2012-07-26

じっくり「写仏」体験しました@當麻寺中之坊(葛城市)

じっくり「写仏」体験しました@當麻寺中之坊(葛城市)

葛城市の『當麻寺 中之坊』で、「写仏(しゃぶつ)」を体験してきました。墨で仏さまを描くなんて難しそうに思えますが、線をなぞっていきますので意外と簡単です。写仏道場で集中して仏画に向かう時間はとても充実していて、清々しい気分になりました。(※「當麻曼荼羅絵解き」「尺八」体験の記事はこちら


静かで壮麗な「写仏道場」で写仏します

葛城市の二上山の麓の古刹『當麻寺(たいまでら)』。この日は、仏さまの絵を描く「写仏(しゃぶつ)」を体験してきました。

写経体験ができる寺院は少なくありませんが、當麻寺中之坊の会場は「写経道場」ではなく「写仏道場」と呼ばれるているほどで、ここほど写仏に力を入れているところは珍しいかもしれません。写仏道場の正面には當麻曼荼羅が、頭上には壮麗な絵天井があります。そんな環境の中で筆を握り一心に絵に向かう時間は、とても素晴らしいものとなりました。


写仏@當麻寺中之坊-01

當麻寺中之坊の「写仏道場」。正面には「平成當麻曼荼羅」が飾られています。広いお座敷に机が並んでいて、ちゃんと椅子席もあり、正座が苦手な方にも安心です。写仏の他、写経もここで行われます(※通常は撮影不可)

写仏@當麻寺中之坊-02
写仏道場の壮麗な「絵天井」。写仏の合間にフッと頭上を見上げると、こんな美しい光景が見られるんですから、素晴らしいですよね!(※通常は撮影不可)


写仏のコツは「絵を回しながら描くこと」

写仏とは、文字通り「仏さまの絵を描くこと」ですが、実は下絵の線をなぞるだけですから、それほど難しいものではありません。初めての場合は、事前に準備するものもありません。最初にお寺の方から書き方の説明を伺ってから始められますし、ちゃんと練習用の用紙も用意されていて、まずはそこからスタートできます。

最初に書き方のコツとして伺ったことをメモとして書き留めておきます。

●写仏の最初と最後は、正面の當麻曼荼羅に合掌をしましょう
●仏画を描くときには、絵を回しても、肘をついても問題ありません。下向きの線の方が描きやすいため、回しながら書くことがコツです
●白毫(おでこの点)は、一番最後に薄墨で描くこと

重要なポイントは、線は下方向へ描くようにすることですね。普段から筆を使い慣れている方であれば違うのかもしれませんが、初心者が斜めや横に線を引こうと思うと、曲がってしまうか、もしくは太さが一定になりません。ここで横着しないことがコツだと思います。

私は、ほとんど筆を使った経験もありませんし、絵心も全くありませんが、完成したものを見るとなかなかよく出来ていると思います。間近で見ると線の乱れなどが目立つのですが、遠目からはほとんど分からないレベルでしょう。もちろん、写経と同様に仏教的な願いを込めながら描くものですから、上手い下手は大きな問題ではありません。しかし、上手に描きたい一心で、黙りこんで線を描き続けました。

ちなみに、他のお寺では、写仏も写経と同様にお手本の上に薄い用紙をしいてなぞるところもあるとか。しかし、この場合は一度ずれてしまうと修正が効きづらいため、印刷された線を直接なぞるようにしているのだそうです。用紙が手に張り付いてずれたりすることがありませんから、一心不乱に仏さまを描くことに集中できるんですね。

また、この下絵も既製のものではなく、大仏師の渡邊勢山氏・渡邊載方氏に制作を依頼したものなのだそうです。徹底してますね!


写仏@當麻寺中之坊-03

写仏を希望の方は、まずは入り口で描きたい仏さまを選びます。正面を向いた阿弥陀如来、斜めを向いた観音菩薩と勢至菩薩の3種類。線の数は阿弥陀さまが一番少ないのですが、正面を向いているためややテクニックを要するそうです。この日、私は勢至菩薩さまを、奥さんは観音菩薩さまを選びました

写仏@當麻寺中之坊-04
写仏体験を申し込むと、写仏筆・写仏用紙1点・基本稽古用紙1点・タオル・記念色紙などがセットになっています。筆は持ち帰って使えますし、愛用の筆を持ち込むこともできます。墨を入れる小皿と水入れは貸していただけますので、最後に洗ってお返しします。手ぶらで来てもすぐに体験できるので安心ですね

写仏@當麻寺中之坊-05
お寺の方に、写仏の基本的な説明をしていただきます。筆の使い方など、本当に基本的なことから教えていただけますので、特に戸惑うことはありませんでした

写仏@當麻寺中之坊-06
まずは、基本稽古用紙で練習します。これは初体験の私が線をなぞったもの。ところどころ線の太さが一定ではなかったりしますし、鼻の周りが明らかに下手くそだったりしますが、それほど目立ちません。不器用な私でも、集中して線をなぞっていけばある程度まではできるんですね

写仏@當麻寺中之坊-07
こちらはウチの奥さんの様子。私との違いが分かりづらいかもしれませんが、線が細くて繊細です。明らかにこちらの方が上手ですね。しかし、その分だけ進みもゆっくりで、私の倍くらいの時間がかかっていました。この辺りは性格が現れますね(笑)

写仏@當麻寺中之坊-08
この日は、連休明けの平日の昼間ということで、参加者は私たちのみでした。こうなるとますます静かで、遠くからセミの鳴き声が聞こえてくるのみ。二人で物も言わずに写仏に集中できました


集中して素晴らしい作品が完成しました

練習を終えて本番へ移りますが、下絵をなぞる形のため思った以上に描きやすく、そして上手に描けたと思います。菩薩さまはアクセサリー類が多く、細かい描写が続くのですが、集中して追っているうちに、それなりにきれいに描けるようになりました。完全に上手くいったとはとても思いませんが、初体験にしては大満足でした。

こういった作業には性格が出るもので、大雑把な私は描くスピード早めで、1時間もかからずに完成しました。ウチの奥さんは慎重派のため、1時間半ほどかかったでしょうか。後から作品を見比べえてみると仕上がりの違いも明らかです。面白いものですね。

なお、こうして描いた仏さまは、そのまま奉納することもできますし、持ち帰ることもできます。自宅に飾れるほどの美しい仏さまが描けるといいですね!


写仏@當麻寺中之坊-09

いよいよ本番です。私はこの勢至菩薩さまを選びました。アクセサリーの部分など細かいパーツも多いため、ちゃんと描けるのかどうか不安でしたが、ある程度は何とかなるものです

写仏@當麻寺中之坊-10
途中経過。いきなり太い線を描こうとしたため、線がガタガタになっています…(後から多少の修正はできます)。お顔はかなり上手く描けたと思います!ちなみに、最初に濃い墨でお顔や輪郭などを描き、後から水を含ませた薄い墨でアクセサリー類を描こうと思ったのですが、よく考えたら逆の方が自然だったかもしれません

写仏@當麻寺中之坊-11
完成した作品です。向かって左が、私が描いた勢至菩薩さま、右が奥さんが描いた観音菩薩さま。この画像サイズで見るとほぼ粗も目立たず、かなり上手に見えますね!1時間程度で仕上げた私は、墨の濃淡にばらつきがありますが、1時間半ほどかけてじっくりと仕上げた奥さんの作品は、線が整っていてきれいですね。いずれにしても、思っていた以上に描きやすかったです

写仏@當麻寺中之坊-12
當麻寺中之坊で写仏を行うと、説明書きや筆などがセットになっています。このセットを持参すれば、2回目以降は割安で写仏できますので、大事にとっておきましょう

写仏@當麻寺中之坊-13
記念色紙の中はこのようになっています。美しい仏さまですね!


写仏

・9:00~17:00(受付は15:30まで)。随時開催です
・参加費は、入山料(500円)+用具・用紙代(2,000円)。
・用具のセット内容は、写仏筆・写仏用紙(半身)1点・基本稽古用紙1点・特製クリアホルダー・タオル・記念色紙です。
・筆は持ち込み可能ですが、市販の写仏・写経用紙の持ち込みはできません。
・2回目以降の方は、筆を持参した場合は「参加費1,200円(拝観料込)」に。筆を持参しない場合は「参加費1,500円(拝観料込)」となります。
・2回目からは「写仏用紙(全身)」を選ぶこともできます(料金はプラス300円)


重文の書院で「お抹茶」もいただけます

當麻寺中之坊では、書院(重文)の建物内で「お抹茶(@400円)」もいただけます。旧国宝の美しい建物の広間は、落ち着きがあっていいですね。外は真夏の暑さでしたが、涼しい風が吹き抜けていました。この日は写仏の後の緊張をほぐすように、お座敷でしばらくのんびりとさせていただきました。


お抹茶と香藕園@當麻寺中之坊-02

写仏の後には、書院のお座敷でお抹茶をいただきました。雰囲気が素晴らしいですね。風が吹き抜けてとても心地よかったです

お抹茶と香藕園@當麻寺中之坊-03
お抹茶とお菓子。集中して写仏を行った後だけに、より美味しくいただけました


お抹茶

・料金は一服 400円(お茶菓子付き)
ホームページには、拝観とお抹茶のセット割引券もあります。プリントアウトしておくといいでしょう。


大和三名園のひとつ「香藕園」散策も

また、當麻寺中之坊のお参りの際には、大和三名園のひとつ「香藕園(こうぐうえん)」も拝見できます。国宝の三重塔の「東塔」を借景にした、とても素晴らしいお庭で、7月中旬だったこともあり花々の姿も観られませんでしたが、春は牡丹が咲き誇ります。

東塔を借景とし心字池を中心とした桃山期の名庭。江戸時代初期、第111代後西天皇さまの行幸に際し、第4代将軍家綱の茶道指南役であった片桐石州(石見守貞昌)公が現在の姿に改修しました。  内庭と外庭を区切る土塀を低く作ることで、狭い土地に奥行きをもたせる工夫がなされています。  古くから大和三名園に数えられており、昭和9年、奈良県で最初に文化庁の保存指定を受けています(史跡および名勝)。


お抹茶と香藕園@當麻寺中之坊-04

大和三名園に数えられる「香藕園(こうぐうえん)」。牡丹や紅葉の季節も風情がありますが、真っ青な夏空の下の姿もいいですね。第4代将軍家綱の茶道指南役であった片桐石州公が現在の姿に改修したお庭です

お抹茶と香藕園@當麻寺中之坊-05
香藕園にある、歌人・釈迢空(しゃくちょうくう。折口信夫氏のこと)の歌碑。「ねりくやう すぎてしづまる 寺のには はたとせまへを かくしつゝゐし」。二上山を舞台とした「死者の書」の作者として有名で、中学生時代に中之坊に滞在していたことがあるそうです



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■當麻寺 中之坊

HP: http://www.taimadera.org/
住所: 奈良県葛城市當麻1263 中之坊
電話: 0745-48-2001
宗派: 高野山真言宗
本尊: 導き観音さま
拝観料: 大人 500円、小学生 250円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 有料(「二上山ふるさと公園(無料)」から歩くことも出来ます)
アクセス: 近鉄南大阪線「当麻寺駅」下車、徒歩15分ほど

※取材日は「2012年7月17日」です
※中之坊の拝観と、當麻寺の伽藍三堂(本堂・金堂・講堂)の拝観は別料金です
※写仏道場内は撮影不可です。今回は特別のご許可をいただいて撮影させていただきました。お気をつけください


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