2013-12-07

春日若宮おん祭『お渡り式』レポート@春日大社

春日若宮おん祭『お渡り式』レポート@春日大社

1136年から続く『春日若宮おん祭』で行われる伝統行列「お渡り式」。県庁前から奈良市街地を練り歩く、奈良の冬の風物詩です。華やかな装束を観ているだけでも楽しいですし、大和の国の歴史の深さが実感できました。2012年にその模様をじっくりと拝見してきましたので、詳しくレポートしておきます。


1136年から続く「春日若宮おん祭」

春日若宮おん祭(かすがわかみやおんまつり)』とは、世界遺産「春日大社」の摂社「若宮」の祭礼です。

若宮の御祭神は「天押雲根命」(春日大社の第三殿「天児屋根命」、第四殿「比売神」の御子神)で、1003年に姿を現されました。1135年、時の関白・藤原忠通が、現在の春日大社本殿の南側に神殿を造営し、翌年の1136年から例祭おん祭が始まります。それ以来、大和一国を挙げるお祭りとして、870年以上も途切れること無く続けられています。

おん祭は、毎年12月15日の「大宿所詣」から始まり、12月18日の「奉納相撲・後宴能」で終わります。メインとなるのは12月17日の一日です。この日の午前0時に、若宮本殿からお旅所へ移った若宮神のものに、時代装束を着た芸能集団が参じ(お渡り式)、次々と伝統芸能を奉納、若宮神は日付が変わる前にまた本殿へ戻られる、というのが大まかな流れになります。

春日若宮おん祭ホームページ」をご覧ください。また、全体の流れはこちらのページが分かりやすいですね

私たちは、17日午前0時から執り行われる、若宮神が若宮本殿からお旅所へ移る儀式「遷幸の儀(せんこうのぎ)」を拝見したことがありました(紹介記事)。灯りも消した真夜中に行われる厳かな儀式で、本当に感動したものでした。


12月17日のお昼から伝統行列「お渡り式」が

同じ17日、12時から催される「お渡り式(おわたりしき)」は、平安時代~江戸時代までの風俗が見られる、華やかな伝統行列です。真夜中にお旅所に遷られた若宮さまのもとへ、芸能集団たちが参じていく形となります。

ルートは、県庁前広場を出発して、近鉄奈良駅からJR奈良駅へ、三条通りを進んでお旅所へと向かいます(マップ)。奈良の繁華街を練り歩く、奈良の冬の風物詩となっています。

春日大社の一ノ鳥居をくぐってすぐ右手には「影向の松」(ようごうのまつ)があり、ここに神職の方々の観覧席が設けられています。お渡り式の行列がここに差し掛かると、ここで「松の下式」(まつのしたしき)という儀礼的な所作を披露することになっています。

この松の下式がもっとも華やかな部分ですから、この前に陣取るのがベストポジションでしょう。ただし、かなり混雑しますし、人通りも多いので、ゆっくりと観たいという方には不向きかもしれません。


春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-01

春日若宮おん祭「お渡り式」当日、12月17日(2012年は月曜日でした)の春日大社の一ノ鳥居付近。これが12時40分くらいです。お渡り式の行列は、12時から順次、県庁前広場を出発し、三条通りを上ってきます

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-02
一ノ鳥居をくぐってすぐ右手の「影向の松」(ようごうのまつ)の前に、特設の観覧席が設けられています。お渡り式の行列はここで「松の下式」(まつのしたしき)という伝統的な所作を披露してからお旅所へ向かいます

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-03
松の下式を検分する役割を果たす「頭屋児」(とうやのちご)。まだ幼い少年たちですが、ここでお渡り式をずっと見続けます

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-04
その少し前の「お旅所」の様子。すでに若宮さまは遷られていて、お渡り式の行列はみなここを目指して参じてきます

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-05
大きな対の太鼓(ダダイコ)がしつらえてあります。奥に見えるのがお旅所。この日のために建てられ、おん祭が終わればすぐに撤去されます


「影向の松」の前が最も見やすいでしょう

私たちは、「競馬」や「流鏑馬」(やぶさめ)が見やすいであろうと予想して、一ノ鳥居とお旅所の中間くらいで拝見することにしました。

お渡り式の行列は12時から始まっていますが、このくらいの位置だと先頭が到着するのは12時50分くらいです。撮影目当ての方はともかく、普通に見学するだけであれば、それほど早めに場所取りをしておく必要もなさそうな印象でした。


春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-07

12時50分ごろの春日大社参道の様子。お旅所側から一ノ鳥居側を見ています。向かいにある白い囲いのようなものが「流鏑馬」の的が置かれるところ。影向の松ははるか向こう。遠くで何かを披露しているのは分かりましたが、その様子はまったく観えませんでした

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-08
足元に台を置いたり。カメラ撮影の方は大変ですね。三脚の使用も禁止されていないようでしたが、みんな次第に身を乗り出して来るので、あまり役に立たないような感じでした。撮影に夢中になり過ぎて、他の方のご迷惑にならないようにご注意を!


行列は日使・神子・細男・猿楽・田楽など

お渡り式は粛々と続き、行列は15時近くまで様々な衣装の方々が目の前を通っていきます。お旅所では、12時半から伝統芸能が披露される「御旅所祭」(おたびしょさい)が始まりますので、そちらを中心に観たい方は早めに移動しましょう。

●第一番 日使(ひのつかい) ●第二番 神子(みこ) ●第三番 細男・相撲(せいのお・すもう) ●第四番 猿楽(さるがく) ●第五番 田楽(でんがく) ●第六番 馬長児(ばちょうのちご) ●第七番 競馬(けいば) ●第八番 流鏑馬(やぶさめ) ●第九番 将馬(いさせうま) ●第十番 野太刀(のだち) ●第十一番 大和士(やまとざむらい) ●第十二番 大名行列(だいみょうぎょうれつ)

お渡り式はこのような順番になっていますが、松の下式の関係なのか、私たちがいた位置ではこれが入れ違ったりしています。「第四番 猿楽」の間に「第七番 競馬」が入るような順番になっていました。

行列の先頭には、それぞれが何と呼ばれる集団なのかを示す旗を掲げていますが、どんな役の方なのか予習が必要かもしれません。分かる範囲でご紹介していきます。


お渡り式の先導役の「楽人」たち

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-09
稚児行列や菅笠姿の女性など、華やかな楽人が先導します

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-10

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-11

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-12

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-13

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-14

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-15


お渡り式 第一番 日使(ひのつかい)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-16
日使を先導するのは、赤い衣装に千早(ちはや)という白く長い布を肩にかけて進む「梅白枝」(うめのずばえ)と、御幣を掲げて歩く「祝御幣」(いわいのごへい)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-17
千早はすごい長さです!何メートルあるんでしょうか?

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-18
それに続く「十列児」(とおつらのちご)。騎馬した4名の稚児で、頭に桜の造花を挿しています。お旅所で東遊(あずまあそび)を舞うのだそうです

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-19
この行列の中心となる「日使」(ひのつかい)。黒の束帯で、頭に藤の造花を挿しています。日使は、関白・藤原忠通がおん祭に向かう途中で病になり、お供の楽人にその日の使いをさせたことに始まるのだとか


お渡り式 第二番 神子(みこ)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-20
第二番は「神子(巫女)」。白の被衣(かずき)で、風流傘を差し掛けられながら進みます。辰市神子・郷神子・八嶋神子・奈良神子・拝殿八乙女と続きます。写真は郷神子

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-21
神子の拝殿八乙女。春日大社では、伝統的に巫女のことを「ミカンコ」と呼ぶとか


お渡り式 第三番 細男・相撲(せいのお・すもう)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-22
浄衣(じょうえ)という白衣に身を包んだ「細男」(せいのお)。6人おり、神功皇后の伝説にちなんだ独特の「細男の舞」を演じる集団です

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-23
細男の後は「十番力士」。行司と支証が続きます


お渡り式 第六番 馬長児(ばちょうのちご)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-51
山鳥の尾を立てた笠をかぶる「馬長児」(ばちょうのちご)。背中には牡丹の造花を背負っているそうです

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-24
馬長児に付き従う「従者」。五色の短冊をつけた笹竹を手に、頭上には龍の作り物を乗せています!ものすごい派手さですね。腰から一足の木履(ぽっくり)をぶら下げているそうです


お渡り式 第七番 競馬(けいば)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-25
赤と緑の裲襠装束(りょうとうしょうぞく)姿の騎者が、馬出橋からお旅所前の勝敗榊まで競い合う「競馬」。「舞楽の蘭陵王と納曽利はこの競馬の左右の馬の勝負によって演奏された勝負舞であるので、競馬の勝敗により左舞の蘭陵王と右舞の納曽利の順番が決められる」とのこと。13時半ごろから始まりました

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-26
両馬が一斉にスタートすると、至近距離なだけに迫力があります!馬が驚くので、撮影の際にはフラッシュは厳禁です

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-27
目の前を通りすぎても、このくらいブレます

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-28
競馬は3回(だったと思います)行われます。2頭がきれいにスタートを切ることもあれば、乱れて始まることも。面白いものですね


お渡り式 第四番 猿楽(さるがく)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-29
能楽の古い形である「猿楽」(さるがく)の一座。古くは観世・金剛・宝生を含めた大和猿楽四座が出仕していましたが、現在は金春座が務めています。松の下で「開ロ」「弓矢立合」「三笠風流」を演じ、お旅所入口では「埒明け」を行うそうです


お渡り式 第五番 田楽(でんがく)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-30
五色のご幣を先頭にした「田楽」の一座。おん祭では様々な芸能が行われますが、その多くに関わってきた芸能集団です。16日の宵宮詣、17日の初宮神社への初宮詣なども受け持っているとか。松の下では「中門ロ」「刀玉」「高足」などを演じるそうです

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-50
笛役の「二藹」(ろう)は、頭上に巨大な花笠を乗せています。ここに飾る人形が、奈良一刀彫りの起源となったと言われるものです


お渡り式 第九番 将馬(いさせうま)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-52
大和の大名家から神に献じられた馬を引いた名残り「将馬」(いさせうま)。馬上には人を乗せないのだそうです。やや地味な印象ですね


お渡り式 第十番 野太刀(のだち)他

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-34
5.5mほどもある巨大な刀は「野太刀」(のだち)と呼ばれるもの。この後に、中太刀・小太刀・薙刀・数槍(かずやり)と続きます

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-35
後尾の「数槍」(かずやり)。大名行列のような雰囲気ですね


お渡り式 第十一番 大和士(やまとざむらい)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-36
大和武士の伝統を受け継いだ「大和士」(やまとざむらい)の一団。願主役・御師役・馬場役 ・大和士と続きます

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-37
おん祭はもとは興福寺衆徒が主宰していましたが、後には僧兵や武士が主催者のようになっていきました。六党に分れて交代で願主人などを勤めていたそうです。明治維新後は旧神領の人々が勤めるようになりました

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-47
大和士の「随兵」(ずいひょう)。見事な武者姿ですね!

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-38
松の下式を検分していた「頭屋児」たちが、背負われて御旅所へ移ります


お渡り式 第十二番 大名行列

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-40
「大名行列」の一団。江戸時代からお渡り式に加わったもので、、大和国内の郡山藩・高取藩などが務めてきました。一時は廃れていましたが、大名行列保存会が結成されて復活。「郡山藩列」「子供大名行列」「南都奉行列」と続いて練り歩きます


お渡り式 第八番 流鏑馬(やぶさめ)

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-43
14時20分くらいから「流鏑馬」(やぶさめ)が始まります。稚児が行う流鏑馬ですから、走りながら弓をひくのではなく、一の的から三の的まで、三箇所の的を順番に止まって射ていきます。一ノ鳥居の馬場本では「祝投扇」(いわいのなげおうぎ)の所作を行っているそうです

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-44
彼らは「揚児」(あげのちご)「射手児」(いてのちご)と呼ばれ、計三騎います

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-45
ゆっくりと弓を引き絞って…

春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-46
的に命中させていきます!お渡り式のクライマックスのようなものですね


14時半からお旅所で「御旅所祭」が始まります

一連のお渡り式が終わりかかった14時半から、お旅所を舞台として、おん祭の中心的な祭典「御旅所祭(おたびしょさい)」(詳しくはこちら)が始まります。宮司や日使の奉幣、祝詞奏上などのあと、社伝神楽・東遊・田楽・細男・猿楽・和舞などの奉納が、23時ごろまで続けられます。

かなりのロングランですから、すべて見ようと思うと大変ですが、参道を挟んで正面には
春日若宮おん祭 特別桟敷席」(全席指定 5,000円)といった席も用意されていますので、利用してみるといいでしょう。私もいつかここで拝見したいと思っています!


春日若宮おん祭「お渡り式」2012年-48

15時くらいのお旅所前の様子。幾重にも見物客が取り巻いています。次第に冷え込んできますし、かなりの長丁場になりますので、くれぐれも温かい格好で見学しましょう



大きな地図で見る


■春日大社

HP: http://www.kasugataisha.or.jp/
住所: 奈良県奈良市春日野町160
電話: 0742-22-7788
主祭神: 武甕槌命、経津主命、天児屋根命、比売神
創建: 768年
開門時間: 9:00 - 17:00(宝物殿・神苑)
入場料: 宝物殿 400円、萬葉植物園 500円 など
駐車場: 有料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良線「奈良駅」から徒歩約25分。または、奈良交通バス「春日大社本殿行」で10~15分

※実際に拝見したのは「2012年12月17日(月)」でした


■参考にさせていただきました!

世界遺産 春日大社/春日若宮おん祭
春日若宮おん祭(行事の流れなど)
春日若宮おん祭 - Wikipedia


■関連する記事






 【春日若宮おん祭『お渡り式』レポート@春日大社】へのコメント
mahoroba  13-12-15 8:04

奈良の住民になってまだ2年の私には「おん祭り」の知識は皆無。
昨年のレポート拝見して、「お渡り式」は見てみたいけど、行列は
地方都市によくある仮装した行列程度と勝手に想像していました。
今年のレポート拝見して行列の質の高さにびっくり。昔から続く
神事だと再認識。仕事の休みと重なれば見に行きたいです!!!

naka  13-12-17 20:18

>mahorobaさん

私も昨年ようやく観に行けたんですが、その雰囲気に圧倒されました。歴史などを考えなければ、どこにでもある時代行列に見えてしまいますが、奈良の国を挙げて続けたお祭りですから、さすがに深さが違いますよね。

春日若宮おん祭は、色んな催しがありますから、少しずつ色んなものを見てみてくださいね。私も5年計画くらいで全部拝見するつもりです(笑)





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