモチーフにしています

特別陳列 おん祭と春日信仰の美術@奈良博-08
チラシ裏面。華やか!

特別陳列 おん祭と春日信仰の美術@奈良博-02
不思議な形の「千切台(ちきりだい)」(以下、画像は図録より)。明治12年に復刻されたもの。千切台は、新調された衣装を手渡す「装束賜」の席で、頭屋児(とうやのちご)の前に置かれたそうです。ものすごいデザイン感覚ですね。

特別陳列 おん祭と春日信仰の美術@奈良博-03
「春日社若宮祭図解」に描かれた威儀物の図像。献菓子台・大折・小折・盛菓子など、見ているだけで楽しいですね。会場では大きなパネルでも展示されていました

特別陳列 おん祭と春日信仰の美術@奈良博-04
「春日本迹曼荼羅」の一部。春日大社に祀られている10の御祭神を本地仏とともに表したもの。こうした図像も色んなバリエーションが比較して拝見できます

特別陳列 おん祭と春日信仰の美術@奈良博-05
「獅子座火焔宝珠形舎利容器」。かっこいい!こうした春日大社ゆかりの品々とともに、2015年から本格化する20年に一度の「式年造替」に関連した展示などもあり、名品が凝縮した展示内容でした


同時に見られる「名品展 珠玉の仏教美術」

さらに、西新館の第2・3室では、「名品展 珠玉の仏教美術」が開催されています。

現在、旧館にあたる「なら仏像館」が改修工事のために休館中(2016年3月まで予定)のため、ここへ仏像を中心とした仏教美術の優品がずらりとそろっていて、迫力がありました。

●量感ゆたかな元興寺「薬師如来立像」(国宝。9世紀)は背中までじっくりと拝見できて、内刳り(像を軽くするために背中側から内部を彫ること)の中まで観られます!

●興福寺「法相六祖坐像(伝神叡)」(国宝。1189年)。ガラスケース越しには何度も拝見していますが、こちらもフロア中央に位置しているため、横から背中からじっくりと拝見できます。静かに座ったお姿なのに、衣の裾が軽やかに踊るような、力強く動くような造りになっていることに初めて気づきました。素晴らしいですね!

●與喜天満神社「天神坐像」(重文。1259年)。桜井市初瀬におわす方(公式)で、拝見するのは初めてだったかも。憤怒の表情で、お顔の部分が白く塗られています。頸部には直径約19cmの六花形の銅鏡が嵌めこまれているとか。横からも拝見できますが、丸いパーツを繋げたような腰のベルトがはっきり見えました。

●絵画からは、国宝「十一面観音像」、奈良では珍しい「富士参詣曼荼羅」(江戸時代)や、迫力の「藤原鎌足像」(安土桃山時代)など。書跡からは「金光明最勝王経(紫紙金字)」(国宝。8世紀)など、質量ともに圧倒されるほどの豪華さでした!

さすが奈良博ですね。「今回は軽めにさっと見て回ろう」などと思っていたのですが、とんでもない!じっくりと時間をかけて堪能してください(笑)



■奈良国立博物館

HP: http://www.narahaku.go.jp
住所: 奈良県奈良市登大路町50番地
電話: 050-5542-8600(NTTハローダイヤル)
休館日: 月曜日(休日の場合は翌日休み)
開館時間: 9:30 - 17:00
駐車場: 周辺の有料駐車場を利用
アクセス: JR・近鉄「奈良駅」から、市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ(近鉄奈良駅から徒歩約15分)

※奈良国立博物館「なら仏像館」は、2014年9月より、建物内外の改修工事のために休館しています(2016年3月まで予定)。


●特別陳列 おん祭と春日信仰の美術

HP: http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2014toku/on-matsuri/2014on-matsuri_index.html
会期: 2014年12月9日(火)~2015年1月18日(日)
休館日: 12月15日(月)、22日(月)、1月1日(木)、5日(月)、13日(火)
開館時間: 9:00 - 17:00
観覧料: 一般 520円、大学生 260円、高校生以下 無料

※春日若宮おん祭の当日「12月17日(水)」は無料開館日になります

※奈良博の地下回廊では、「仏像写真展 大和の仏たち ─奈良博写真技師の眼─」も開催中です(2015年3月31日まで)。無料ですので合わせてぜひ!

※実際に拝見したのは「2014年12月12日」でした


■参考にさせていただきました

世界遺産 春日大社/春日若宮おん祭
春日若宮おん祭 - Wikipedia
春日若宮おん祭/春日大社|奈良市観光協会公式ホームページ


■関連する記事






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ