国宝「東塔・西塔」の初層特別公開『当麻寺』@葛城市
葛城市の古刹『當麻寺(当麻寺)』。平城遷都1300年祭の一環として、国宝の「東塔」「西塔」が創建以来初めて揃って開扉されました!滅多にないチャンスですので、同じく秘仏が公開されていた「大師堂」とともにお参りしてきました。
この時代の二つの塔が残るのは當麻寺のみ!
奈良県内の各地で「平城遷都1300年祭/奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」が続々と開催されていますが(こちらに特別公開を月別にまとめてあります)、5月20日~6月20日までの期間で、葛城市の古刹『當麻寺(当麻寺)』の公開もスタートしました。
そのメインイベントは、国宝の三重塔「西塔」「東塔」の初層が、当麻寺の創建以来、初めて揃って公開となることでしょう。それぞれ平安時代と白鳳時代の建築で、二つの塔が現存しているのは日本でも当麻寺のみ。とても貴重なものなのです。
私は当麻寺の近くに住んでいるため、その姿はよく目にしていますが、双塔の中が拝見できる機会がやってくるなんて思ってもいませんでした。こんな貴重なチャンスを見逃すわけにはいきませんので、さっそくお邪魔してきました。
平城遷都1300年祭の特別御開帳期間が始まった、葛城市の古刹『当麻寺(當麻寺)』。この日は平日にもかかわらず、いつも静かな当麻寺とは思えないほどの参拝客が訪れていました
「祈りの回廊」の看板。当麻寺では、東塔・西塔の初層公開などが行われます。期間は5月20日~6月20日まで。東塔・西塔の両塔は、何と「無料」で公開されているのも嬉しいところです!
複数の塔頭があるため、全体像が掴みづらい当麻寺ですが、分かりやすいマップになっていました。4ヶ所の特別公開を含めて、これだけの見どころがあります。ちなみに、この全てを見てまわると、拝観料は合計2,400円必要となり、時間もそれなりにかかりますのでご注意ください
「西塔」は手前に組まれた足場から拝観
まずは、当麻寺「西塔(国宝)」から。こちらは平安時代の建築で、白鳳時代に建てられた「東塔(国宝)」よりも100年ほど後に建てられたものだそうです。しかし、東塔の方が修理された時代が新しいため、西塔は損傷が激しく、塔の前に足場を組んでそこから初層内部を眺めるようになっていました。
西塔の初層は、中央の心柱を板で囲ってあり、その四面に仏さまがいらっしゃいます。東側の板には三千仏の絵が描かれていたそうですが、今ではほぼ剥落してしまっているのだとか。ほぼ木目そのままの、簡素な印象でした。
正面(北側)にいらっしゃるのが、簡素な塔には似つかわしくないほど金箔が鮮やかな、平安時代作の「大日如来坐像」です。平安時代の仏さまにしては鮮やかすぎる印象で、時期は不明とのことですが、後に修繕されているそうです。体全体は見事な金色で、頭部の青さとの対比が見事。こちらは胎蔵界の大日如来さまらしく、印は「禅定印(坐禅の時の手の形)」を結んでいらっしゃいました。
創建以来、初めて初層が公開されている当麻寺の「西塔(国宝)」。普段は石段の上で外から眺めるしかありませんでしたので、嬉しいですね!
当麻寺・西塔は、石垣や建物が脆くなっているため、正面に足場を組んでその上から眺めるようになっています(足場の上では撮影禁止)。塔の内部は驚くほど簡素で木目が出ています。正面には禅定印(坐禅の時の手の形)を結んだ大日如来さまが。他の三面にも仏様がいらっしゃるようでしたが、どなたがいらっしゃるのかよく見えませんでした(係の方もご存じないとのこと)
「東塔」は目の前で拝見できます!
一方の「東塔(国宝)」では、まだ建物もしっかりしているとのことで、基壇上に上がって、すぐ間近から建物や仏さまを拝むことができます。
東塔の内部も壁画などは見られず、とても簡素な印象です。西塔とは少し作りが違っていて、東塔は四本の心柱に壁は貼られておらず、二体の大日如来さまが背中合わせにいらっしゃる姿が見渡せる作りになっていました。
西側にいらっしゃる大日如来坐像は、奈良時代の仏さまらしく色あいも渋めで、ややなで肩気味の穏やかな表情。像高は1mほどでしょうか。金剛界の大日如来像でお馴染みの「智拳印(人差し指を立て、もう一方の手で包み込む形)」を結んでいらっしゃいます。その背後には、像高50cmくらいのもう一体の大日如来さまがいらっしゃいました。
こちらは、当麻寺の「東塔(国宝)」です。普段は西側の道は近寄れないように封鎖されていますが、この日は無料公開されており、すぐ近くからその姿を見ることができました
東塔は、西塔よりも新しく修復されているため、基壇も建物も状態は良好です。すぐ目の前に立って仏さまを拝むことができます(基壇上では撮影禁止)。西側と東側に、二体の美しい大日如来さまがいらっしゃいました!
当麻寺・東塔の組物。天平時代の建築で、古式の三重塔の建築様式がそのまま残されているのだとか。初層は三間ありますが、二層三層目は二間へと細くなっています。初層の内部は、こちらもシンプル。壁画などは見当たらず、木目がそのまま見られました
当麻寺・東塔前からの眺め。西塔の相輪だけが見えますね。この画像だとほとんど分かりませんが、少し右手には二上山の姿も見られます
観光バスが到着したようで、見ていて心配になるほどのたくさんの参拝客が殺到していました!特別公開の期間中は、週末はもちろん、平日もかなり混雑することでしょう
この日はお参りできませんでしたが、当麻寺・中之坊では、「導き観音さま」の特別御開帳も行われています。合わせて「中将姫展」も開催されていますので、こちらはまた日を改めて伺いたいと思います。お隣の当麻寺・西南院でも「十一面観音立像(重文)」などの特別公開が行われています
「大師堂」では秘仏・弘法大師坐像が公開
日を改めて、当麻寺の「大師堂」にもお参りしてきました。こちらは、5月20日~5月23日までのわずか4日間のみ、しかも13時~15時までの間しか公開されていなかったため、見逃してしまった方も多いと思います。
「大師堂」は当麻寺境内の隅にある目立たないお堂ですが、3年間をかけた解体修理が2009年3月に終わったばかり。通常は全く一般公開されていないどころか、弘法大師さんの御命日にあたる3月21日の前夜の法要の際に、ほんの1~2時間だけお厨子の扉が開かれる・・・という秘仏です。
もちろん、中央に祀られているのは弘法大師坐像です。しかし、いくら秘仏とはいえ、思った以上に新しい印象なので不思議に思っていたところ、大師堂の解体修理の際に合わせて修繕を行っていたのだそうです。年に数時間しかひと目に触れないため、お堂の修理のためにお厨子を開けてみたら想像以上に傷みが激しく、修繕せざるを得なかったのだとか。
中央の弘法大師像を取り囲むようにして、その周囲には十大弟子の絵が飾られていました。お話によると、高野山・壇上伽藍の御影堂にある絵とそっくりで、そこのものを写したと考えられているそうです(高野山の絵は、霊宝館に収めてあり、現在は公開されていないとか)。
奥には像高30cmほどの小さな像が五体並んでいましたが、順番にその印象だけを書いておくと、・愛染明王像(手が一本しかなく、顔のシルエットがミッキーマウスのよう!)・菩薩像(詳細は不明)・如来荒神像(六臂。ちょっと珍しい荒神さん)・虚空蔵菩薩(剣を真っ直ぐに立てて凛々しい)・千手観音(優しい表情)。
この弘法大師像に直接お参りできる機会はもう二度と無いと思いますので、本当にいい記念になりました!
こちらは5月23日の当麻寺・本堂の様子。生憎の土砂降りでしたが、それでも多数の参拝客がいらっしゃいました
当麻寺の「大師堂」。境内の隅にある目立たないお堂ですが、3年間の修理が終わり、わずか4日間のみの特別公開をしていました(拝観料300円)
土砂降りの雨の中、たくさんの参拝客の方がお参りされていました。絶対秘仏の弘法大師坐像にお会いできる機会はもう二度と訪れないと思いますので、本当に感動でした!
■当麻寺(當麻寺)
HP: 当麻寺・中之坊、当麻寺・奥院
住所:奈良県葛城市當麻1263
電話: 0745-48-2001
宗派: 高野山真言宗・浄土宗
本尊: 当麻曼荼羅
創建: 7世紀前半ごろ
拝観料: 境内は無料(伽藍:500円、中之坊:500円、西南院:300円、奥院:300円、護念院:300円)
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 有料(「二上山ふるさと公園(無料)」から歩くことも出来ます)
アクセス: 近鉄南大阪線「当麻寺駅」下車、徒歩20分
※『當麻寺(当麻寺)』の東塔・西塔の初層特別公開は「2010年5月20日~6月20日まで」です(無料で拝見できます)